脆弱X関連振戦/失調症候群(FXTAS)

執筆者:Hector A. Gonzalez-Usigli, MD, HE UMAE Centro Médico Nacional de Occidente
レビュー/改訂 2022年 2月
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脆弱X関連振戦/失調症候群(fragile X-associated tremor/ataxia syndrome)は,主に男性に発生して振戦,運動失調,および認知症を引き起こす遺伝性疾患である。振戦は一般的な初期症状であり,続いて運動失調,パーキンソニズム,やがて認知症が現れる。診断は遺伝子検査によって確定する。振戦はしばしばプリミドン,プロプラノロール,および/または抗パーキンソン病薬により軽減できる。

運動障害疾患および小脳疾患の概要も参照のこと。)

脆弱X関連振戦/失調症候群(FXTAS)は50歳以上の男性の約1/3000にみられる。原因は,X染色体にあるFMR1(Fragile X mental retardation 1)遺伝子の前変異(50~200回のCGGリピート)である。脆弱X症候群は,男性で最も頻度の高い知的障害の形態であり,完全な変異(200リピート超)が生じた場合に発生する。

前変異をもつ個人は保因者とみなされる。前変異をもつ男性の娘には,前変異が遺伝する(息子には遺伝しない)。これらの娘の子(FXTAS前変異をもつ男性の孫)に前変異が遺伝する可能性は50%であり,母から子に受け継がれるときに完全な変異に発展する可能性がある(よって,脆弱X症候群を引き起こす)。

FXTASは前変異をもつ男性の約30%,前変異をもつ女性の5%未満に生じる。

FXTASを発症するリスクは年齢とともに上昇する。

FXTASの症状と徴候

FXTASの症状は成人期後期に気づかれるようになる。CGGリピートが多いほど,症状は重症で,発症は早くなる。

振戦は,しばしば本態性振戦と誤診されるが,FXTASでよくみられる初期症状である。振戦は通常,企図振戦である。運動失調(進行性に悪化する),続いてパーキンソニズム(安静時振戦など),最終的には認知症が生じる。

その他のX染色体異常(例,クラインフェルター症候群[XXY核型])の患者では,本態性振戦に類似した振戦がみられることがある。

パール&ピットフォール

  • 本態性振戦と診断された患者に運動失調やパーキンソニズムの徴候が生じた場合は,FXTASを考慮する。

認知症は短期記憶の喪失に始まり,思考が緩慢になり,問題解決が困難になる。抑うつ,不安,忍耐力低下,敵意,および情緒不安定が生じる場合がある。

末梢神経障害がしばしばみられ,足の感覚および反射の消失を引き起こす。自律神経失調症(例,起立性低血圧)が生じる場合がある。後期には,排尿および排便制御機能が失われる場合がある。

運動症状が生じた後の期待余命は,約5~25年の範囲である。

前変異をもつ女性では,おそらくもう一方のX染色体の存在が保護的に作用するため,通常症状は比較的軽度である。これらの女性では早期の閉経,不妊,および卵巣機能障害のリスクが高い。

FXTASの診断

  • 遺伝子検査

FXTASが疑われる場合は,患者に知的障害のある孫がいるかどうか,また娘に早期閉経または不妊があったかどうかを問診すべきである。

また,患者が脆弱X症候群を有する場合,医師は患者の祖父母にFXTASを示唆する症状があるかどうかを判定すべきであり,症状がある場合は,その祖父母の子および孫に対する遺伝カウンセリングが推奨される。

MRIを施行する;中小脳脚に特徴的な高信号が認められる場合がある。

FXTASの診断は遺伝子検査によって確定する。

FXTASの治療

  • プリミドン,プロプラノロール,トピラマート,ガバペンチン,プレガバリン,ベンゾジアゼピン系薬剤,および/または抗パーキンソン病薬

FXTASの安静時振戦は,しばしばプリミドン,プロプラノロール,トピラマート,ガバペンチン,プレガバリン,ベンゾジアゼピン系薬剤,および/または抗パーキンソン病薬で緩和できるが,用量はまだ標準化されていない(1, 2)。

治療に関する参考文献

  1. 1.Hall DA, Berry-Kravis E, Hagerman RJ, et al: Symptomatic treatment in the fragile X-associated tremor/ataxia syndrome.Mov Disord  21 (10):1741–1744, 2006.doi: 10.1002/mds.21001

  2. 2.Cabal-Herrera AM, Tassanakijpanich N, Salcedo-Arellano MJ, Hagerman RJ: Fragile X-associated tremor/ataxia syndrome (FXTAS): Pathophysiology and clinical implications.Int J Mol Sci 21 (12): 4391, 2020.Published online 2020 Jun 20.doi: 10.3390/ijms21124391

要点

  • 脆弱X関連振戦/失調症候群(FXTAS)は50歳以上の男性の約1/3000にみられ,脆弱X症候群は男性で最も頻度の高い知的障害の原因であり,関連遺伝子の変異によって生じる。

  • 問診では,患者に知的障害のある孫がいるかどうか,また娘に早期閉経または不妊があったかどうかを尋ね,脆弱X症候群の患者の祖父母に,FXTASを示唆する症状があったかどうかを尋ねる。

  • 診断確定のため遺伝子検査を行う。

  • 振戦の治療には,プリミドン,プロプラノロール,トピラマート,ガバペンチン,プレガバリン,ベンゾジアゼピン系薬剤,および/または抗パーキンソン病薬を使用する。

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