新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは、COVID-19に対する予防効果をもたらします。COVID-19は、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染によって引き起こされる病気です。現在、COVID-19に対する複数のワクチンが世界中で使用されています(COVID-19ワクチンの最新動向[COVID-19 Vaccine Tracker]を参照)。このトピックについては、米国で現在使用されているワクチンのみを扱っています。
COVID-19に対するmRNAワクチンとして、米国での使用が承認されているものが2つあります。
COVID-19ワクチンBNT162b2(mRNAワクチン)(ファイザー社・ビオンテック社製)
COVID-19ワクチンmRNA-1273(mRNAワクチン)(モデルナ社製)
COVID-19に対するアジュバント添加ワクチンとして、米国で使用できるものが1つあります。
COVID-19ワクチンNVX-CoV2373(サブユニットワクチン)(ノババックス社製)
COVID-19に対するアデノウイルスベクターワクチンとして、米国で使用できるものが1つあります。
COVID-19ワクチンAd26.COV2.S(アデノウイルスベクターワクチン)(ヤンセン/ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)
BNT162b2ワクチン(製品名はコミナティ)は、米国食品医薬品局(FDA)により、16歳以上の人への使用について承認されています。このワクチンについては、生後6カ月~15歳の小児を対象として、FDAの緊急使用許可も出されています。
mRNA-1273ワクチンは、18歳以上の人への使用が承認されています。このワクチンについては、生後6カ月~17歳の小児を対象として、緊急使用許可も出されています。
Ad26.COV2.Sワクチンは、他のCOVID-19ワクチンを利用できないか、他のCOVID-19ワクチンの接種を受けることができない、またはAd26.COV2.S以外のCOVID-19ワクチンの接種は受けたくないという理由でこのワクチンの接種を受けることにした18歳以上の人を対象として緊急使用許可が出されています。(FDAがヤンセン社製COVID-19ワクチンの使用を特定の個人に制限[FDA Limits Use of Janssen COVID-19 Vaccine to Certain Individuals]を参照のこと。)
NVX-CoV2373ワクチンには、12歳以上の人を対象とした緊急使用許可が出されています。
ワクチン接種は現時点でも、COVID-19の感染による重症化と死亡の予防において最も効果的な戦略です。米国での2021年秋の入院率は、ワクチン接種を受けていない人では、ワクチン接種を受けた人の8~10倍高いという結果でした。また、同じ時期において、ワクチン接種を受けていない人がCOVID-19により死亡する可能性は、ワクチン接種を受けた人と比べて20倍高くなっていました。
アデノウイルスベクターワクチンには、まれにみられるワクチン起因性血栓性血小板減少症と呼ばれる重篤な副反応との関係を示した研究があることから、ほとんどの状況で、アデノウイルスベクターワクチンよりもmRNAワクチンおよびアジュバント添加ワクチンが初回接種で優先して選択されます。(ヤンセン/ジョンソン・エンド・ジョンソン社製COVID-19ワクチンの概要と安全性[Johnson & Johnson’s Janssen COVID-19 Vaccine Overview and Safety]を参照のこと。)
詳細については、ワクチン提供者のためのファクトシート(ファイザー社・ビオンテック社[Pfizer-BioNTech]、モデルナ社[Moderna]、ヤンセン/ジョンソン・エンド・ジョンソン社[Janssen/Johnson & Johnson]、ノババックス社[Novavax])を参照してください。
(予防接種の概要も参照のこと。)
COVID-19ワクチンの接種
ファイザー社・ビオンテック社製のCOVID-19ワクチンBNT162b2(mRNAワクチン)は、5歳以上の場合、初回接種として3~8週間以上の間隔をあけて2回接種します。
BNT162b2ワクチン は、生後6カ月から4歳までの小児の場合、初回接種として3回接種します。2回目の接種は、最初の接種から少なくとも3〜8週間後に行います。3回目の接種は2価のBNT162b2ワクチンで、2回目のワクチン接種から少なくとも8週間後に接種します。
モデルナ社製のCOVID-19ワクチンmRNA-1273(mRNAワクチン)は、生後6カ月以上の人を対象とし、初回接種として4~8週間以上の間隔をあけて2回接種します。
ヤンセン/ジョンソン・エンド・ジョンソン社製の COVID-19ワクチンAd26.COV2.S(アデノウイルスベクター)は、他のCOVID-19ワクチンを利用できないかその接種を受けることができない、またはAd26.COV2.S以外のCOVID-19ワクチンの接種は受けたくないという理由でこのワクチンの接種を受けることにした18歳以上の人を対象とし、初回接種として1回接種します。
ノババックス社製のCOVID-19ワクチンNVX-CoV2373 (サブユニットワクチン) は、12歳以上の人を対象とし、初回接種として3〜8週間以上の間隔をあけて2回接種します。
初回接種および追加接種に関する追加のガイダンスはその人の年齢や免疫機能の低下(免疫不全)の有無に依存します。
中等度から重度の免疫不全患者に対する初回接種のガイダンス
免疫機能に中等度から重度の低下がみられる人には、初回接種の追加が勧められます。自分の病状について、また追加の初回接種を受けるのが適切かどうかについて、医療従事者に相談するべきです。(中等度から重度の免疫不全患者に対するCOVID-19ワクチンのガイダンス[Guidance for COVID-19 vaccination for people who are moderately or severely immunocompromised]を参照のこと。)
一連の初回接種が完了した後、感染予防効果は、時間の経過とともに低下することが示されています。感染、重症化、死亡に対する予防効果を最大限に高めるために、生後6カ月以上の人には追加接種を受けることが推奨されています。その年齢群に対して承認されている2価ワクチンのみを使用すべきです。追加接種は、一連の初回接種が完了してから2カ月後に行います。対象になっている人が推奨されている全ての初回接種と追加接種を受けた場合、その人は一連のワクチン接種を完了したとみなされます。
2価の改良型ワクチンによる追加接種
2022年、FDAはmRNAワクチンに関するEUAを改正し、2価のワクチンを1回の追加接種として使用することを許可しました(FDAファクトシート[FDA fact sheet]を参照)。「2価」とは、ワクチンがSARSコロナウイルス2(新型コロナウイルスの正式名称)の2つの成分に対して予防効果を示すことを意味します。1つは新型コロナウイルスの最初の株であり、もう1つはBA.4およびBA.5として知られる最近のオミクロン株の亜種を標的とするものです。2価ワクチンの導入以来、CDCは2価の改良型ワクチンのみを追加接種として使用することを許可しています。元の追加接種は1価であり、これは新型コロナウイルスの1つの成分のみを防御することを意味します。1価の追加接種用のmRNAワクチンはもはや入手できません。
免疫機能が低下していない人に対するCOVID-19ワクチン追加接種のガイダンス
免疫機能が低下していない人でCOVID-19に対するワクチン接種を完了した人は、年齢と完了した初回接種の内容に応じて、追加接種の対象になります(COVID-19ワクチンの追加接種[COVID-19 Vaccine Booster Shots]を参照)。
中等度から重度の免疫不全患者に対する COVID-19ワクチン追加接種のガイダンス
免疫機能に中等度から重度の低下がみられる人でCOVID-19に対するワクチン接種を完了した人は、年齢と完了した初回接種の内容に応じて、追加接種の対象になります(中等度から重度の免疫不全患者に対する COVID-19ワクチン[COVID-19 Vaccines for People Who Are Moderately or Severely Immunocompromised]を参照)。
COVID-19ワクチンの副反応
4つのCOVID-19ワクチンの副反応は似ています。
注射部位の痛み、腫れ、発赤
疲労
頭痛
筋肉や関節の痛み
発熱と悪寒
吐き気
リンパ節の腫れ
副反応は典型的には数日にわたって続きます。
重度のアレルギー反応が起こる可能性は、非常に低いです。起こる場合は、通常はワクチンを接種した後、数分から1時間以内にみられ、緊急の治療が必要となることがあります。もし呼吸困難が生じたら、本人または周りの人が救急サービス(米国では911番、日本では119番)に電話をして救急車を呼ぶか、一番近くの病院に行ってください。他のワクチンや注射剤に対して重度のアレルギー反応を起こしたことがある人は、アレルギー反応のリスクについて医師と話し合い、ワクチン接種後に経過観察を受けるべきです。
非常にまれですが、ヤンセン/ジョンソン・エンド・ジョンソン社製のワクチンを接種した後に、過剰な血液凝固(血栓症)と血小板数の減少(血小板減少症)が起きることがあります。この病態はワクチン起因性血栓性血小板減少症候群(vaccine-induced thrombosis with thrombocytopenia syndrome)と呼ばれ、血栓が脳や腹部の血管など、通常はあまりできない重要な部位に発生します。症状はワクチン接種から約1~2週間で現れます。この病態は18歳以上の男女で発生していますが、30~49歳の女性で可能性が高くなります。死亡する人もいます。(ヤンセン/ジョンソン・エンド・ジョンソン社製COVID-19ワクチンの概要と安全性[Johnson & Johnson’s Janssen COVID-19 Vaccine Overview and Safety]も参照のこと。)
ファイザー社・ビオンテック社製、モデルナ社製、そしてノババックス社製のワクチンでは、心筋炎と心膜炎という心臓の異常が複数回の接種後、特に2回目の接種から7日以内に報告されており、これらの異常のリスクがワクチン接種後に高まる可能性が示唆されています。そのリスクは若い男性で最も高くなっています。ワクチン接種者は、接種を受けた後に胸痛や息切れが起きたり、心臓が速く鼓動したり、ふるえたり、強く脈打ったりするのを感じたりした場合、直ちに医師の診察を受ける必要があります。
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、ワクチンに対する一時的な反応によってマンモグラフィー画像の読影に誤りが生じる可能性があるため、マンモグラフィーを受ける予定がある女性で、最近COVID-19ワクチンを接種した人は、ワクチン接種後にマンモグラフィーを受けるのをどのくらい待つべきか、医師に尋ねるよう推奨しています。一部の専門家は、ワクチン接種前にマンモグラフィーを受けておくか、ワクチン接種後4~6週間待ってから受けることを推奨しています。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
COVID-19ワクチンの最新動向(COVID-19 Vaccine Tracker)
米国食品医薬品局(FDA):ファイザー社・ビオンテック社製ワクチンに関するファクトシート( Fact sheets for Pfizer-BioNTech)
FDA:モデルナ社製ワクチンに関するファクトシート(Fact sheets for Moderna)
FDA:ヤンセン社製ワクチンに関するファクトシート(Fact sheets for Janssen)
FDA:ノババックス社製ワクチンに関するファクトシート(Fact sheets for Novavax)
FDA:コロナウイルス(COVID-19)に関する最新情報:FDAがヤンセン社製COVID-19ワクチンの特定の個人に対する使用を制限(Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Limits Use of Janssen COVID-19 Vaccine to Certain Individuals)
FDA:コロナウイルス(COVID-19)に関する最新情報:FDAがモデルナ社製、ファイザー社・ビオンテック社製の2価ワクチンを追加接種として使用することを許可(Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Authorizes Moderna, Pfizer-BioNTech Bivalent COVID-19 Vaccines for Use as a Booster Dose)
米国疾病予防管理センター(CDC):COVID-19に対するワクチン(Vaccines for COVID-19)
CDC:ヤンセン/ジョンソン・エンド・ジョンソン社製COVID-19ワクチンの概要と安全性(Johnson & Johnson’s Janssen COVID-19 Vaccine Overview and Safety)
CDC:中等度から重度の免疫不全患者に対するCOVID-19ワクチンのガイダンス[Guidance for COVID-19 vaccination for people who are moderately or severely immunocompromised]
CDC:COVID-19ワクチンの追加接種(COVID-19 Vaccine Booster Shots)
COVID-19ワクチンの接種とその他の医学的処置:マンモグラフィー(COVID-19 vaccination and other medical procedures: Mammograms):COVID-19ワクチン接種前後のルーチンのマンモグラフィーに関するガイダンス