ハンタウイルス感染症は、げっ歯類からヒトに感染するウイルス性疾患です。肺(せきと息切れ)や腎臓(腹痛、場合により腎不全)に重い感染症を起こすことがあります。
ハンタウイルスは感染したげっ歯類やその糞に触れることで感染します。
感染はまず突然の発熱、頭痛、筋肉痛、ときに腹部の症状で始まり、その後はせきと息切れや腎臓の異常がみられることもあります。
血液検査によりウイルスを確認することで診断が確定できます。
肺が侵されている場合は血圧を安定させる薬剤と酸素を投与し、腎臓が侵されている場合は透析が必要になることがあります。
(アルボウイルス、アレナウイルス、フィロウイルス感染症の基礎知識も参照。)
ハンタウイルスは世界中のさまざまなげっ歯類に感染します。ウイルスはげっ歯類の尿、糞、唾液中に存在します。人への感染は、げっ歯類やその糞に触れたり、げっ歯類の糞が大量にある場所でウイルスの粒子を吸い込んだりすることによって起こります。ほとんどのハンタウイルスは人から人へ伝播しません。まれですが,南米南部のアンデス・ハンタウイルスが濃厚接触者間で直接伝播します。ハンタウイルス感染症はより一般的になりつつあります。
数種のハンタウイルスが存在しています。その種によって、ウイルスは次のようにそれぞれ別の臓器を攻撃します。
肺では、ハンタウイルス肺症候群を引き起こします。
腎臓では、腎症候群(HFRS)を伴う出血熱を引き起こします。
しかし、この2つの感染症の症状は、その多くが共通しています。
肺症候群は、米国やカナダのほか、中南米の国々でも確認されています。
腎症候群は主にヨーロッパの一部地域、韓国、中国、ロシアでみられます。このウイルスは、ドブネズミによって広がり、船に忍び込んだネズミに運ばれて世界中に拡散しました。米国、カナダ、欧州では、ペットや実験用ラットによって拡散されたHFRSハンタウイルス感染症が数例発生しています。
ハンタウイルス感染症の症状
ハンタウイルスの症状は、げっ歯類の排泄物に触れてから通常約2週間後(最長6週間後の可能性あり)に、まず突然の発熱、頭痛、筋肉痛で始まります。腹痛、下痢、嘔吐が起こることもあります。
これらの症状は数日間続きます。
ハンタウイルス肺症候群
肺症候群を発症した患者では、その後せきと息切れが生じ、数時間以内に重症化する場合があります。肺周りに液体が溜まり、血圧が低下します。
肺症候群の死亡率は最大で50%です。最初の数日間を生き延びた人は急速に改善し、約2~3週間で完全に回復します。
腎症候性出血熱
ハンタウイルス感染症の診断
ウイルスを特定する血液検査
ハンタウイルスに曝露した可能性があり、特徴的な症状がみられる場合には、ハンタウイルス感染症が疑われます。
血液検査によりウイルスを確認することで診断が確定できます。
腎臓や他の臓器の機能を評価するために、他の血液検査も行われます。肺症候群が疑われる場合は、胸部X線検査が行われます。心エコー検査(心臓の超音波検査)は通常、肺周囲の体液貯留の原因となる他の心臓疾患を除外するために行われます。
ハンタウイルス感染症の治療
