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腰椎穿刺

執筆者:Mark Freedman, MD, MSc, University of Ottawa
レビュー/改訂 修正済み 2023年 8月
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腰椎穿刺は以下を目的として行われる:

表&コラム
表&コラム

相対的禁忌として以下のものがある:

  • 穿刺部位の感染

  • 出血性素因

  • 頭蓋内腫瘤性病変,髄液流出障害(例,中脳水道狭窄症またはキアリI型形成異常による),または脊髄における髄液閉塞(例,腫瘍による脊髄圧迫)による頭蓋内圧亢進

視神経乳頭浮腫または局所神経脱落症状がみられる場合には,腰椎穿刺の前にCTまたはMRIを施行して,テント切痕ヘルニアまたは小脳ヘルニアを誘発しうる腫瘤の存在を除外すべきである。

腰椎穿刺の手技

手技は典型的には,患者を左側臥位にして行う。協力的な患者であれば,膝を抱えて可能な限り強く体を丸めてもらうようにする。この体位を維持できない患者は,介助者が患者の体を支えなければならない場合があり,あるいは,特に肥満患者では,ベッドサイドに座らせてベッドサイドテーブルにかがみ込むようにさせると,脊椎がよりよく曲がることがある。

直径20cmをヨードで消毒した後,ヨードをアルコールで拭き取り,くも膜下腔に入らないようにする。スタイレット付きの腰椎穿刺針をL3~L4またはL4~L5間に刺入する(L4棘突起は,典型的には両側の後上腸骨稜の間の線上に存在する);刺入した針を患者の臍に向かって頭側に進め,仰臥位の場合は常に床と平行になるように維持する。しばしば針がくも膜下腔に入る際に,ポンという音がする;続いてスタイレットを引き抜いて髄液を流出させる。

マノメーターで初圧を測定する;検査用に髄液を約5~10mLずつ4本のチューブに採取する。穿刺部位はその後,滅菌された粘着テープで被覆する。

約10%の頻度で腰椎穿刺後頭痛が生じる。

腰椎穿刺

この腰椎穿刺は,側臥位にした患者で腰椎穿刺針をL3-L4間に刺入して行われたものでる。

髄液の色

正常な髄液は無色透明であり,細胞数が300/μLを超えると混濁または不透明になる。

血性髄液は,穿刺時の外傷(穿刺針を脊柱管腹側部に沿った静脈叢まで深く挿入した場合)またはくも膜下出血を示唆している可能性がある。穿刺時の外傷は以下の点で区別できる:

  • 1本目の試験管から4本目の試験管にかけて髄液の混濁が弱くなる(赤血球数の減少で確認できる)

  • 遠心分離してもキサントクロミー(溶解した赤血球による髄液の黄色化)を認めない

  • 破損のない新しい赤血球がみられる

内因性のくも膜下出血では,採取した髄液全てが一様に血性となる;発作後数時間が経過している場合は,しばしばキサントクロミーがみられる;赤血球は通常古く鋸歯状を呈する。かすかに黄色い髄液は,古い色素原,重度の黄疸,またはタンパク質の増加(> 100mg/dL)による場合もある。

髄液の細胞数と糖およびタンパク質濃度

細胞数および細胞分画と糖およびタンパク質濃度は,多くの神経疾患の診断に役立つ(様々な疾患における髄液異常の表を参照)。

正常の場合,髄液糖/血糖比は約0.6であり,重度の低血糖の場合を除いて,髄液糖は通常50mg/dL(2.78mmol/L)を超える。

髄液タンパク質濃度の上昇(> 50mg/dL)は疾患の指標としての感度は高い一方で,特異度は低く,500mg/dLを超えるタンパク質濃度の上昇は,化膿性髄膜炎,進行した結核性髄膜炎,脊髄腫瘍による完全閉塞,または血性髄液でみられる。グロブリン(正常では15%未満)およびオリゴクローナルバンドに対する特殊検査は,多発性硬化症などの脱髄疾患の診断に役立つ。髄液中の免疫グロブリン(通常はIgG)は,イムノブロット法または免疫固定法により同定することができ,これらの方法では電気泳動で分離した免疫グロブリンを抗体で染色する。あるいは,ネフェロメトリーで髄液中または血清中のタンパク質や免疫グロブリンを定量することもでき,それにより多発性硬化症など,中枢神経系を侵す自己免疫疾患の診断に有用な比を算出することができる。ネフェロメトリーでは,髄液または血清検体を通過する光の強度を測定することによってタンパク質濃度を測定する。

髄液の染色,検査,培養

感染が疑われる場合は,遠心分離した髄液沈渣を染色して以下を検索する:

髄液量が多いほど(10mL),染色および培養で病原体(特に抗酸菌および特定の真菌)を検出できる可能性が高くなる。初期の髄膜炎菌性髄膜炎または重度の白血球減少症の患者では,髄液タンパク質が少なすぎるためにグラム染色時にスライドガラスに細菌が付着しないことがあり,偽陰性の原因となりうる。この問題は,無菌の血清を髄液沈渣に1滴混合することで予防できる。出血性髄膜脳炎が疑われる場合は,直接鏡検によりアメーバの検出を試みる。

ラテックス凝集反応および共凝集試験により,細菌を迅速に同定できることがあり,特に染色および培養が陰性の場合(例,治療開始後の髄膜炎)に有用である。髄液検体では好気培養,嫌気培養,抗酸菌培養,および真菌培養を行うべきである。

エンテロウイルスを除いて,髄液からウイルスが分離されることはほとんどない。ウイルス抗体パネルが利用できる。

しばしばVDRL(Venereal Disease Research Laboratories)試験とクリプトコッカス抗原検査がルーチンに行われる。単純ヘルペスウイルスや中枢神経系に感染するその他の病原体を対象とするPCR検査が,ますます利用しやすくなっている。

特殊な髄液検査を行うことも可能で,具体的には自己免疫性脳炎など様々な疾患の特異抗体を検出する検査がある(The Diagnosis and Treatment of Autoimmune Encephalitisも参照)。自己免疫性脳炎は,特異的な神経細胞の抗原を標的とする抗体が介在する脳疾患である。

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