菲薄基底膜病では,糸球体基底膜が正常者の幅300~400nmから150~225nmにびまん性に菲薄化する。
菲薄基底膜病は腎炎症候群の一種である。菲薄基底膜病は遺伝性で,通常は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)である。全ての遺伝子変異が解明されているわけではないが,菲薄基底膜病の一部の家系では,IV型コラーゲンα4 遺伝子に変異が認められる。有病率は5~9%と推定される。
菲薄基底膜病の症状と徴候
大半の患者は無症状で,ルーチンの尿検査で顕微鏡的血尿が偶発的に発見されるが,ときとして軽度のタンパク尿および肉眼的血尿が認められる。腎機能は典型的に正常であるが,少数の患者では原因不明の進行性の腎不全が発生する。免疫グロブリンA腎症に類似した再発性の側腹部痛がまれに発生する。
菲薄基底膜病の診断
臨床的評価
ときに腎生検
Image provided by Agnes Fogo, MD, and the American Journal of Kidney Diseases' Atlas of Renal Pathology (see www.ajkd.org).
診断は,家族歴,およびその他の症状または病理所見を伴わない血尿の所見に基づき,特に無症状の家系員も血尿を有する場合に診断が下される。腎生検は不要であるが,しばしば血尿評価の一環として施行される。菲薄基底膜病とアルポート症候群は早期には組織学的に類似しているため,鑑別が困難な場合がある。これら2つの疾患の鑑別には分子遺伝学的検査が役立つ可能性がある。
菲薄基底膜病の治療
頻回の肉眼的血尿,側腹部痛,またはタンパク尿に対して,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
長期予後は極めて良好であり,大部分の症例で治療は必要ない。肉眼的血尿,側腹部痛,タンパク尿(例,尿タンパク/クレアチニン比0.2超)を頻回に呈する患者は,ACE阻害薬またはARBが有益な場合があり,これらの薬剤は糸球体内圧を下げる可能性がある。