腹壁異常があると、腹腔を取りまく筋肉が脆弱であったり、穴が空いたりすることがあり、腸がはみ出してしまうことがあります。
主な腹壁異常は臍帯ヘルニアと腹壁破裂の2つです。
臍帯ヘルニア
腹壁破裂
腹壁破裂も腹壁に異常な開口部ができた状態です。腹壁破裂では、開口部がへその近く(通常は右側)にみられますが、臍帯ヘルニアのように、へそを直接またぎはしません。臍帯ヘルニアと同様に開口部から腸がこぼれ出るようになっていますが、臍帯ヘルニアとは異なり、腸が薄い袋で覆われていません。
腸が袋で覆われていないため、出生まで腸が羊水にさらされて炎症を起こす可能性があります。その炎症により腸が刺激される結果、消化器系の運動障害、瘢痕組織、腸閉塞といった合併症が発生する可能性があります。
(消化管先天異常の概要も参照のこと。)
腹壁異常の診断
血液検査
出生前超音波検査
医師は、母親の血液中のアルファ-フェトプロテイン(胎児の体内で作られるタンパク質の一種)の値が妊娠中に異常に高い場合に腹壁破裂を疑います。
臍帯ヘルニアと腹壁破裂は通常、決まって行われる出生前超音波検査によって出生前に診断されます。そうでない場合も、分娩後すぐに異常が目に見えて明らかになります。
腹壁異常の治療
手術
分娩が終わったら、露出した腸を保湿と保護のために滅菌したドレッシング剤で覆い、静脈から水分と抗菌薬を投与します。鼻から胃または腸まで細長いチューブ(経鼻胃管)を挿入し、胃にたまった消化液を排出します。
腸を腹腔の中に戻して開口部を閉鎖するための手術が必要です。可能であれば、欠損部を修復する手術を出生後すぐに行います。ただし、開口部を十分覆うことができるように、腹壁の皮膚を手術前に数日間伸ばしておく処置がしばしば必要になります。欠損部が大きい場合は、閉鎖するために皮膚弁の作製が必要になることがあります。腸が大量に飛び出している場合には、保護作用のある素材(サイロと呼ばれます)で腸を覆った上で、数日から数週間をかけて徐々に腹腔内に戻します。腸をすべて腹腔内に戻したら、開口部を外科的に閉鎖します。