13トリソミーは,過剰な13番染色体によって引き起こされる病態で,前脳,中顔面,および眼の発育異常,重度の知的障害,心臓の異常,ならびに出生時低身長で構成される。診断は細胞遺伝学的検査による。治療は対症療法による。
(染色体異常症の概要も参照のこと。)
13トリソミーは出生約10,000人当たり1例の頻度で発生し,約80%が完全な13トリソミーである。母体年齢が高くなるにつれてリスクも増大し,過剰染色体は通常母親由来である。
在胎不当過小(small for gestational age)の傾向がある。正中部の異常がよくみられ,全前脳胞症(前脳が適切に分割されないことで生じる),口唇裂や口蓋裂などの顔面形成異常,小眼球症,虹彩コロボーマ(欠裂),網膜異形成などがみられる。眼窩上隆起が浅く,眼瞼裂は通常傾斜している。耳介は変形し,通常低位付着となる。難聴も多い。頭皮欠損および皮膚洞もよくみられる。しばしば頸部背面上に弛緩した皮膚の襞がみられる。
単一手掌屈曲線,多指症,凸状に隆起した狭い爪もよくみられる。約80%の症例で重度の先天性心血管異常を合併し,右胸心がよくみられる。生殖器は男女とも異常の頻度が高く,男児では停留精巣と陰嚢異常が,女児では双角子宮が生じる。
乳児期早期には無呼吸発作が頻繁に発生する。知的障害は重度である。
13トリソミーの診断
核型分析,蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)解析,および/または染色体マイクロアレイ解析による細胞遺伝学的検査
(次世代シークエンシング技術も参照のこと。)
13トリソミーの診断は,出生後には外観的特徴から,出生前には超音波検査での異常所見(例,胎児発育不全)または母体血液検体に対する複数マーカーによるマーカースクリーニングもしくはセルフリー胎児DNAの分析による非侵襲的出生前スクリーニング(NIPS)で指摘されるリスク上昇から疑うことができる。
絨毛採取または羊水穿刺による検体の細胞遺伝学的検査(核型分析,FISH解析,および/または染色体マイクロアレイ解析)によって診断を確定する。出生後は,通常は血液検体を用いる細胞遺伝学的検査で確定する。
非侵襲的出生前スクリーニングに基づき本疾患が疑われる症例には確定診断検査が勧められる。妊娠中絶などの管理に関する決定は,非侵襲的出生前スクリーニングの結果のみに基づいて行うべきではない。American College of Obstetricians and Gynecologists Committee on Practice Bulletins–Obstetrics,Committee of Genetics,およびSociety for Maternal–Fetal Medicineのセルフリー胎児DNA検査に関する2020年版Practice Bulletinも参照のこと。
13トリソミーの治療
支持療法
患児の大半(80%)は病状が重いために生後1カ月を前に死亡し,1年以上生存できる割合は10%未満である。家族に対する支援が極めて重要である。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
American College of Obstetricians and Gynecologists Committee on Practice Bulletins–Obstetrics, Committee of Genetics, and the Society for Maternal–Fetal Medicine: Screening for fetal chromosomal abnormalities: ACOG practice bulletin, number 226 (2020)
SOFT (Support Organization for Trisomy 18, 13, and Related Disorders): An organization providing resources, research information, and community and support services to people caring for others who have trisomy 18, 13, or another related chromosome disorder