小児と青年における双極性障害

(躁うつ病)

執筆者:Josephine Elia, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2021年 4月
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双極性障害では、強烈な高揚感と興奮状態の時期(躁状態)と気分がふさぎ込んで落胆した時期(抑うつ状態)が交互に現れます。それぞれの時期の間は、気分が正常なことがあります。

  • 小児は、興奮して幸せで活動的な状態から、ふさぎ込んで引きこもり、動作が緩慢になった状態、もしくは激怒と暴力に満ちた状態へと、急激に変わることがあります。

  • 診断は症状と精神医学的検査の結果に基づいて下されます。

  • 年少児に双極性障害と診断することの是非には賛否両論があります。

  • 治療法としては、躁状態を治療するための気分安定薬、抑うつ状態を治療するための抗うつ薬、精神療法などがあります。

正常な小児でも、機嫌がよく元気な状態から、むっつりして内気な状態へと、気分はすぐに揺れ動きます。このような気分の変動が精神障害の現れであることはめったにありません。双極性障害の場合は、こうした正常な気分の変化よりはるかに深刻で、それぞれの気分の持続期間が数週間もしくは数カ月と極めて長くなりがちです。

小児の双極性障害はめったにありません。以前は、年少児(4~11歳)が1日に何度も激しいかんしゃくを起こす場合に、しばしば双極性障害の診断が下されていました。現在、そのような小児は双極性障害ではなく、重篤気分調節症と考えられています。

双極性障害は、典型的には青年期の中期または成人期の初期に始まります。 青年の双極性障害は、成人の双極性障害と似ています。

原因は不明ですが、双極性障害を発症しやすい体質は遺伝します。脳の化学的な異常や解剖学的な異常が関与している可能性があります。双極性障害の小児では、ストレスが双極性障害の引き金になる可能性があります。また、甲状腺機能亢進症や注意欠如・多動症(ADHD)といった他の病気でも、双極性障害に類似の症状がいくつか現れます。環境中の特定の薬剤や毒性物質(鉛など)でも双極性障害に類似の症状を引き起こすことがあります。

最近の研究では、大麻製品を使用している青年において特定の精神病性障害(すなわち、双極性障害および統合失調症)の発生リスクが高まることも示されています。このようなリスクの増加は、遺伝的な要因では説明できません。最近のマリファナ合法化により、青年(とその親)がマリファナの使用に関して誤った安心感を抱いてしまう可能性が懸念されています。

症状

多くの小児では、双極性障害の最初の症状は1回または複数回の抑うつ状態です。

主な症状は、抑うつ状態と交互に現れる様々な程度の高揚感と興奮状態(強いものは躁状態、弱いものは軽躁状態)ですが、抑うつ状態の方が多くみられる場合もあります。激しい気分の変動を経験することがあります。

躁状態の症状が現れている時期には、睡眠障害が起こり、攻撃的になることがあります。非常に積極的な気分になったり、イライラすることがあります。早口で話すこともあります。様々な考えが次々と心に浮かぶこともあります。誇大妄想を抱くことがあります。例えば、自分には偉大な才能がある、あるいは重要な発見をしたなどと思い込みます。判断力が損なわれるため、青年の場合、見境のない性行為や無謀運転など、無責任な行動をとることがあります。より低年齢の小児は、劇的な気分の高揚を経験することがありますが、そうした気分はわずかの間しか持続しないのが一般的です。学業成績は悪化しがちです。

抑うつ状態の症状が現れている時期には、双極性障害の小児も、うつ病の小児と同様、過剰に悲しがり、日常的な活動への興味を失います。思考や動作が緩慢になり、通常より睡眠時間が長くなることもあります。小児は強烈な絶望感や罪悪感を抱えることがあります。

双極性障害の小児は、多動の状態が続く注意欠如・多動症の小児とは異なり、それぞれの症状が現れている時期以外は正常に見えます。

多くの場合、症状は徐々に進行します。しかし、この病気を発症する前から、非常に気まぐれで扱いづらい子どもである場合が典型的です。

診断

  • 症状

  • 他の原因を調べる検査

双極性障害の診断は、典型的な症状を説明した小児と親の話に基づいて下されます。医師は、重いストレスなど症状の引き金になる要因がないかを確認しようとします。

双極性障害を他の病気と鑑別することが重要です。例えば、双極性障害(躁状態の場合)と注意欠如・多動症(ADHD)はどちらも小児を非常に活動的にしますが、ADHDのほとんどの小児では、双極性障害の小児と違って激しい気分変動はみられないため、医師は通常この2つの病気を見分けることができます。

医師は、症状の一因とりなりうる何らかの薬剤を小児が服用しているか確かめます。また、症状の一因となりうる、あるいは症状を引き起こす他の病気の徴候も調べます。例えば、甲状腺機能亢進症の有無を調べる血液検査を行います。

治療

  • 第2世代抗精神病薬

  • 気分安定薬

  • ときに抗うつ薬

  • 精神療法(心理療法)

双極性障害では、躁病や興奮の症状に対して第2世代抗精神病薬や気分安定薬による治療を行います。

  • 第2世代抗精神病薬としては、アリピプラゾール、ルラシドン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンなどがあります。

  • 気分安定薬としては、リチウムと特定の抗てんかん薬(ジバルプロエックス[divalproex]、ラモトリギン、カルバマゼピン)があります。

抑うつ状態の治療には以下のものを使用します。

  • 第2世代抗精神病薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

  • リチウム

抗うつ薬は、単独で使用するのではなく、抗精神病薬またはリチウムと併用されます。

小児自身への精神療法や家族療法によって、双極性障害の小児と家族は病気によって生じる様々な影響に対処できるようになります。青年は服薬計画を守らない傾向がありますが、計画を守り続けやすくするのに精神療法が役立ちます。症状が軽度から中等度で、服薬計画に従っている青年であれば、通常は回復します。

双極性障害の青年では、再発のたびに予後(経過の見通し)が悪くなっていくため、徹底的な治療が非常に重要になります。再発リスクを高める要因として、若年での発症、症状の重症度、双極性障害の家族歴、治療を受けないこと、治療を遵守しないことなどがあります。

知っていますか?

  • 第2世代抗精神病薬は、双極性障害の小児および青年に対して選択するべき治療法です。

  • リチウムは、自殺念慮と自殺行動を減少させる可能性があります。

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