せん妄および認知症の概要

執筆者:Juebin Huang, MD, PhD, Department of Neurology, University of Mississippi Medical Center
レビュー/改訂 2023年 2月
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    認知障害の原因として最も頻度の高い病態は,せん妄(ときに急性錯乱状態とも呼ばれる)と認知症であるが,気分症(例,うつ病)によって認知機能が障害されることもある。せん妄と認知症は異なる病態であるが,ときに鑑別が困難である。どちらも認知機能が障害されるが,両者の鑑別には以下の点が役立つ:

    • せん妄は主に注意力および意識に影響を及ぼす。

    • 認知症は主に記憶とその他の認知機能に影響を及ぼす。

    その他の特異的な特徴も,これら2つの病態の鑑別に有用である(せん妄と認知症の相違点の表を参照)。

    • せん妄は典型的には急性疾患または医薬品もしくはレクリエーショナルドラッグによる薬物中毒(ときに生命を脅かす)によって引き起こされ,可逆的であることが多い。

    • 認知症は典型的には脳の解剖学的変化によって生じ,発症がより緩徐で,一般に不可逆的である。

    高齢患者では,せん妄を認知症と誤認することがよくある診療エラーとなっている。

    臨床検査では認知障害の原因を確定できないため,徹底的な病歴聴取および身体診察,ならびにベースラインの機能に関する情報が不可欠である。

    表&コラム
    表&コラム

    せん妄と認知症はそれぞれ別の疾患と考えられているものの,その間には複雑な関係がある。認知症の患者はしばしばせん妄を来すが,この状態は認知症に合併したせん妄(delirium superimposed on dementia:DSD)と呼ばれる。DSDは入院中の認知症患者の最大49%に発生する可能性がある。また,せん妄のある患者も認知症の発生リスクが高い(1)。

    総論の参考文献

    1. 1.Fong TG, Inouye SK:The inter-relationship between delirium and dementia: The importance of delirium prevention.Nat Rev Neurol 18 (10):579–596, 2022.doi: 10.1038/s41582-022-00698-7

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