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リンパ球性脈絡髄膜炎

執筆者:Stefania Carmona, MD, University of Alabama at Birmingham
Reviewed ByChristina A. Muzny, MD, MSPH, Division of Infectious Diseases, University of Alabama at Birmingham
レビュー/改訂 修正済み 2025年 8月
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リンパ球性脈絡髄膜炎は、通常はインフルエンザに似た症状を引き起こすウイルス感染症で、ときに発疹、関節痛、その他の部位の感染症を伴います。

  • 感染の多くは、感染したネズミやハムスターの排泄物、その他の体液が混入したほこりを吸い込んだり、食べものを摂取したりすることで発生します。

  • リンパ球性脈絡髄膜炎患者の大半は無症状で経過するか、軽い症状しかみられませんが、一部の人ではインフルエンザに似た症状が現れ、少数の人に髄膜炎や脳の感染症が起きます。

  • リンパ球性脈絡髄膜炎を診断するために、医師は腰椎穿刺と血液検査を行ってウイルスの有無を確認します。

  • 治療の目的は症状の緩和ですが、髄膜炎または脳の感染症がある場合は入院し、抗ウイルス薬を投与されることがあります。

リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスは、アレナウイルスを原因として、げっ歯類によって拡散されます。通常、感染したハムスターやハツカネズミの排泄物、その他の体液が混入したほこりを吸い込んだり、食べものを摂取したりすることで人に感染します。リンパ球性脈絡髄膜炎がマウスによって伝播されると、感染は秋から冬にかけて主に成人に発生します。

リンパ球性脈絡髄膜炎の症状

リンパ球性脈絡髄膜炎患者の大半は、無症状で経過するか、軽い症状しかみられません。

症状は、もし現れるとすれば、感染から約1~2週間後に現れます。

発熱、悪寒、全身症状(けん怠感)、筋力低下、筋肉痛(特に腰)、目の奥の痛みなどのインフルエンザに似た症状を発症する人もいます。光に過敏になったり、食欲がなくなったり、吐き気やふらつきを感じたりすることがあります。のどの痛み、せき、精巣の痛み、胸の痛み、唾液腺の痛みが起こることがあります。

5日から3週間後、通常は1~2日間症状が改善しますが、その後、その多くが悪化します。発熱と頭痛が再発し、発疹が現れることもあります。また、指や手の関節が腫れたり、唾液腺や精巣に感染が広がったりすることもあります。

少数ですが、脳と脊髄を覆う組織(髄膜)に感染が広がることがあります(髄膜炎と呼ばれます)。リンパ球性脈絡髄膜炎の典型的症状として、首がこわばり、あごを胸につけるのが難しくなります(項部硬直といいます)。まれに脳の感染症(脳炎)が起こり、麻痺、運動障害、その他の脳機能障害の症状が現れることがあります。

妊婦が感染すると、胎児に水頭症(脳や髄膜内に過剰な水分が溜まる)、脈絡網膜炎(眼の感染症)、知的障害などの問題が生じることがあります。脈絡網膜炎は、かすみ目、眼の痛み、光に対する過敏性、失明をもたらすことがあります。妊娠第1期に妊婦が感染すると、胎児が死亡することがあります。

リンパ球性脈絡髄膜炎の診断

  • 腰椎穿刺

  • 血液検査と培養検査

典型的な症状(特に髄膜炎または脳の感染症を示唆する症状)があり、げっ歯類との接触があった場合に、リンパ球性脈絡髄膜炎が疑われます。

髄膜炎の症状があれば、脳脊髄液(脳脊髄液とは、脳と脊髄を覆う組織を流れる液体)のサンプルを採取するために脊椎穿刺(腰椎穿刺)を実施します。脳脊髄液のサンプルは検査機関に送られます。例えば、ウイルスが存在する場合は、特定するために十分な数に増えるまで増殖(培養)することができます。また、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を使ってウイルスの遺伝物質のコピーを大量に作り出す場合もあります。この方法を使うと、ウイルスを迅速かつ正確に特定できます。

医師は血液検査も行ってウイルスに対する抗体の有無も調べます。(抗体とは、リンパ球性脈絡髄膜炎の原因となるウイルスのような特定の異物からの攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパク質のことです。)

リンパ球性脈絡髄膜炎の治療

  • 支持療法

  • ときにリバビリンの投与

リンパ球性脈絡髄膜炎の治療では、症状の緩和と、生命機能の維持に重点が置かれます。必要な対策は、病気の重症度によって異なります。

髄膜炎または脳の感染症を発症した場合は入院後、抗ウイルス薬のリバビリンを投与されることがあります。

ステロイド薬(ときにグルココルチコイドまたはコルチコステロイドと呼ばれる)が効果を発揮することがあります。

リンパ球性脈絡髄膜炎の予防

げっ歯類の排泄物との接触を防ぐことが、感染予防につながります。以下は感染予防に役立つ対策です。

  • 掃除をする前に、ネズミがいたと思われる閉鎖空間を換気する

  • はき掃除やふき掃除をする前に、掃除する面を10%の漂白剤溶液で拭く

  • ほこりを飛散させないようにする

  • げっ歯類が家に入り込みそうな隙間をふさぐ

  • 食べものはげっ歯類が入ることができない容器に入れる

  • 家の周囲から巣が作られそうな場所を排除する

さらなる情報

以下の英語の資料が役立つかもしれません。この情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

  1. 米国疾病予防管理センター:げっ歯類出没後の清掃方法(How to clean up after rodents) 2024年4月8日。

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