反社会性パーソナリティ障害

執筆者:Mark Zimmerman, MD, South County Psychiatry
レビュー/改訂 2021年 5月
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やさしくわかる病気事典

反社会性パーソナリティ障害は、結果や他者の権利を軽視する広汎なパターンを特徴とします。

  • 反社会性パーソナリティ障害の患者は、自分や他者がどうなるかを考えることなく、また良心の呵責(かしゃく)や罪悪感を覚えることなく、自分の望むことを追い求めます。

  • 反社会性パーソナリティ障害の診断は、結果や他者の権利の軽視、自分が望むことを手に入れるためにうそをついたり、操作したりすることなどの症状に基づいて下されます。

  • 反社会性パーソナリティ障害は治療が困難ですが、認知行動療法、メンタライゼーションに基づく治療、および特定の薬が攻撃性と衝動的行動を軽減するのに役立つことがあります。

パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。

反社会性パーソナリティ障害の患者は、自分の利益や快楽のために法を犯したり、詐欺を働いたり、搾取的に振る舞ったり、無謀な行動をとったりし、良心の呵責を感じないことがあります。以下の場合があります。

  • 自分の行動を正当化または合理化する(例えば、「敗者は負けるべくして負ける」と考えることがある)

  • 被害者を馬鹿だったまたは無力だったと責める

  • 自分の行動が他者に及ぼす搾取的で有害な影響に無頓着である

  • 他者の権利や感情、法律を平気で軽視する

反社会性パーソナリティ障害の有病率の推定値は、米国の一般集団で0.2%(500人に1人)~3%超のばらつきがみられます。この病気は男性に6倍多くみられます。この病気は高齢者層では少なく、患者が時間の経過とともに自分の行動を変化させることを学べることを示唆しています。

他の病気もしばしばみられます。このような病気には以下のものがあります。

反社会性パーソナリティ障害の大半の患者には物質使用障害もみられます。

反社会性パーソナリティ障害の原因

反社会性パーソナリティ障害の発症には、遺伝子や環境因子(小児期の逆境など)が関わっています。

反社会性パーソナリティ障害は、一般の人よりもこの障害の患者の第1度近親者(両親、兄弟姉妹、子ども)に多くみられます。この障害を発症するリスクは、この障害をもつ親の養子と実子の両方で増加します。

子どもが10歳までに素行症注意欠如・多動症を発症した場合、成人後に反社会性パーソナリティ障害を発症する可能性が高くなります。素行症(行為障害とも呼ばれます)は、他者の基本的な権利を侵害する行動や年齢相応の社会規範に違反する行動を繰り返し起こす病気です。素行症が反社会性パーソナリティ障害へと進む可能性は、親が子どもを虐待したり、ネグレクトしたりする場合、またはしつけや子育てに一貫性がない場合(例えば、温かく支持的なものから、冷たく批判的なものへ変わるなど)は高くなることがあります。

幼児期に他者の痛みを無視することが、青年期後期の反社会的行動と関連があるとされています。

反社会性パーソナリティ障害の症状

他者の軽視

反社会性パーソナリティ障害の患者は、ものを壊したり、他者に嫌がらせをしたり、盗みを働いたりすることで他者や法律の軽視を示すことがあります。患者は自分の欲しいもの(金、権力、セックス、個人的な満足感など)を手に入れるために、人を欺き、利用し、言いくるめ、操作することがあります。目的を遂げるために偽名を使うことがあります。

この障害の患者は、自分のやったことに対して自責の念や罪悪感を抱かないことがしばしばあります。患者は自分が傷つけた相手や(例えば、傷つけられて当然と考える)世の中のあり方(例えば、世の中は不公平なものと考える)を責めることで自分の行動を合理化することがあります。また、人のいいなりになるまいとし、いかなる犠牲を払っても自分にとって最善と考えることをしようとしますが、このような態度は他者に対する全般的な不信から生じている場合があります。

反社会性パーソナリティ障害の患者は、他者に共感することがなく、他者の感情、権利、苦しみを馬鹿にしたり、それらに無頓着であったりすることがあります。

衝動的行動(衝動性)

反社会性パーソナリティ障害の患者は一般に衝動的です。彼らは前もって計画を立てたり、自分や他者に対する行動の結果を考えたりすることがなかなかできません。その結果、以下のことを行うことがあります。

  • 突然引っ越したり、人間関係を変えたり、転職の計画もなく仕事を辞めたりする

  • 運転中にスピードを出したり、酔った状態で運転したりして、ときに事故につながることがある

  • アルコールを飲み過ぎたり、有害作用が生じる可能性のある違法薬物を使用したりする

  • 犯罪を行う

反社会性パーソナリティ障害の患者は衝動をコントロールすることが難しく、自分の行為によって他者がどうなるかを適切に認識できないため、しばしばすぐに怒り、身体的攻撃性を示します。

また、一般の人と比べて余命が短い傾向があります。

無責任性

反社会性パーソナリティ障害の患者は、しばしば社会的、金銭的に無責任です。その結果、以下のことを行うことがあります。

  • 機会があっても職を求めない

  • 請求書の支払いをしなかったり、ローン返済を怠ったりする

  • 子どもの養育費を支払わない

その他の症状

患者はときに自己評価が高く、非常に独断的であったり、自信家であったり、傲慢であったりします。望むものを手に入れるために、感じよく、口がうまく、説得力があるように振る舞うことがあります。

反社会性パーソナリティ障害の診断

  • 具体的な診断基準に基づく医師による評価

パーソナリティ障害の診断は、通常は米国精神医学会が発行している精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版(DSM-5)に基づいて下されます。

反社会性パーソナリティ障害の診断を下すには、患者は以下の3つ以上により示されるように、他者の権利を軽視し続けている必要があります。

  • 逮捕の対象となる行為を繰り返し行うことに示されるように、法律を軽視する。

  • 繰り返し嘘をついたり、偽名を使ったり、個人的利益や快楽のために他者を言いくるめたりすることに示されるように、詐欺的である。

  • 衝動的に行動し、前もって計画を立てない。

  • 繰り返し体を使った喧嘩を始めたり、他者を攻撃したりすることにより示されるように、怒りやすかったり、攻撃的であったりする。

  • 自分や他者の安全を向こう見ずに軽視する。

  • 別の仕事のあてもなく仕事を辞めたり、請求書の支払いをしなかったりすることに示されるように、一貫して無責任な行動をとる。

  • 他者を傷つけたり虐待したりすることに対し無頓着であったり、そのような行為を合理化したりすることに示されるように、後悔の念が欠如している。

反社会性パーソナリティ障害は18歳以上の人でのみ診断されます。

反社会性パーソナリティ障害の治療

  • 一部の症状に対しては、認知行動療法やメンタライゼーションに基づく治療、特定の薬

反社会性パーソナリティ障害は、治療が非常に難しく特定の治療法によって長期的な改善が得られるという証拠は存在しません。このため、医師は法的責任を避けるなどのより短期的な目標に焦点を置きます。しかし、素行症の子どもをできるだけ早く見つけて治療することが、反社会性パーソナリティ障害が原因で生じる社会的問題を減らすのに役立つ可能性があります。

攻撃性や衝動性が問題である場合は、以下のいずれかの治療が有益なことがあります。

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