クラインフェルター症候群は,2つ以上のX染色体に加えて1つのY染色体が存在する異常であり,表現型は男性となる。診断は臨床所見に基づき,細胞遺伝学的分析で確定する。治療にはテストステロンの補充を含めることがある。
(染色体異常症の概要も参照のこと。)
クラインフェルター症候群は最も頻度の高い性染色体異常で,男子出生500例当たり1例ほどの頻度で発生する。過剰なX染色体は60%の症例で母親由来である。胚細胞が精巣内で生存できないため,精子およびアンドロゲンが減少する。
患児は高身長で上下肢が不自然に長い傾向がみられる。しばしば小さく硬い精巣がみられ,約30%で女性化乳房が認められる。
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通常,思春期発来年齢は正常であるが,顔毛の発育不良がしばしば認められる。言語性学習症の素因がある。臨床像は非常に多彩であり,47,XXY男性の多くは正常な外見と知能を有する。精巣の発達は,精細管が硝子化して機能を喪失した状態から精子を多少産生できる状態まで様々であり,卵胞刺激ホルモンの尿中排泄量がしばしば高値となる。
約15%の症例でモザイクがみられる。一部の細胞で正常な男性の核型(XY)を有する男性では,生殖能力があり,形成異常はそれほど明白でない場合がある。Y染色体に加えてX染色体を3つまたは4つ有する男性もおり,5つ有する男性も存在する。X染色体の数が増えるほど,知的障害および形成異常の重症度が高くなる。過剰なX染色体1つにつき,IQが15~16ポイント低下し,言語機能(特に表出性言語)が最も影響を受ける。
クラインフェルター症候群の診断
出生前診断,しばしば母体年齢が高いなどの他の理由で細胞遺伝学的検査が行われた場合
臨床的な外観に基づいた出生後の検出
核型分析,蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)解析,および/または染色体マイクロアレイ解析による細胞遺伝学的検査
身体診察で精巣が小さく女性化乳房を有する青年を認めた場合,クラインフェルター症候群が疑われる。多くの男性が不妊症精査の過程で診断される(おそらくモザイクのない47,XXY男性の大半は生殖能力が低い)。
細胞遺伝学的検査(核型分析,FISH解析,および/または染色体マイクロアレイ解析)により診断を確定する。(染色体異常症の診断および次世代シークエンシング技術も参照のこと。)
クラインフェルター症候群の治療
テストステロンの補充
思春期発来直後の妊孕性温存に関するカウンセリング
クラインフェルター症候群を有する男性は,内分泌医が評価し,テストステロン補充の適応があるかどうかを判定すべきである。テストステロン療法は,男性徴候,筋肉量,骨格,および良好な心理社会的機能の発達を確保するため,典型的には思春期に開始する。より最近の研究からは,早期のホルモン療法が47,XXYの男児における発達および行動の問題に役立つ可能性があると示唆されている。
クラインフェルター症候群の男児には,通常,言語療法ならびに言語理解,読字,および認知障害に対する神経心理学的検査が有益である。
思春期発来後,男児は妊孕性温存に関するカウンセリングを受けるべきである。