致死性不眠症は、まれなプリオン病の一種で、睡眠を妨げ、精神機能の悪化と協調運動障害をもたらします。この病気になると、数カ月から数年で死に至ります。
(プリオン病の概要も参照のこと。)
致死性不眠症は次の2種類に分けられます。
家族性:この病型は、致死性家族性不眠症と呼ばれ、遺伝します。細胞性プリオンタンパク質(PrPC)と呼ばれる正常なタンパク質をコードする遺伝子の特定の変異に起因します。
孤発性:この病型は、遺伝子の変異を伴わず自然発生的に生じます。
致死性家族性不眠症と孤発性致死性不眠症では、その他のプリオン病と異なり、主に脳の一領域(視床)だけが優位に侵され、それによって睡眠が妨げられます。
致死性家族性不眠症では、20歳代後半から70歳代前半までにかけて(平均40歳代)症状が発生します。通常は症状が始まってから7~73カ月で死に至ります。孤発性致死性不眠症では発症時期がわずかに遅く、余命もわずかに長くなります。
致死性不眠症の症状
家族性では、初期の症状として、軽い入眠困難と睡眠継続困難、散発的に起こる筋肉のひきつり、れん縮、こわばりなどがみられます。睡眠中は、よく動いたり蹴ったりします。最終的にはまったく眠れなくなります。後に、精神機能が悪化し、協調運動障害(運動失調)が起こります。心拍が速くなり、血圧が上昇し、おびただしい汗をかくようになることがあります。
孤発性では、初期の症状として、精神機能の急速な低下と協調運動障害がみられます。散発性の人からは、睡眠障害の報告がない可能性がありますが、睡眠の検査を行うと異常が見つかることがあります。
致死性不眠症の診断
致死性不眠症の治療
患者の支援
有効な治療法はありません。
症状を緩和し、できる限り不快感を取り除くことが致死性不眠症の治療の目標になります。眠気を催す対策が試されますが、効果は一時的です。