高齢患者の化学予防および予防接種

予防対象疾患

対策

頻度

備考*

動脈硬化性心血管疾患(冠動脈疾患,脳卒中)

アスピリン化学予防

連日

60歳以上の成人:心血管疾患の一次予防における低用量アスピリンの投与開始は推奨していない(USPSTF推奨度D)。

40~59歳の成人:心血管疾患のリスクが10%以上の成人に対して個別化した低用量アスピリン(USPSTF推奨度C)

心臓発作,脳卒中,冠動脈ステント留置術,または冠動脈グラフト術の既往がある全ての人:ACC/AHAは依然として低用量アスピリンを二次予防として推奨している。

COVID-19

COVID-19ワクチン

可能な範囲での追加接種

生後6カ月以上の全例:CDCによる推奨‡

6歳以上で,ワクチン接種を受けていないか過去に1価ワクチンの接種のみを受けたことがある場合:2価mRNAワクチンを1回接種することが推奨される(1価ワクチンを接種した人では8週間以上後)。

65歳以上の成人:2価mRNAワクチンの1回目の接種から4カ月以上空けて2価mRNAワクチンの追加接種を1回行ってもよい。

易感染者:リスクと便益について話し合った上で,ケースバイケースで判断する

インフルエンザ

インフルエンザワクチン

年1回

全例:CDCによる推奨†

肺炎球菌感染症

肺炎球菌ワクチン

ワクチンの種類によって1回または2回

肺炎球菌ワクチンの接種を受けたことがない65歳以上の成人:CDCはPCV15を接種してから1年以上空けてPPSV23を接種するか,またはPCV20のみを接種することを推奨している

65歳未満で肺炎球菌ワクチンの接種を受けた高齢者:過去の肺炎球菌ワクチンの接種歴および基礎疾患に基づいて肺炎球菌ワクチンを選択する(Centers for Disease Control and Prevention: Pneumococcal Vaccinationを参照)。

破傷風

破傷風ワクチン

10年毎

Tdapの接種を一度も受けたことのない19歳以上の成人§:CDCは百日咳ワクチンに対する特定の禁忌がない限り,Tdapワクチンを1回接種することを推奨している(Tdワクチンの前回接種時期にかかわらず,時期は問わない)

Tdapの接種を受けた全例:CDCは10年毎にTdまたはTdapワクチンの追加接種を推奨している

帯状疱疹

帯状疱疹ワクチン

50歳時に2回接種

50歳以上:CDCは帯状疱疹または水痘の既往歴にかかわらず,2~6カ月の間隔を空けて計2回遺伝子組換え帯状疱疹ワクチン(RZV)を接種することを推奨している

易感染性患者:場合によりRZVの2回の接種間隔を短縮する

* 表中の推奨は主にUSPSTFに依拠するものであり,ときにCDCおよびその他の機関に依拠するものもある。

USPSTFの推奨度はエビデンスの強度および純便益(便益から害を差し引いたもの)に基づく:

  • A = 支持する強力なエビデンスがある

  • B = 支持する良好なエビデンスがある

  • C = 便益と害がほぼ均衡しているため,推奨の根拠を示すことができない

  • D = 支持しないエビデンスがある

  • I = 推奨するかしないかを示すエビデンスが不十分である

†インフルエンザA型の高リスク例(例,施設内アウトブレイク時)は,予防接種時にオセルタミビルまたはザナミビルの投与を開始し,2週間継続してもよい。

‡ 2023年の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更点(COVID-19ワクチンに関する情報の変更を含む)の概要については,Advisory Committee on Immunization PracticesのRecommended Adult Immunization Schedule, United States, 2023: Changes to the 2023 Adult Immunization Scheduleを参照のこと。

§Tdap―ジフテリア(D)ワクチンは,ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)から調製されたトキソイドを含有する。破傷風(T)ワクチンは,破傷風菌(Clostridium tetani)から調製されたトキソイドを含有する。無細胞(a)百日咳(P)ワクチンは,百日咳菌(Bordetella pertussis)の半精製または精製成分を含有する。

CDC = 米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention);Td = 破傷風ジフテリア;USPSTF = U.S. Preventive Services Task Force

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