免疫学的検査では以下のいずれかを使用する:
抗原を用いて患者の検体中で病原体に対する抗体を検出する
抗体を用いて患者の検体中で病原体の抗原を検出する
検体の取り扱いは様々であるが,検査が遅れる場合は,混入細菌の過剰な増殖を予防するため,通常は検体を冷蔵または凍結保存するべきである。
凝集試験
凝集試験(例,ラテックス凝集法,ゼラチン粒子凝集法,共凝集反応法)では,非常に小さな粒子(ラテックスビーズ,ゼラチン粒子,細菌)を抗原または抗体試薬に結合させる。得られた粒子複合体を検体(例,髄液,血清)と混合すると,検体中に標的の抗体または抗原が存在すれば,それにより粒子が架橋されて測定可能な凝集を生じる。
結果が陽性となった場合は,体液を段階希釈して試験を行う。凝集がみられる溶液の希釈倍率が高いほど,標的の抗原または抗体の濃度が高いことを意味する。力価は凝集がみられる最大希釈度の逆数として正確に報告される;例えば,32という結果は開始濃度の1/32までの希釈液で凝集が起こったことを意味する。
通常,凝集試験は迅速であるが,他の多くの方法よりも感度が低い。一部の細菌では血清型も判定できる。
補体結合試験
補体結合試験では,血清または髄液を検体として補体を消費する(補体結合)抗体を測定する。この検査法は一部のウイルスおよび真菌感染症,特にコクシジオイデス症の診断に用いられる。
既知量の補体および抗原(測定対象の抗体が標的とするもの)とともに検体をインキュベーションする。補体結合の程度から,検体中の抗体の相対量を知ることができる。
この検査法ではIgMおよびIgGの抗体価を測定でき,特定の抗原を検出するための改良が可能である。精度の高い検査法であるが,適用対象が限られ,多くの労力を要し,多数のコントロールを必要とする。
酵素免疫測定
酵素免疫測定法では,酵素を結合させた抗体を用いて抗原の検出,ならびに抗体の検出および定量を行う。具体例を以下に示す:
酵素免疫測定法(EIA)
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
大半の酵素免疫測定法は高感度であるため,通常はスクリーニングに用いられる。凝集試験と同様に,検体の段階希釈により力価を測定することができる。
検査としての感度は通常高いが,ときに患者の年齢,細菌の血清型,検体の種類,または疾患の臨床病期によって変動しうる。
沈降試験
沈降試験では,ゲル(アガロース)内または溶液中での抗原抗体複合体の肉眼的な沈降の程度により,体液中の抗原または抗体を測定する。沈降試験には多くの種類があるが(例,二重拡散法[Ouchterlony法],交差免疫電気泳動法),その適用範囲は限られている。
通常は患者抗体を検出する目的で血液検体と試験抗原を混合するが,大半は真菌感染症または化膿性髄膜炎が疑われる場合に行う。陽性の結果が出るには大量の抗体または抗原が必要であるため,感度は低い。
ウェスタンブロット検査
ウェスタンブロット検査では,患者検体(例,血清,他の体液)中の抗微生物抗体を,ブロット法により膜に固定した標的抗原(例,ウイルスの構成成分)と反応させることによって検出する。
ウェスタンブロット検査は,しばしばELISAなどのスクリーニング検査よりは感度が低いものの,典型的には感度良好であり,概して特異度も高い。そのため,通常はスクリーニング検査で得られた陽性判定の確認に用いられる。
ウェスタンブロット法を技術的に改良した方法として以下のものがある:
line immunoassay (LIA)
組換えイムノブロット法(RIBA):合成または組換え抗原を使用する
イムノクロマトグラフィー法:特異的な微生物抗原または患者抗体について迅速に検体をスクリーニングできる
これら3つのうちではイムノクロマトグラフィー法が最も操作が容易で,最も頻用されている(例,志賀毒素産生菌,Cryptococcus neoformansの莢膜抗原,およびインフルエンザウイルスの検出)。