リンパ球性脈絡髄膜炎

執筆者:Thomas M. Yuill, PhD, University of Wisconsin-Madison
レビュー/改訂 2021年 8月
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リンパ球性脈絡髄膜炎は、通常はインフルエンザに似た症状を引き起こすウイルス感染症で、ときに発疹、関節痛、その他の部位の感染症を伴います。

  • 感染の多くは、感染したネズミやハムスターの尿、糞、その他の体液が混入したほこりを吸い込んだり、食べものを食べたりすることで発生します。

  • リンパ球性脈絡髄膜炎患者の大半は無症状で経過するか、軽い症状しかみられませんが、一部の人ではインフルエンザに似た症状が現れ、少数の人では髄膜炎や脳の感染症が起きます。

  • リンパ球性脈絡髄膜炎を診断するために、医師は腰椎穿刺と血液検査を行ってウイルスの有無を確認します。

  • 治療の目的は症状の緩和ですが、髄膜炎または脳の感染症がある場合は入院し、抗ウイルス薬を投与されることがあります。

リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスは、アレナウイルスによって引き起こされ、げっ歯類によって広まります。通常、感染したハムスターや灰色のハツカネズミの尿、糞、その他の体液が混入したほこりを吸い込んだり、食べものを食べたりすることで感染します。リンパ球性脈絡髄膜炎がネズミよって広がる場合、主に秋と冬に成人に発生します。

リンパ球性脈絡髄膜炎の症状

リンパ球性脈絡髄膜炎患者の大半は、無症状で経過するか、軽い症状しかみられません。

症状は、もし現れるとすれば、感染から約1~2週間後に現れます。

なかには、インフルエンザに似た症状を呈する場合もあり、その場合は発熱、悪寒、全身のだるさ(けん怠感)、脱力感、筋肉痛(特に腰)、眼の後方の痛みなどがみられます。光に敏感になり、食欲を失い、吐き気またはふらつきを覚えることもあります。のどの痛みはそれほどみられません。

5日から3週間後、通常は1日~2日の間、改善がみられます。その後、多くの患者が悪化します。発熱と頭痛がぶり返し、発疹も現れることがあります。指や手の関節が腫れることがあります。感染は唾液腺と精巣に広がることがあります(前者の場合はムンプス[おたふくかぜ]になります)。

少数の患者では、脳と脊髄を覆う組織(髄膜)に感染し、髄膜炎と呼ばれる状態になります。髄膜炎では典型的に、項部硬直(あごを胸につけられない、またはつけるのが難しくなる症状)が生じます。ごく少数の患者では脳の感染症(脳炎)が発生し、それにより麻痺や運動障害といった脳機能障害の症状が現れる場合があります。

妊婦が感染すると、胎児に水頭症(脳または髄膜への過剰な体液の貯留)、脈絡網膜炎(眼の感染症)、知的障害などの問題が生じることがあります。脈絡網膜炎は、かすみ目、眼の痛み、光に対する過敏性、失明の原因となります。妊婦が第1トリメスター【訳注:日本でいう妊娠初期にほぼ相当】に感染した場合、胎児は死亡する可能性があります。

リンパ球性脈絡髄膜炎の診断

  • 腰椎穿刺

  • 血液検査と培養検査

リンパ球性脈絡髄膜炎は、典型的な症状(特に髄膜炎または脳の感染症を示唆する症状)があり、げっ歯類との接触があった人で疑われます。

髄膜炎の症状がみられる場合、腰椎穿刺を行って、分析用に髄液のサンプルを採取します。(髄液とは、脳と脊髄を覆う組織の間を流れる体液です。)髄液のサンプルは、検査室に送られて検査されます。例えば、サンプル中のウイルスを増殖させて種類を特定する検査(培養検査)が行われます。あるいは、ウイルスの遺伝物質のコピーを多数作り出すために、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法が用いられることもあります。この方法を用いると、ウイルスを迅速かつ正確に特定できます。

医師はまた、ウイルスに対する抗体を調べる血液検査も行います。(抗体とは、リンパ球性脈絡髄膜炎の原因ウイルスなど、特定の異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパク質です。)

リンパ球性脈絡髄膜炎の予防

げっ歯類の尿や糞との接触を防ぐことは、感染予防に有用です。以下の対策が役立ちます。

  • 掃除をする前に、ネズミがいた閉鎖空間を換気する

  • 掃き掃除や拭き掃除をする前に、掃除する面を漂白剤で拭く

  • ほこりを飛散させないようにする

  • げっ歯類が家に入り込みそうな隙間をふさぐ

  • 食べものはげっ歯類が入ることができない容器に入れる

  • 家の周りで巣が作られそうな場所を排除する

リンパ球性脈絡髄膜炎の治療

  • 支持療法

  • ときにリバビリン

リンパ球性脈絡髄膜炎の治療では、症状の緩和と、生命機能の維持に重点が置かれます。必要な対策は、病気の重症度によって変わります。

髄膜炎または脳の感染症が起きた人は入院し、抗ウイルス薬のリバビリンを投与されることがあります。

ときに、コルチコステロイドが有用です。

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