低カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が非常に低い状態をいいます。
カルシウム濃度の低下は、副甲状腺の問題や、食事、腎疾患、特定の薬剤などが原因で発生します。
低カルシウム血症が進行すると、強い痛みを伴う筋肉のけいれんがよくみられ、そのほかに錯乱、抑うつ、忘れっぽくなる、唇や指や足のピリピリ感、筋肉のこわばりと疼きなどの症状が現れることもあります。
通常は一般的な血液検査で発見されます。
低カルシウム血症の治療には、カルシウムとビタミンDのサプリメントが使用されます。
(電解質の概要、体内でのカルシウムの役割の概要も参照のこと。)
カルシウムは体内に存在する電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びるミネラルです(しかし体内のほとんどのカルシウムは電荷を帯びていません)。体内のカルシウムは、ほとんどが骨に蓄えられていますが、一部は血液中に含まれます。血液中のカルシウムの約40%は、血液中で主にアルブミンというタンパク質に結合しています。タンパク質と結合したカルシウムは細胞用の保存源であり、体内で作用を発揮することはありません。結合していないカルシウムだけが体の機能に影響を及ぼします。したがって、低カルシウム血症の症状は、タンパク質に結合していないカルシウムの濃度が低下したときにのみ現れます。非結合型のカルシウムは電荷を帯びている(イオンである)ため、カルシウムイオンとも呼ばれます。
低カルシウム血症の原因
低カルシウム血症は、尿中に過量のカルシウムが排出された場合や、骨から血液中に流入するカルシウムの量が不十分な場合に発生するのが最も一般的です。低カルシウム血症の原因には以下のものがあります。
副甲状腺ホルモン濃度の低下(副甲状腺機能低下症)(甲状腺の手術中に副甲状腺が損傷した場合などに起こる)
副甲状腺ホルモンの値は正常であるにもかかわらず、このホルモンへの反応が欠如している(偽性副甲状腺機能低下症)
先天性の副甲状腺の欠損(例えば、ディジョージ症候群において)
マグネシウム濃度の低下(低マグネシウム血症)による、副甲状腺ホルモンの働きの低下
ビタミンD欠乏症(摂取が不十分であるか、日光を浴びる量が少ないことによる)
腎機能障害により、尿中へのカルシウム排出量が増加し、さらにビタミンDを活性化する腎臓の機能が低下する
カルシウムの摂取不足
カルシウム吸収を低下させる病気
リファンピシン(抗菌薬)、抗てんかん薬(フェニトインやフェノバルビタールなど)、ビスホスホネート(アレンドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸、ゾレドロン酸)、カルシトニン、クロロキン、コルチコステロイド、プリカマイシン(plicamycin)などの薬剤
低カルシウム血症の症状
低カルシウム血症の診断
血液中のカルシウム濃度の測定
低カルシウム血症は、症状が顕在化する前に通常の血液検査で見つかることがよくあります。血液中の総カルシウム濃度(アルブミンに結合しているカルシウムを含む)とアルブミン濃度を測定し、結合していないカルシウムの濃度が低下しているかどうかを判定します。
血液検査によって、腎機能の評価と、マグネシウム、リン、副甲状腺ホルモン、ビタミンDの各濃度の測定が行われます。原因を特定するために、血中の他の物質を測定することもあります。
低カルシウム血症の治療
カルシウムのサプリメント
ときにビタミンD
たいていの場合、低カルシウム血症は経口のカルシウムサプリメントだけで治療できます。原因を特定して、低カルシウム血症を引き起こしている病気を治療するか薬剤を変更すれば、カルシウム濃度は元に戻ります。
症状が出ている場合には、カルシウムの静脈内投与が必要です。ビタミンDサプリメントは、消化管からのカルシウム吸収を増やすのに役立ちます。
副甲状腺機能低下症の人には、ときに合成副甲状腺ホルモンが投与されます。