リウマチ性多発筋痛症

執筆者:Alexandra Villa-Forte, MD, MPH, Cleveland Clinic
レビュー/改訂 2022年 6月
意見 同じトピックページ はこちら

リウマチ性多発筋痛症は,巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)と密接に関連する症候群である。55歳以上の成人に発生する。典型的には近位筋に重度の痛みおよびこわばりが生じ(筋力低下や萎縮は伴わない),非特異的な全身症状を呈する。赤血球沈降速度(赤沈)亢進およびC反応性タンパク(CRP)の上昇が典型的にみられる。診断は臨床的に行う。低用量コルチコステロイドによる治療が効果的である。低用量から中用量のプレドニゾンまたはメチルプレドニゾロンに対する劇的で急速な反応が診断を裏付ける。

血管炎の概要も参照のこと。)

リウマチ性多発筋痛症は55歳以上の成人に発生し,女性:男性の比率は2:1である。

リウマチ性多発筋痛症は巨細胞性動脈炎と密接に関連するため,これら2つの疾患を同じ過程の異なる側面であるとみなす専門家もいる。リウマチ性多発筋痛症が,より一般的な疾患であると考えられる。リウマチ性多発筋痛症患者の少数が巨細胞性動脈炎を発症するが,リウマチ性多発筋痛症は40~60%の巨細胞性動脈炎患者にみられる。巨細胞性動脈炎に対して,リウマチ性多発筋痛症が先行するか,それに続く,または同時に発生する可能性がある。

リウマチ性多発筋痛症の病因と発生機序は不明である。超音波検査およびMRIの所見からは,おそらく軽度の軸性の滑膜炎および滑液包炎に由来することが示唆される。

リウマチ性多発筋痛症の症状と徴候

リウマチ性多発筋痛症は,肩および股関節の周囲筋ならびに背部(上部と下部)および頸部の筋肉の近位部に両側性に生じる,うずくような痛みを特徴とする。朝のこわばりが典型的であり,60分間を超えて続く。肩の症状は近位の滑液包炎(例,三角筋下,肩峰下)および頻度は低いが上腕二頭筋腱鞘炎または関節滑膜炎を反映する。不快感は,患者を睡眠から覚醒させることがあり,朝に悪化し,ときにベッドから起き出したり単純な活動をしたりするのを妨げるほど重度である。痛みのために患者は筋力が低下したように感じることがあるが,実際の筋力低下は本疾患の特徴ではない。

リウマチ性多発筋痛症の診断

  • 臨床所見

  • 他の原因の除外

典型的な症状がみられる高齢患者においてリウマチ性多発筋痛症を疑うが,可能性のある他の原因を除外する必要がある。

検査には,赤血球沈降速度(赤沈),C反応性タンパク(CRP),血算,甲状腺刺激ホルモン,CK値などがある。80%を超える患者で,赤沈の著明な亢進がみられ,しばしば100mm/hを超え,通常は50mm/hを超える(Westergren法)。C反応性タンパク(CRP)値も上昇する。筋電図検査,生検,その他の検査(例,リウマトイド因子)は,リウマチ性多発筋痛症では正常であるが,臨床的に疑われる他の診断を除外するために行われることがある。

リウマチ性多発筋痛症における以下の所見により,この疾患は以下の疾患と鑑別される:

  • 関節リウマチ:リウマチ性多発筋痛症では,小関節の慢性滑膜炎,びらん性または破壊性の病変,リウマチ結節,およびリウマトイド因子が約80%の患者でみられない(一部の関節腫脹はみられることがある)。残りの20%の患者では関節リウマチとの鑑別が困難なことがある。

  • 自己免疫性筋炎:リウマチ性多発筋痛症では,筋力低下よりも疼痛がむしろ優勢であり,筋肉の酵素レベルと筋電図検査および筋生検の結果は正常である。

  • 甲状腺機能低下症:リウマチ性多発筋痛症では,甲状腺機能検査結果および筋肉の酵素レベルは正常である。

  • 多発性骨髄腫:リウマチ性多発筋痛症では,単クローン性免疫グロブリン血症はみられない。

  • 線維筋痛症:リウマチ性多発筋痛症では,症状がより限局しており,典型的には赤沈が亢進し,患者は気を取られているときでさえ,肩の触診と可動域(自動と他動)検査で痛みを訴える。

リウマチ性多発筋痛症の治療

  • プレドニゾン

15~20mg 1日1回経口投与で開始するプレドニゾンは,しばしば非常に速く(数時間から数日で)劇的な改善を示し,この反応が診断の裏付けに役立つ可能性がある。巨細胞性動脈炎が疑われる場合,コルチコステロイドの用量を増量すべきであり,また巨細胞性動脈炎の診断評価を行うべきである。

治療の有効性を症状,赤沈,およびC反応性タンパク(CRP)によりモニタリングする。症状が鎮静化するにつれ,赤沈値にかかわらず,コルチコステロイドを臨床的に効果的な最低量まで漸減する。赤沈は高齢患者では別の理由により持続的に高値を示すことがあるため,治療に対する反応をみるにはC反応性タンパク(CRP)の方が赤沈よりも役立つ。患者によってはほぼ2年で,再燃がなければさらに早く,コルチコステロイドの投与を中止できるが,何年にもわたって少量のコルチコステロイドの投与を必要とする患者もいる。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)で十分であることはまれである。

プレドニゾンの用量を漸減できない患者,また頻繁に再発を繰り返す一部の患者には,腎機能が正常であればメトトレキサート(10~15mgを週1回経口投与)の追加が有益となることがある。ランダム化比較試験で示されている便益はわずかまたは皆無であるため,リウマチ性多発筋痛症で2剤目の薬剤を追加することには議論がある。腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬(インフリキシマブおよびアダリムマブ)ならびにリツキシマブを用いた臨床試験では便益が示されていない。

高齢患者では,コルチコステロイド使用の合併症(例,糖尿病,高血圧症)に注意し,それに対する治療を行うべきである。長期間プレドニゾンを服用する患者には,骨粗鬆症を予防するためにビスホスホネートを投与すべきである。

リウマチ性多発筋痛症の発症時またはもっと後に,ときに患者が疾患から回復したようにみえた後でさえ,巨細胞性動脈炎が発生することがある。したがって,頭痛,咀嚼中の筋痛,および,特に視覚障害を直ちに医師に伝えるよう,全ての患者に指導すべきである。

要点

  • リウマチ性多発筋痛症は55歳以上の成人に発生し,近位の筋肉痛やこわばりを起こす。

  • リウマチ性多発筋痛症は巨細胞性動脈炎患者の40~60%にみられる。

  • 診断は臨床的に行い,赤沈亢進および低用量から中程度の用量のコルチコステロイドに対する劇的な反応がときに診断の裏付ける証拠となる。

  • 治療はコルチコステロイドにより行い,可能であれば最終的に漸減する。

  • 巨細胞性動脈炎の症状について患者に注意を促す。

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS