爪真菌症

(爪白癬)

執筆者:Chris G. Adigun, MD, Dermatology & Laser Center of Chapel Hill
レビュー/改訂 2021年 12月
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爪真菌症は爪甲,爪床,またはその両方に生じた真菌感染症である。典型的には,爪が変形し,白色または黄色に変色する。診断は病変の外観,KOH直接鏡検,培養,PCR検査,またはこれらの併用による。適応がある場合の治療は,テルビナフィンまたはイトラコナゾールの内服による。

爪疾患の概要も参照のこと。)

人口の約10%(範囲2~14%)が爪真菌症に罹患している。

爪真菌症の危険因子としては以下のものがある:

  • 足白癬

  • 既存の爪異栄養症(例,乾癬患者の場合)

  • 高齢

  • 男性

  • 足白癬または爪真菌症を有する個人への曝露(例,家族または公衆浴場の利用者)

  • 末梢血管疾患または糖尿病

  • 易感染状態

足の爪の感染は手の爪の感染より10倍多い。全症例の約60~80%は皮膚糸状菌(例,Trichophyton rubrum)が原因であり,爪の皮膚糸状菌感染症は爪白癬と呼ばれる。残りの症例の多くは,皮膚糸状菌以外の真菌(例,AspergillusScopulariopsisFusarium)によって引き起こされる。易感染性患者および慢性皮膚粘膜カンジダ症の患者では,カンジダ性爪真菌症(好発部位は手指)が生じることもある。足白癬を繰り返す患者では,無症状の爪真菌症が生じることもある。爪真菌症の患者では,下肢に蜂窩織炎が生じやすくなることがある。

爪真菌症
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爪真菌症は爪甲,爪床,またはその両方に生じた真菌感染症である。感染の形態として,爪甲が肥厚および黄色化して爪下にケラチンと組織片が蓄積する遠位爪甲下型(上),近位爪甲下型(写真なし),ならびに爪表面の下にチョーク状の白色鱗屑が広がる表在性白色型(下)がある。
Images provided by Thomas Habif, MD.

症状と徴候

爪甲に白色または黄色の変色斑と変形が生じるが,自覚症状はみられない。頻度の高い特徴的なパターンが3つある:

  • 遠位爪甲下型(distal subungual):爪甲が肥厚および黄色化し,遠位部の爪甲下にケラチンおよび組織片が蓄積して,爪甲が爪床から分離する(爪甲剥離症)。

  • 近位爪甲下型(proximal subungual):近位部から始まる型であり,免疫抑制のマーカーである。

  • 表在性白色型(white superficial):チョーク状の白色鱗屑が爪表面の下で徐々に拡大する。

母趾の爪真菌症
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この写真には,母趾の爪真菌症が写っている。右足趾の爪は古典的な遠位外側部の(遠位爪甲下型)爪真菌症(DLO)を示しているのに対し,左足趾の爪はDLOとして始まって白癬菌塊(dermatophytoma;線状に見える菌糸の稠密な集塊)に進行した可能性が高い。
Image courtesy of Dr. Edwin P.Ewing, Jr.via the Public Health Image Library of the Centers for Disease Control and Prevention.

診断

  • 臨床的評価

  • KOH直接鏡検

  • 培養またはPCR検査

  • 切り取った爪甲と爪下の組織片のPAS(過ヨウ素酸シッフ染色)染色による病理組織学的検査

Update on current approaches to diagnosis and treatment of onychomycosisも参照のこと。)

爪真菌症は足白癬が併存する患者で外観から疑われるが,有用な臨床的特徴としては,第3趾または第5趾の爪の罹患,同側の足の第1趾および第5趾の爪の罹患,片側性の爪変形などがある。足白癬を繰り返す患者では,無症状の爪真菌症を考慮すべきである。

治療法が異なるため,乾癬または扁平苔癬との鑑別が重要であり,典型的に確定診断は,鏡検と(鏡検所見が確定的でない場合)擦過検体の培養または切り取った爪でのPCR検査によって行う。擦過検体は罹患爪のできるだけ近位部から採取し,KOH直接鏡検で菌糸の有無を調べ,さらに培養を行う。より高価ではあるものの,PCR検査が爪真菌症の診断を確定する検査法として一般的になっており,特に培養が陽性である場合や確定診断が必要な場合に用いられる(123)。切り取った爪甲と爪下の組織片のPAS染色による病理組織学的検査も役立つ場合がある。

爪の培養用に十分な検体を得るのは,採取は容易であるものの,遠位部の爪下試料は生きた真菌を含んでいないことが多いため,困難となることがある。このため,検体採取の前に爪切りで爪の遠位部を除去するか,小さな鋭匙を用いてより近位部の爪下まで到達することで,検出率を高められる。

診断に関する参考文献

  1. 1.Joyce A, Gupta AK, Koenig L, et al: Fungal Diversity and Onychomycosis: An analysis of 8,816 toenail samples using quantitative PCR and next-generation sequencing.J Am Podiatr Med Assoc 109(1):57–63, 2019.doi: 10.7547/17-070

  2. 2.Haghani I, Shams-Ghahfarokhi M, Dalimi Asl A, et al: Molecular identification and antifungal susceptibility of clinical fungal isolates from onychomycosis (uncommon and emerging species).Mycoses 62(2):128–143, 2019.doi: 10.1111/myc.12854

  3. 3.Gupta AK, Mays RR, Versteeg SG, et al: Update on current approaches to diagnosis and treatment of onychomycosis.Expert Rev Anti Infect Ther 16(12):929–938, 2018.doi: 10.1080/14787210.2018.1544891

治療

  • テルビナフィンまたはイトラコナゾール経口薬の選択的使用

  • ときに外用薬(例,エフィナコナゾール,タバボロール[tavaborole],8%シクロピロクス,アモロルフィン)の使用

爪真菌症は,多くの症例が無症状または軽度であり,合併症を引き起こす可能性が低く,また最も効果的な治療である経口薬が肝毒性や重篤な薬物相互作用を引き起こす可能性があることから,常に治療するわけではない。提唱されている治療適応としては以下のものがある:

  • 同側の蜂窩織炎の既往

  • 糖尿病の存在または蜂窩織炎の他の危険因子

  • 手こずる症状の存在

  • 心理社会的影響

  • 整容的改善の希望(異論もある)

爪真菌症の治療は,典型的にはテルビナフィンまたはイトラコナゾールの内服による。テルビナフィン250mg,1日1回,12週間(手指の爪では6週間)または250mg,1日1回,1週間/月のパルス療法を爪が透明になるまで施行することで75~80%の治癒率が得られ,イトラコナゾール200mg,1日2回,1週間/月,3カ月間では40~50%の治癒率が得られているが,全体の再発率は10~50%に上ると推定されている。これらの薬剤は爪甲に結合して残留し,服用を中止しても効果を発揮し続けるため,必ずしも爪の異常が全て消失するまで治療を継続する必要はないが,そのような症例では再発リスクが高い可能性がある。侵された爪は正常には戻らないが,新しく成長する爪の外観は正常となる。フルコナゾールも選択肢となりうる。

新しい外用薬であるエフィナコナゾールとタバボロール(tavaborole)は,爪甲を通過することができ,従来の外用薬よりも効果的である。

研究段階の治療法として,新しいドラッグデリバリーシステムによるテルビナフィンの投与などがある。エフィナコナゾール10%,シクロピロクス8%,またはアモロルフィン5%(米国では入手できない)を含有するマニキュア型製剤の外用抗真菌薬がときに初期治療として効果的であり(治癒率は約30%),特に治療抵抗性の感染がある場合,経口薬の補助として使用すれば治癒率が改善することがある。

再発を抑制するため,患者に爪を短く切らせ,入浴後は足を乾燥させ,吸水性の高い靴下を履かせ,抗真菌薬の足用パウダーを使用させるべきである。古い靴には胞子が高密度に存在していることがあり,可能であれば履かせるべきでない。

要点

  • 爪真菌症は有病率の高い疾患であり,とりわけ高齢男性と末梢部の循環障害,爪異栄養症,足白癬を有する患者で特に多くみられる。

  • 診断は外観および爪症状のパターンにより疑い,鏡検と培養またはPCR法により確定する。

  • 治療は,爪真菌症が合併症や厄介な症状を引き起こしている場合にのみ必要である。

  • 治療が必要な場合は,テルビナフィン(最も効果的な治療法)と再発予防の対策(例,湿気の抑制,古い靴の廃棄,爪を短く切って整える)を考慮する。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Update on current approaches to diagnosis and treatment of onychomycosis (2018)

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