出生時から眼の欠損,変形,または発育不全がみられることがあり,しばしば他の先天異常や先天性症候群を合併している。
(頭蓋顔面部および筋骨格系の先天異常に関する序論ならびに先天性頭蓋顔面異常の概要も参照のこと。)
たとえ先天異常が単独で存在するように見える場合でも,臨床遺伝専門医が患者の評価を行うべきである。
先天性頭蓋顔面異常がある患者の評価では,染色体マイクロアレイ解析,特異的遺伝子検査,または広範な遺伝子パネル検査を考慮すべきである。これらの検査で診断に至らない場合には,全エクソーム配列決定が推奨される。
眼の構造的先天異常は,様々な外科的手技を用いて外科的に治療する。
眼間開離
眼間開離は,両眼の間隔が広い状態であり,瞳孔間距離の延長によって定義され,前頭鼻異形成(正中顔面裂と脳形成異常を伴う),頭蓋前頭鼻異形成(頭蓋縫合早期癒合症を伴う),Aarskog症候群(四肢および性器形成異常を伴う)など,いくつかの先天性症候群でみられる。
眼間狭小
眼間狭小は,両眼の間隔が狭い状態であり,瞳孔間距離の短縮によって定義される。この形成異常がみられた場合は,全前脳胞症(正中部の脳の異常)を疑うべきである。
コロボーマ
コロボーマとは,眼構造に欠損が生じた状態であり,片眼または両眼の眼瞼,虹彩,網膜,または視神経が欠損する。眼瞼コロボーマは,眼球上類皮嚢胞と合併することが多く,トリーチャー・コリンズ症候群,Nager症候群,およびGoldenhar症候群でよくみられる。虹彩コロボーマは,CHARGE連合(coloboma[コロボーマ],heart defects[心形成異常],atresia of the choanae[後鼻孔閉鎖],retardation of mental and/or physical development[精神および/または発育遅滞],genital hypoplasia[性器低形成],ear abnormalities[耳形成異常]),猫眼症候群,歌舞伎症候群,またはAicardi症候群の可能性を示唆する。
小眼球症
小眼球症は,片側または両側の眼球が小さい状態である。片側性の場合でも,しばしば対眼に軽度の異常(例,小角膜症,コロボーマ,先天性白内障)がみられる。閉塞隅角緑内障,脈絡膜網膜疾患(例,ぶどう膜滲出症),斜視,弱視などの視力を脅かす合併症を引き起こす。
小眼球症の原因としては,出生前の催奇形性物質,アルコール,および感染症(例,TORCH,すなわちトキソプラズマ症[Toxoplasmosis],その他の病原体[Other pathogens],風疹[Rubella],サイトメガロウイルス[Cytomegalovirus],単純ヘルペス[Herpes simplex])への曝露,多数の染色体異常症や遺伝性疾患などがあり,それらの一部は他の臨床的特徴から示唆される。染色体異常による小眼球症では,しばしば発育および発達遅滞がみられる。顔面の非対称性はGoldenhar症候群またはトリーチャー・コリンズ症候群を,手の異常は13トリソミー,眼歯指症候群,または胎児性アルコール症候群を,性器の異常は染色体異常,Fraser症候群,またはCHARGE連合(coloboma[コロボーマ],heart defects[心形成異常],atresia of the choanae[後鼻孔閉鎖],retardation of mental and/or physical development[精神および/または発育遅滞],genital hypoplasia[性器低形成],ear abnormalities[耳形成異常])を示唆する。
無眼球症
無眼球症は,眼球が完全に欠損した状態であり,染色体異常またはいくつかの遺伝子(例,SOX2,OTX2,BMP4)の突然変異を原因とする50を超える遺伝性症候群で認められる。皮膚が眼窩を覆っている場合,この形成異常は潜在眼球症と呼ばれ,Fraser症候群,Nager症候群,または眼炎-精神遅滞が示唆される。