ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン

執筆者:Margot L. Savoy, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University
レビュー/改訂 2023年 7月
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ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症は最もよくみられる性感染症である。HPVはその型に応じて,皮膚疣贅,尖圭コンジローマ,または特定のがんを引き起こす可能性がある。尖圭コンジローマやがんを引き起こすHPV株の多くに対して予防効果のあるワクチンが使用可能になっている。ただし,ワクチンに含まれていない型のHPVによって引き起こされる子宮頸癌もあるため,HPVワクチンを接種したからといって,パパニコロウ(Pap)検査によるスクリーニングを継続しなくてよいわけではない。

詳細については,Human Papillomavirus (HPV) Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCenters for Disease Control and Prevention (CDC): Human Papillomavirus (HPV) Vaccination Informationを参照のこと。

予防接種の概要も参照のこと。)

HPVワクチンの製剤

以下の3つのワクチンにHPVに対する予防効果が認められている:

  • ヒトパピローマウイルス6型および11型(尖圭コンジローマの90%以上の原因),16型および18型(子宮頸癌の約70%および肛門癌の約90%の原因),ならびに31型,33型,45型,52型,および58型(全体で子宮頸癌の10~20%の原因[1])の感染を予防する9価HPVワクチン

  • ヒトパピローマウイルス6型,11型,16型,および18型の感染を予防する4価HPVワクチン(HPV4)

  • ヒトパピローマウイルス16型および18型の感染を予防する2価HPVワクチン(HPV2)

米国では現在9価ワクチンのみが使用可能である。

HPVワクチンは,組換えDNA技術を利用してHPVの主要カプシドタンパク質(L1)から調製される。L1タンパク質は,自然に会合して,感染性も発がん性もないウイルス様粒子(VLP)を形成する。

製剤に関する参考文献

  1. 1.National Cancer Institute: Human papillomavirus (HPV) vaccines.2019.

HPVワクチンの適応

HPVワクチンは,ルーチンの小児予防接種に組み込まれている(CDC: Child and Adolescent Immunization Schedule by Ageを参照)。米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)が承認していた9価ワクチンの適応が最近になって拡大され,HPVに関連する特定の悪性腫瘍および疾患の予防として27~45歳の成人が対象に含められた。Advisory Committee on Immunization Practicesによる最新の勧告は以下の通りである:

  • 26歳以下の男女:HPVワクチンは11歳または12歳(9歳から開始可能)での接種が望ましいが,ワクチン接種を受けたことがない,または所定の接種回数を完了していない26歳までの患者に推奨される。

  • 27~45歳の成人:接種すべきかどうかについて医師と患者が話し合い,共同で意思決定を行うべきである。

CDC: Adult Immunization Schedule by Ageも参照のこと。

あるいは(米国外で検討する場合)以下を使用することができる:

  • 女性に対してHPV4またはHPV2

  • 男性(男性と性行為をする男性を含む)に対してHPV4

HPVワクチンの禁忌および注意事項

HPVワクチンの禁忌としては以下のものがある:

  • 以前の接種後に,またはワクチン成分に対して,重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

  • 妊娠

HPVワクチンは妊婦には推奨されないが,接種前の妊娠検査は不要である。一連の接種を開始した後に妊娠が診断された場合は,特に介入は不要であるが,残りの接種は妊娠が終わるまで延期すべきである。

HPVワクチンの主な注意事項は以下の通りである:

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(その疾患が軽快するまで接種を延期する)

HPVワクチンの用量および用法

HPVワクチンの用量は0.5mLの筋肉内接種であり,HPVワクチンの初回接種年齢に応じて,計3回または計2回のスケジュールで接種する。

  • 初回接種が9~14歳:0および6~12カ月時点で計2回。最短接種間隔は5カ月である。2回目を早く接種しすぎた(5カ月未満)場合は,無効となった接種の12週間後以降かつ初回接種の5カ月後以降に再度接種すべきである。

  • 初回接種が15歳以降:0,1~2,および6カ月時点で計3回。最短接種間隔は初回と2回目の間が4週間,2回目と3回目の間が12週間,初回と3回目の間が5カ月である。2回目または3回目の接種が早すぎた場合は,再度接種すべきである。

  • 27~45歳の一部の成人:話し合いによる共同での臨床的意思決定に基づき,この年齢層の成人には,上述のように計2回または計3回の接種を行ってもよい。

  • HIV感染症などの易感染状態にある個人:易感染者には,初回接種年齢にかかわらず,上述のように計3回の接種を行う。

HPVワクチンの有害作用

重篤な有害作用は報告されていない。

頻度の高い有害反応としては,発熱,悪心,めまいのほか,疼痛,腫脹,紅斑,そう痒,皮下出血といった注射部位反応などがある

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): Human Papillomavirus (HPV) ACIP Vaccine Recommendations

  2. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Human Papillomavirus (HPV) Vaccination Information for Clinicians

  3. European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC): Human Papillomavirus Infection: Recommended vaccinations

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