小児における高血圧緊急症

(急性の重症高血圧)

執筆者:Bruce A. Kaiser, MD, Nemours/Alfred I. DuPont Hospital for Children
レビュー/改訂 2021年 12月
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高血圧緊急症とは、複数の重要臓器が損傷を受ける可能性のある、特に重症の突然に起こる高血圧をいいます。

小児における高血圧および成人の高血圧も参照のこと。)

  • 高血圧緊急症は、血圧が急激に上昇した場合に起こります。

  • 小児における高血圧緊急症の初発症状としては、典型的には頭痛、ぼんやりする、錯乱、けいれん発作であり、乳児では易刺激性がみられます。

  • 高血圧緊急症の診断は、血圧の測定と臓器障害の検査(心電図検査、心エコー検査、血液検査、尿検査など)によって下されます。

  • 高血圧緊急症の治療としては、小児を集中治療室に入室させ、できるだけ早く血圧を低下させるために薬剤を静脈から投与します。

血圧を測る際には、2つの数値を記録します。高い方の数値は、動脈内の圧力が最も高くなった状態を反映した値で、この状態は心臓が収縮している間(収縮期)に生じます。低い方の数値は、動脈内の圧力が最も低くなった状態を反映した値で、この状態は心臓が再び収縮し始める直前(拡張期)に生じます。血圧は「収縮期血圧/拡張期血圧」という形式で表され、例えば「120/80mmHg」のように表現され(mmHgはミリメートルで表した水銀柱の高さに基づく単位です)、これは収縮期血圧が120、拡張期血圧が80という意味になります。

高血圧緊急症は特に重症の、突然に起こる高血圧です。拡張期血圧(下の値)が通常100mmHg以上となり、重要臓器(典型的には脳、心臓、眼、腎臓)に進行性の障害を示す証拠がみられます。小児では様々な症状がみられます。

高血圧緊急症は小児では比較的まれです。以前に高血圧と診断されたことがある小児や、そうでない小児にも発生することがあります。

高血圧緊急症は、通常血圧が急激に上昇した場合に起こります。急激な上昇の原因は年齢によって異なります。最も一般的な原因は以下のものです。

高血圧緊急症は、迅速に治療されなければ、一般的には複数の重要臓器、特に以下の臓器に進行性の障害を引き起こします。

  • 脳:脳機能の低下、けいれん発作、または昏睡に至る可能性がある

  • 心臓:心不全に至る可能性がある

  • 眼:乳頭浮腫(視神経の腫れ)、網膜出血がみられることがある

  • 腎臓:腎機能障害または腎不全に至る可能性がある

治療しないでいると、高血圧緊急症は死に至ることがあります。

高血圧切迫症とは、症状を引き起こすほどの臓器障害はまだ生じていない重度の高血圧のことです。

小児における高血圧緊急症の症状

血圧が非常に高く、典型的にはII度(重症)高血圧またはそれ以上(140/90mmHg以上)です。

小児における高血圧緊急症の初発症状としては、典型的には頭痛、ぼんやりする(嗜眠)、錯乱、けいれん発作であり、乳児では易刺激性がみられます。昏睡状態に陥ることもあります。

心拍数の増加、胸痛、息切れ、足首の腫脹がみられることもあります。視力障害が生じることがあります。

小児における高血圧緊急症の診断

  • 血圧測定

  • 臓器の損傷を評価する検査

高血圧緊急症が疑われる場合は、医師は聴診器ではなくオシロメーターを用いて血圧を測定します。オシロメーターは血圧を自動的かつ迅速に記録し、必要とされる(2~3分毎の)測定に役立ちます。血圧計と聴診器を用いて血圧を再度測定し、測定結果を確認します。可能であれば、動脈内血圧モニタリングを行いますが、これは動脈内に合成樹脂製の細いチューブを挿入し、それを血圧計に接続するものです。このような動脈圧モニターは血圧を連続的に測定し、また他の装置と比べてより正確に測定します。

医師は病歴について質問し、これには小児の現在の症状、現在かかっている病気、服用している薬剤に関する質問が含まれます。

詳しい身体診察が行われ、標準的な血液検査や尿検査を行います。

重要臓器が損傷を受けているかどうか、損傷されている場合はどの程度の損傷があるかを判定するための検査も行います。具体的には以下の検査があります。

  • 心電図検査、胸部X線検査、および可能であれば、心疾患がないか確認するために心エコー検査

  • 腎臓の異常を調べる尿検査

  • 腎臓の損傷やホルモン異常を調べる血液検査

  • 血球数、特に血小板(血液凝固を助ける)の数の異常がないか調べる血算

  • 脳内に腫瘤または出血がないか確認し、脳に関連する症状について可能性のある他の原因を除外するために頭部のCT検査とMRI検査

  • 青年では薬物検査および妊娠検査

小児の高血圧が過去に診断も評価もされたことがない場合は、高血圧の原因を特定するその他の検査を後から行うことができます。

小児における高血圧緊急症の治療

  • 高血圧緊急症に対しては、集中治療室での管理と降圧薬の静脈内投与

  • 高血圧切迫症に対しては、緊急入院または入院と降圧薬の経口投与(ときに静注薬が必要)

高血圧緊急症の患児は速やかに集中治療室(ICU)に入室させるか、ICUが使用できない場合は救急診療部に収容して、迅速な治療と綿密な評価およびモニタリングを行えるようにします。そのような環境で、血圧を下げる薬(降圧薬)をできるだけ早く静脈内に投与することができます。

高血圧緊急症の治療の目標は、血圧を十分に低下させて生命を脅かす症状のリスクをなくし、重要臓器へのさらなる損傷を止めることです。

高血圧緊急症に対して望ましい静注薬はラベタロールとニカルジピンです。

望ましい薬剤が使用できないか、有効でない場合は、その他の静脈内注射要の薬剤として、ニトロプルシドナトリウム、ヒドララジン、およびエスモロールが使用できることがあります。

血圧が下がれば、薬剤の経口投与が可能となります。

高血圧切迫症(重度の高血圧があるものの、症状や臓器障害はみられない状態)の症にも入院または救急入院とし、直ちに評価を行いますが、高血圧緊急症の場合ほど迅速に血圧を下げる必要はありません。患児には一般的には経口で薬を投与します。ときに静注薬が必要になることもあります。

高血圧切迫症に対しては、クロニジン、ヒドララジン、イスラジピン(isradipine)、またはミノキシジルを経口投与します。

可能であれば、これらいずれかの疾患を有する小児は、小児の重度の高血圧の管理に長けた医師または専門医によって治療されるべきです。

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