女性の骨盤痛

執筆者:Shubhangi Kesavan, MD, Cleveland Clinic Learner College of Medicine, Case Western Reserve University
Reviewed ByOluwatosin Goje, MD, MSCR, Cleveland Clinic, Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 6月
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骨盤痛は女性によくみられる症状である。典型的には,外陰痛や腟痛とは異なる病因で発生する。骨盤腔には腸管,膀胱,下部尿管が含まれ,筋肉,結合組織,および骨に囲まれている。骨盤痛はこれらの構造のいずれにも起因しうる。

骨盤痛は急性の場合と慢性の場合がある;6カ月を超えて持続する場合は慢性疼痛とみなされる。慢性疼痛はしばしば認知的,行動的,性的,情緒的に好ましくない結果に関連しているほか,下部尿路,性機能,腸管,骨盤底,筋筋膜,または婦人科的機能の障害を示唆する症状を伴うことが多い(1)。

参考文献

  1. 1.Chronic Pelvic Pain: American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG) Practice Bulletin Summary, Number 218. Obstet Gynecol.2020;135(3):744-746.doi:10.1097/AOG.0000000000003717

女性の骨盤痛の病因

骨盤痛は,女性生殖器(子宮頸部,子宮体部,卵巣,卵管)または腹部の他の構造(腸管,尿路,骨盤底筋もしくは結合組織,または腹膜)に起因することがある。

婦人科疾患

婦人科疾患の中には(骨盤痛の原因としての婦人科疾患の表を参照),周期的な骨盤痛(すなわち,月経周期の同じ時期に繰り返し生じる痛み)を起こすものがある。それ以外の場合,痛みは持続性または間欠性であるが,月経に関連しない。また,痛みの発症(突然または徐々に)および痛みの種類(例,鋭い,痙攣性)が原因の同定に役立つことがある。

全体として,骨盤痛を引き起こす最も頻度の高い婦人科的要因は以下の通りである:

子宮筋腫は通常は痛みを引き起こさないが,周囲の構造に圧力をかけたり,月経困難症の一因となったり,変性したりする場合には痛みが生じる可能性がある。

女性の骨盤痛のその他の原因としては,骨盤内癒着,卵巣遺残症候群,婦人科悪性腫瘍などがある。

表&コラム
表&コラム

非婦人科疾患

骨盤内の以下の器官系における非婦人科疾患が骨盤痛の原因となりうる:

女性の骨盤痛の評価

急性骨盤痛の原因には緊急治療を要するもの(例,異所性妊娠付属器の捻転)があるため,評価は迅速に行う必要がある。

全ての妊娠可能年齢の患者において,月経歴または性交歴にかかわらず,妊娠を除外すべきである。

病歴

現病歴の聴取には痛みの発症,期間,部位,重症度,パターン(間欠性または持続性),および性質(鋭い,鈍い,痙攣性)を含めるべきである。疼痛と月経周期との関係に注意する。関連症状として重要なものには,性器出血または帯下,性交痛,発熱,および血行動態不安定による症状(例,めまい,ふらつき,失神)がある。

システムレビュー(review of systems)では,可能性のある原因の症状として,以下のようなものがないか検索すべきである:

  • 無月経,つわり,または乳房の腫脹もしくは圧痛:妊娠に関連する痛み

  • 発熱,悪寒,または帯下:骨盤内感染症

  • 腹痛(特に食事によって誘発される場合),便通の変化,または下血:消化管疾患

  • 頻尿,尿意切迫,排尿困難,または血尿:泌尿器疾患

既往歴の聴取では,産科および婦人科歴(経妊回数,経産回数,月経歴,性交歴,性感染症,不妊,異所性妊娠,骨盤内炎症性疾患の既往)と尿路結石および憩室炎を始めとする消化管または泌尿生殖器の病態やがんの既往に注意すべきである。腹部および骨盤内手術の既往歴に注意すべきである。

身体診察

身体診察は発熱または血行動態不安定の徴候(例,低血圧,速い脈拍)を見つけるためバイタルサインの評価から始め,腹部の診察および内診に焦点を置く。

腹部を触診して,圧痛,腫瘤および腹膜刺激徴候がないか確認する。Carnett徴候(仰臥位の患者が頭部または両脚を挙上して腹直筋を収縮させたときに生じる局所的な腹部圧痛)がないか検査することがある。陽性判定は前皮神経絞扼症候群を示唆し,この症候群は慢性骨盤痛の筋骨格系の原因となりうる。

詳細な内診を行う。腟鏡診の際に,腟および頸部を視診して,分泌物,病変,または出血がないか確認する。双合診では頸部移動痛,子宮の大きさ,腫瘤,圧痛,硬さ(硬いまたは軟らかい),および可動性,ならびに付属器の腫瘤,圧痛,および可動性を評価する。

腟直腸診を行い,骨盤後方部の腫瘤または圧痛,直腸腟中隔の圧痛または結節,および直腸の腫瘤または下血を調べる。

痛みの部位および関連所見が原因への手がかりとなる可能性がある(骨盤痛の診断へのいくつかの手がかりの表を参照)。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見には特に注意が必要である:

  • 失神または出血性ショック(例,頻脈,低血圧):異所性妊娠,卵巣嚢胞破裂,またはその他の婦人科的もしくは非婦人科的病因による腹部出血

  • 腹膜刺激徴候(反跳痛,筋硬直,筋性防御):腸もしくは他の腹部臓器の穿孔,または卵管卵巣膿瘍

  • 発熱または悪寒:卵管卵巣膿瘍または他の感染症の可能性

  • 悪心,嘔吐,または発汗を伴う突然発症する重度の痛み:付属器捻転

所見の解釈

骨盤痛の急性度および重症度,ならびに月経周期との関係から,最も可能性の高い原因が示唆される可能性がある(骨盤痛の原因としての婦人科疾患の表を参照)。疼痛の性質と位置,および関連所見もまた手がかりとなる(骨盤痛の診断へのいくつかの手がかりの表を参照)。しかしながら,所見は非特異的である場合がある。例えば,子宮内膜症は様々な所見(例,性交痛,月経困難症,持続性の骨盤痛,排便困難)につながりうる。

表&コラム
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検査

骨盤痛の患者における検査は,疼痛が急性か慢性かによって異なる。

急性骨盤痛のある女性患者には全例で以下を行うべきである:

  • 血算

  • 尿検査

  • 妊娠検査

血算によって,貧血(急性または慢性出血を示唆)または白血球増多(感染症を示唆)を診断できる。泌尿器症状がある場合,尿検査は骨盤痛の一般的な原因(例,膀胱炎,尿路結石)を評価するための迅速で単純な検査である。

患者が妊娠検査で陽性であり,痛みまたは出血がある場合,経腟超音波検査によって除外されるか(胎児の極または卵黄嚢が認められない),または超音波検査では不明瞭な場合は他の検査によって除外されるまでは,異所性妊娠を考える。

経腟超音波検査では,以下のような急性疼痛の他の病因が同定または示唆されることもある:

  • 卵巣嚢胞破裂:骨盤内にエコー源性の貯留液を伴う卵巣嚢胞

  • 付属器捻転:ドプラ法で血流欠如を認める卵巣または卵管腫瘤(特に腫瘤が5cmを超える場合)

  • 複雑性かつ多房性の付属器腫瘤:卵管卵巣膿瘍(良性腫瘍の場合も悪性腫瘍の場合もあるが,急性骨盤痛を呈する可能性は低い)

虫垂炎が疑われる場合は,骨盤および腹部CTを施行すべきである。

重度または持続性の疼痛の原因が同定されないままで,患者の血行動態が不安定であり,重篤となりうる病因(例,異所性妊娠の破裂,腹膜炎)が疑われる場合,腹腔鏡検査または開腹手術が必要になることがある。

慢性骨盤痛の場合は,臨床的に疑われる疾患に応じて検査を行う(骨盤痛の原因としての婦人科疾患の表を参照)。うつ病や他の精神疾患およびドメスティックバイオレンスや性的外傷のスクリーニングも行うべきである。

女性の骨盤痛の治療

可能であれば,骨盤痛の原因となっている基礎疾患を治療する。

月経周期に関連する痛み(例,月経困難症子宮内膜症)はホルモン避妊薬で治療することがある。

妊娠していない患者の骨盤痛はまず経口非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)で治療する(1)。患者が特定のNSAIDに良好に反応しない場合でも,別のNSAIDには反応することがある。神経障害性の慢性骨盤痛には,セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)およびカルシウムチャネルのα2δリガンド(ガバペンチンまたはプレガバリン)が推奨される。活動性のがんがある場合と終末期の緩和ケアの場合を除き,慢性骨盤痛にはオピオイドは推奨されない。

さらに,精神医学的併存症に関連する疼痛または筋筋膜性骨盤痛の管理には,骨盤底の理学療法,セックスセラピー,または認知行動療法が推奨される。難治例ではトリガーポイント注射やボツリヌス毒素注射などの処置を用いることができる。

上記のいずれの治療にも反応しない難治性の疼痛がある患者には,診断目的または腹腔鏡下で,子宮内膜症の治療,または癒着剥離術,仙骨子宮靱帯切断術,仙骨前交感神経切断術,もしくは子宮摘出術を施行することがある。

治療に関する参考文献

  1. 1.Chronic Pelvic Pain: American College of Obstetricians and Gynecologists  (ACOG) Practice Bulletin, Number 218. Obstet Gynecol.2020;135(3):e98-e109.doi:10.1097/AOG.0000000000003716

老年医学的重要事項:女性の骨盤痛

高齢女性では骨盤痛の症状が非特異的な場合がある。腸および膀胱機能に注意した慎重なシステムレビュー(review of systems)が必須である。

高齢女性では,骨盤痛を引き起こす一部の疾患が年齢とともにより多くみられるようになるため(特に閉経後),骨盤痛または不快感の一般的な原因は異なる可能性がある。そのような疾患としては以下のものがある:

一般的な病歴および産科ならびに婦人科歴を得るべきである。性交歴も聴取すべきである;医師はしばしば多くの女性が生涯を通じて性的に活動的であり続けることに気づかない。

急激な食欲低下,体重減少,ディスペプシア,腹部膨満,または排便習慣の突然の変化は卵巣がんまたは子宮体がんの徴候であることがあり,徹底した臨床的評価が必要である。

要点

  • 骨盤痛は女性において一般的で,婦人科的または非婦人科的原因によることがある。

  • 骨盤痛のある妊娠可能年齢の女性には,病歴から妊娠が示唆されない場合でも,妊娠検査を行う。

  • 疼痛の性質,急性度,重症度,および部位,ならびに疼痛と月経周期の関係から,最も可能性の高い原因が示唆される可能性がある。

  • 急性骨盤痛は,バイタルサイン,身体診察,妊娠検査,血算,尿検査,および骨盤の画像検査により評価する。

  • 慢性骨盤痛は,詳細な内科的,外科的,産科的,および婦人科的病歴聴取と徹底的な身体診察により評価する。

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