運動プログラムを始める

執筆者:Brian D. Johnston, Exercise Specialist, International Association of Resistance Training
レビュー/改訂 2021年 8月
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競技スポーツや運動プログラムを始めるときには、その前に医師に相談した方がよいでしょう。医師は、本人や家族の病気、そして本人の症状について質問を行います。次いで、聴診器で心音を聞くなどの身体診察を行います。これらの評価で、それまで心疾患の疑いがなかった人が、激しい運動で深刻な不整脈や予期せぬ突然死を起こしかねない心疾患を抱えていないかどうかを調べます。また、運動を制限しなければならない健康状態がみつかる場合もあります。例えば過体重であれば、急に動いたり止まったりするスポーツ(テニスやバスケットボールなど、急激な関節の動きを伴う運動)や、脚に衝撃が加わるスポーツ(ジョギングなど)をすると、筋骨格系の損傷を起こしがちです。医師が導入のための安全な運動を推奨し、安全にけがなく取り組むための注意事項を示すこともあります。

40歳以上で運動プログラムを始める人は、心疾患や関節炎の診断があれば報告し、胸痛、息切れ、歩行時の足の痛み、動悸(心臓の拍動が自覚されること)、不整脈、関節痛やむくみ、長時間の運動ができないなどの症状があれば伝えます。50歳未満で心臓の問題により急死した人が身近な親族にいる場合も、注意が必要です。運動の強度を徐々に上げていくように計画すれば、運動開始前の運動負荷試験はほとんどの人にとって不要ですし、心電図も多くの人には必要ありません。

薬の中には運動能力を低下させるものがあります。例えばベータ遮断薬は心拍数を減少させます。鎮静薬は眠気を誘い、意識レベルや筋肉コントロールの低下を引き起こすため、転倒やけがのリスクを増大させます。ほかにも、運動を安全に行うための身体能力や、運動が推奨されるかどうかの判断に影響を及ぼす薬剤があります。そのため、使用している処方薬、栄養補助食品、市販薬について、安全上の問題が潜んでいないか主治医に確認する必要があります。

一般に、健康な小児は安全に運動することができます。運動時に通常より激しい疲労や息切れ、ふらつきなどの問題がみられる小児は、それらの症状が基礎にある医学的問題の徴候かもしれないため、医師の診察を受ける必要があります。そうした症状がみられなければ、健康な小児には運動させるようにするとよいでしょう。ただし、病気のときは控えてください。例えば、発熱があると運動能力が損なわれるだけでなく、重篤な病気の徴候である場合もあり、熱中症のような暑さからくる病気につながることもあります。また、脱水症につながる症状(嘔吐、下痢など)があると、運動時の発汗が脱水症を悪化させる可能性があるため、運動のリスクが高まります。心臓の問題(心不全心筋炎などの病態)を抱えている小児は、運動中に突然死を起こすリスクが高い場合があるため、運動を始める前にかかりつけ医の助言を受け、それに従う必要があります。ただし、小児の場合、運動は活発な遊び、スポーツ、および柔軟運動に限定すべきです。重いウェイトを使用して強烈な力をかけると、骨の成長板が傷ついて、正常な成長が損なわれる可能性があるため、小児は思春期を過ぎるまで激しいウェイトトレーニングは避けるべきです。

ほとんどの成人は、急性または慢性の身体疾患がある人でも、何らかの形で運動の利益を享受することができます。推奨される運動や制約は個々人の状況によって異なりますが、一般的には次のような点が挙げられます。

  • 狭心症の患者や最近心臓発作を起こした人は、医師から運動に対する特定の制約が課される場合があります。

  • 嚢胞性線維症糖尿病の場合、脱水症になる可能性があるため、運動の前後に大量の水分を摂取する必要があり、特に高温または多湿の環境での運動には水分補給が大切です。

  • 脳しんとうを何回か起こしたことがある、または最近起こした人は、人と接触するスポーツを控える必要があります。

  • けいれん発作のある人は、けがを防止するために1人での水泳やウェイトリフティングは避けます。また他の人にけがをさせないよう、ライフル射撃やアーチェリーは行わないでください。

  • 伝染性単核球症などにより脾臓が腫大している場合は、負傷したときに脾臓が破裂するおそれがあるため、人と接触するスポーツは避けます。

運動の種類と同様に、強さのレベル(運動の激しさ)、その期間(持続時間)と頻度(回数)についても、医師は具体的な指示を出すことができます。場合によっては、運動は理学療法士などの医療従事者や、経験や資格のあるトレーナーの指導の下で行う必要があります。

運動プログラムを最も安全に始める方法は、選択した運動やスポーツを低い強度で行うことです。低い強度で始めると、適切な体の動かし方(ボディメカニクス)を習得する時間的な余裕ができ、トレーニングの強度を上げたときに、けがを予防するのに役立ちます。ひどい肉離れなどの予防にもつながります。脚や腕が痛み出したり、体が重くなってきたら運動をやめます。運動の数分後に筋肉が痛み出すようであれば、それ以上続けてはいけません。フィットネスが増すにつれ、筋肉に痛みを感じることなしに、より長時間運動できるようになります。ある程度の不快感は、特にウェイトトレーニング後の場合(例えば筋肉の圧痛が24~48時間続く)、より強くより大きな筋肉を発達させる過程の一部です。しかし、強い運動の苦しさと、けがや無理な運動に伴う痛みとは別物です(安全に運動をするを参照)。フィットネスの目標を達成するための運動量(強さや持続時間)は、必要に応じて徐々に増やしていくことができます。

運動プログラムを始めるための動機付け

これまで積極的に運動してこなかった人は、なかなか運動プログラムを開始できなかったり、始めても続けるのがさらに難しかったりするものです。

まずは基準となるフィットネスレベル、すなわち、現在の体重や1マイル(1.6キロメートル)を歩くのに要する時間、体の柔軟性、腕立て伏せの回数などを把握する必要があります(腕立て伏せができなくても、運動プログラムを始めることはできます)。こうした元のレベルを知っておくと、トレーナーとやりとりしやすくなります。

次に目標を設定する必要があります。楽に歩ける体力をつけるとか、遠くまで走れるようになるとか、その間くらいを目安に取り組むなどの目標を立てます。この目標によって、取り組むべき運動が異なります。

実際に取り組む運動を選択するときは、どのような形なら楽しめるかについても考慮します。エクササイズのクラスに入ると、メンバーから励まされたりやる気をもらえたりするため楽しいという人もいれば、うまくできないと格好が悪いから、クラスに参加するのは気が引けるという人もいます。1人でのトレーニングの方がやる気が出るという人や、トレーナーの個人指導を受けた方が専門家にしっかり見てもらえて好都合だと考える人もいるでしょう。

ジムに加入したり、自宅で使用する器具を購入したりする人もいます。ほとんど器具を必要としない運動も数多くありますが、運動によっては専用の靴や動きが制限されないウェアが必要になる場合があります。

飽きずに続けるために、いろいろな種類の運動に取り組むとよいでしょう。いろいろな種類の運動は、反復運動による軽いけがを避けるためにも役立ちます。

多くの人は、目標の達成度を確認することが、運動しようという意欲の維持につながると考えています。

スポーツへの参加に関するスクリーニング

大半の学校や組織化されたスポーツ協会は、プログラムに参加する前に、安全に参加できるかどうかについて医師の評価を受けることを参加者に求めています。医師は健康状態について質問し、上述のような検査を行います。評価の後に、別の検査が必要になることもあります。青年や若年成人はしばしば非合法薬や運動能力向上薬の使用について質問されます。(米国アンチ・ドーピング機構[US Anti-Doping Agency]のウェブサイトも参照のこと。)

女児や成人女性の場合、医師は初潮の開始の遅れや女性運動選手の三主徴(摂食障害、無月経などの月経障害、骨密度の低下)も調べます。非常に激しい身体運動や行き過ぎた体脂肪減少に取り組む青年期や若年の女性が増えるにつれ、三主徴も多くみられるようになっています。

運動の種類

運動は、有酸素運動(主に心拍と肺活量に注目する運動)と筋力トレーニング(筋肉の緊張とウェイトの持ち上げを重視し、ときにレジスタンストレーニングとも呼ばれる運動)に大きく分けられます。すべての運動には両方の要素があります。運動プログラムに次のようなフィットネスの複数の面が含まれていると、効果はより大きくなります。

  • 有酸素運動

  • 筋力(持久力と筋肉量など)

  • ストレッチと柔軟性

  • 平衡感覚

有酸素運動

有酸素運動は通常量以上の酸素を筋肉に届ける必要のある運動のことで、心臓と肺には必然的に通常よりも負荷がかかります。有酸素運動を含む活動には、ランニング、サイクリング、水泳、スケートや、有酸素運動マシン(トレッドミル、階段昇り、楕円運動のマシンなど)を使う運動があります。有酸素運動は多くのカロリーを消費し、心臓機能を改善し、心疾患が原因の死亡リスクをわずかに低下させます。しかし、筋力トレーニングに比べ、筋力強化と筋量増加にはあまり効果がありません。有酸素運動で(ランニング中やトレッドミルの使用中に)負荷をかけすぎると、関節や周辺の組織が過度に消耗し、変形性関節症につながることがあります。

心臓に有益な有酸素運動にするには、体が維持できる最大心拍数の60~85%程度に心拍を上げる必要があります。この最大心拍数は公式を用いて推定することができます。ただし、呼吸に問題が生じたときや規則的な呼吸をコントロールできなくなったときは、ひとまずそれ以上は運動強度を上げないようにしてください。

目標心拍数は推定値に過ぎません。過体重の人や運動能力が低下している人は、わずかな運動をするだけですぐに、目標心拍数に到達します。運動をしている人は、目標心拍数に達するのにさらに時間がかかります。このような目標心拍数は平均的なフィットネスを想定したものなので、体調のよい運動選手であれば、目標心拍数を超えてもかまいません。心拍数を抑える薬(ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬など)を摂取している場合は、強い運動をしても目標心拍数に達しないことがあります。このような人は、望ましい目標心拍数について、医師と相談する必要があります。

通常推奨される運動方法は、十分な強さの有酸素運動を週2~3回、それぞれ30分間行い、各運動の最初と最後に5分間のウォームアップと(徐々にピークの強さに上げていく)5分間のクールダウン(徐々に下げていく)の時間を取ることです。ただし、この30分という長さは1つの目安です。人によっては、自転車を用いたインターバルトレーニングで、1回に10~15分の運動を週2~3回行う程度でも、有酸素運動による最大限の恩恵を安全に受けることができます。

インターバルトレーニング(高強度インターバルトレーニング:HIITともいいます)では、中程度の有酸素運動と激しい運動を交互に行います。例えば、中程度の運動(最大心拍数の60~80%)を90秒ほど行い、ダッシュのような全力運動を(最大心拍数の85~95%、または正しい運動フォームを維持しながら運動を行える程度の激しさで)20~30秒ほど行うことを交互に繰り返します。激しい運動を行う際には、けがをしないよう、適切な体の動かし方を維持するようにします。有酸素運動は筋力トレーニングの合間に行うこともできます(例えば、筋力トレーニング運動間のわずかな休息時間など)。

異なる有酸素運動を行うと、別の筋肉群が鍛えられます。例えばランニングでは、下腿(膝から足首までの部分)の筋肉が主に鍛えられます。かかとが着地するときとつま先で蹴るときに、足首に最大の力がかかります。サイクリングでは、ペダルを踏むときに太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋[だいたいしとうきん])と大殿筋を使うため、主に太ももの筋肉が鍛えられます。ボートこぎや水泳では、上半身と背中の筋肉が特に鍛えられます。けがを防ぎ、異なる筋肉群を動かすために、これらの運動を日替りで行う方法もあります。

目標心拍数の推定

目標心拍数を推定するには、まず220からその人の年齢を引いて最大心拍数(最大酸素使用量に相当すると推定される心拍数)を計算します。次に、その最大心拍数に60~85%(または0.6と0.85)を掛けます。例えば40歳の場合、最大心拍数は180で、目標心拍数は108から153(180の60~85%)となります。

知っていますか?

  • 10~15分の自転車を用いたインターバルトレーニングを週に数回行えば、有酸素運動による大きな恩恵を得ることができます。

筋力トレーニング

筋力トレーニング(またはレジスタンストレーニング)とは、負荷に対して筋肉を強く収縮させるトレーニングのことで、フリーウェイトやウェイトマシンを使用するか、腕立て伏せや腹筋運動のように体の重みを利用して行います。筋力トレーニングプログラムの初期には、自分の体重ではなく弾力のあるバンドを使用することもあります。

やり方にもよりますが、筋力トレーニングは有酸素運動に比べ、心血管機能に対する有益性が若干劣ります。ただし、強い力を持続する筋力トレーニングは、心血管のフィットネスに対して有酸素運動と同じくらいの有益性をもつ可能性があります。筋力トレーニングの主な目標は、筋肉において以下を発達させることです。

  • 筋力

  • 大きさ

  • 持久力

  • 柔軟性

長期的には、筋肉が増えることによって体が引き締まり、体脂肪も減ります。これは筋肉が、たとえ休息中でも他の組織よりも多くのカロリー(とりわけ脂肪)を消費するためです。筋肉量が増えれば増えるほど将来的な機能的能力が増すことを意味するため、年をとっても自立性の維持に役立ちます。高齢者、特にフレイルの状態にある人(介護施設の一部の入所者など)は、筋肉量が増えることで、可動性の改善につながり、また体の回復に必要なタンパク質が体内に多く保持されることから、重病から回復しやすくなります(高齢者の運動を参照)。

損傷部位の周りの筋肉(例えば、膝が損傷した場合、太ももの筋肉)を強化することで痛みが軽減されます。このように、筋力トレーニングプログラムは、けがのリハビリテーションに役立つ可能性があります。こうしたアプローチは、リハビリテーション専門の理学療法士の指導の下で行う必要があります。

個々の運動は特定の筋肉または筋肉群を強化できるよう設計されています。通常はまず大きな筋肉群を鍛え、次に小さな筋肉群を鍛えます。一般的には脚から始め、背中の上部、胸部、肩、腕と進めていきます。最大の効果は高い作業負荷で運動することによって得られますが、動作が不正確になるまで行う必要はありません。動作が不正確とは、正確な方法で動きを反復できていない状態のことです。

通常、特定の運動を数セット単位で行います。各セットは8~12回の反復からなり、連続して行います(反復間の関節ロッキングを含めて、途中休憩はありません)。このときの負荷には、持ち上げたり、投げたり、落としたりせず、比較的ゆっくりとコントロールしながら8~12回反復できる最大のウェイトを使用します。最初のセットは高い強度で一定して筋肉を緊張させ、その後のセットは次第に負荷を減らしていきます。ほとんどの筋力トレーニング運動では通常、3セットが最大推奨セット数です。

筋緊張時間は、ウェイトを持ち上げた量と回数を単にカウントする以外に、推奨筋肉作業負荷(持ち上げる重量と筋肉の作業量)を決めるもう1つの方法です。筋緊張時間とは、1セットのなかでウェイトを上げ下げしている合計時間をいいます。筋緊張時間は、筋力よりも筋持久力を高めることが目標の場合(けがのリハビリテーションなど)よりも、中程度の運動で筋力強化を図る場合の方が短くなります。筋緊張時間は(反復回数よりもむしろ)、筋力、筋肉量の増加、または持久力のためのトレーニングのいずれにおいても推奨筋肉作業負荷のよりよい尺度となります。

筋力強化と筋肉量増大を進めるためには、推奨される筋緊張時間を正しい方法で達成した後、ウェイトを維持できる最大量まで増やすか、同じ筋緊張時間で再度挑戦します。推奨される筋緊張時間は、上半身では1セット当たり40~60秒ほど、下半身は上半身よりも持久力があるため、60~90秒ほどが理想です。目標が筋持久力の強化の場合、筋緊張時間は通常90~120秒です。重量挙げ選手のような筋力の大きさを競う運動選手は、10~30秒といったさらに短時間の筋緊張で負荷をかけるトレーニングを積極的に採用します。この方法では筋量の増加や持久力の向上はあまり望めませんが、一度により大きな負荷をかけることで、さらに筋力の強化を促すことができるからです。しかし、普通の人は重い負荷をかけると組織を痛めがちで、けがのリスクが高くなるため、控えるようにしてください。

運動の頻度は重要な要素です。大きな運動負荷をかけて、隔日以上の頻度で運動すると筋肉は壊れ始めます。十分な運動をした翌日には、筋線維に出血と微細な肉離れが生じており、高い確率で筋肉痛を起こします。この痛み(警告反応とも呼ばれます)が筋肉を刺激すると、筋肉は自力で修復を行い、より高い機能状態に適応するように自らを強化します。運動をしたら、約48時間は筋肉を休めて回復させます。非常に激しい運動をすると、筋肉群が完全に回復するまでに数日かかります。したがって通常の筋力トレーニングでは、運動のたびに鍛える筋肉群を変えるのが最善です。例えば、上半身の運動をした翌日は下半身という具合にし、個別の筋肉のトレーニングは週2回までとするのが理想的なスケジュールです。1つの筋肉に対し、より強く、より多くの運動をすればするほど、その筋肉を鍛える効果は少なくなります。したがって、非常に高い運動強度でトレーニングをする人は、同じ筋肉に対しては筋肉が適切に回復できるよう週1回までとするべきです。

けがのリハビリテーションでは、大きな筋肉を発達させることを最初は目指さないかもしれませんが、筋肉の機能と筋力の向上は痛みの軽減と強く相関しています。重量を少なくし、反復回数を増やして運動をすると、筋力や持久力が向上し、有酸素運動にもなるため(特にセットの間隔を60秒未満に抑えた場合)、損傷部位に血流が増え、治癒が促されます。こうしたアプローチは、過剰な重量と少なめの反復回数で筋肉を鍛える運動(これには高いモチベーションが必要です)よりも耐えやすいかもしれません。誤ったフォームで運動すると、けがを悪化させてしまうこともあるため、正しいフォームを保つ必要があります。リハビリテーション中の人は、不快感や痛みのために、あまり運動しなくなることがあります。また、なかには運動の経験に乏しい人や、自分がどのくらい運動ができるかを把握していない人もいます。けがをした人の自信と身体機能が回復してきたら(多くは痛みも軽減している段階)、最善の成果が得られるように、必要な努力や運動負荷を増やしていきます。

サーキットウェイトトレーニングでは、脚、腰、背中、胸の大きな筋肉の運動を先に行い、次に肩、腕、腹部、首の小さな筋肉の運動を行います。脚の運動は多くのエネルギーを必要とし、疲れるため、最後にすることを好む人もいます。ほんの15~20分のサーキットウェイトトレーニング(運動/セットの間隔を30秒以下で行うもの)で、同じ時間ジョギングや有酸素運動マシンで運動するよりも、心血管系に有益な結果が得られます。このトレーニングは強度が高いことが多いため、運動時の心拍数も高くなります。

安全に運動を行う方法は極めて重要です。ウェイトの挙げ下げは、急に始めたり止めたりすると、軽いけがをすることがあります。運動中は、適切なボディメカニクス(胸を高くし、肩を丸めずに後ろに引いて、腹部を引き締め、関節を固定しないようにする)に努めながら、滑らかで持続的な動きをするようにします。呼吸をコントロールすることで、力いっぱい息を吐いた時や力んだりしたときに起こるめまい(極端な場合は失神)を予防します。特にウェイトを持ち上げるときには息を吐き、下げるときには息を吸うようにします。5秒以上かけてウェイトを下ろす時など、ゆっくり行う動作の場合は、その間に何度か息をする必要があります。しかしこうした場合でも、ウェイトを持ち上げる直前に最後の息を吸い込み、持ち上げ始めるときにその息を吐くように調整します。

レジスタンストレーニングの間には血圧が上昇します。特に両手でものを強く握りながら脚の大きな筋肉を動かす(つまり、マシンのハンドルをつかんでレッグプレスを行う)ときには、血圧が上がります。しかし、運動をやめると血圧はすぐに正常値に戻ります。呼吸法が正しければ、どれほど運動がきつくても、こうした一時的な血圧の上昇は最小限で済みます。ウェイトリフティングを始める人は、ウェイトをセットする方法、シートの高さを調整する方法、適切な体の動かし方を維持する方法、運動中の呼吸法などについて、最初にインストラクターの指導を受けるとよいでしょう。専門のトレーナーに運動中の動きを見てもらうと、間違った体の使い方を見つけて直してもらえるため、たいていは非常に役に立ちます。

知っていますか?

  • 持続性のある強い強度のウェイトトレーニングは、有酸素運動と同等以上に心臓に有益です。

  • 筋力トレーニング時のウェイトをどれだけにするかを判断するには、筋緊張時間(1セットの持続時間)が一番よい目安です。

ストレッチと柔軟性

ストレッチによって筋肉と腱のこわばりが減少し、柔軟性が高まります。柔軟性は、日々の身体的な運動を快適に行うのに重要です。ストレッチ自体は筋肉を強化するわけではありませんが、筋肉が収縮する面積が広がり、より効果的に、けがのリスクがより少ない状態で力を発揮できるようになります。ストレッチは、高くジャンプし、重いウェイトを持ち上げ、速く走り、遠くに投げる動作に役立ちます。

柔軟性を目的とした運動では、筋肉群をゆっくりと着実に伸ばすため、物を持ち上げたり、飛び上がったり、過度の痛みを生じることはありません(現状の限界まで関節のストレッチをする場合、多少の痛みを感じることは正常ですが、強い痛みや耐えられない痛みが出るほど伸ばしてはいけません)。柔軟性を十分に得るには、各回のストレッチ動作を20~60秒にわたって維持します。60秒以上ストレッチし続けることもできますが、それにより柔軟性が向上することは証明されていません。ストレッチは2~3回繰り返し、できれば回を追う毎によく伸ばすようにします。ストレッチは他のトレーニングの前後に行いますが、ヨガやピラティスのセッションのように、それだけで1つのプログラムとして行うこともできます。

運動前のストレッチは心の準備に役立ちますが、ストレッチをすることでけがのリスクが低下するという証拠はありません。全身のウォーミングアップ(例えば、これから始める運動を軽めに行うとか、その場でのジョギングや柔軟体操など、深部体温を上昇させる軽い運動)は、運動の安全性を高めて、体がしなやかで軽く感じられるようにするという点でストレッチよりも効果があるようです。体の組織は温まると、より効果的に伸びるため、運動後にストレッチを行うことが望ましいでしょう。ストレッチは運動中に行うこともできますが、その場合、運動中の筋力を低下させてしまうため、筋力トレーニングの重量や回数を減らす必要が出てきます。

知っていますか?

  • 一般に、ストレッチは運動の前よりも後で行う方が有益です。

バランストレーニング

バランストレーニングは、片脚で立ったりバランスボードに乗ったりして、不安定な環境で運動しながら重心を維持するトレーニングです。基本的な筋力トレーニングは関節の周囲にある筋肉のサイズと筋力を増加させ、それによって関節の安定性が高まるため、間接的にバランスの向上につながります。

負荷と変動

一般に、運動の強度を増やすのであれば、持続時間か回数、またはその両方を減らす必要があります。同様に、回数や持続時間を増やしたら、強度を下げることが必要です。ウェイトトレーニングでは多くの場合、筋力が強化されるにつれて徐々に重量を増やしますが、持続時間と頻度はある程度のレベルに達したら一定に保ちます。

負荷が低すぎると運動しても効果はわずかですが、軽めの負荷で激しく運動する(より強い運動を行う)と、重めの負荷で軽く運動する場合と同等の効果を得ることができます。負荷の高すぎる運動は、体の動かし方が不適切になるリスクも高くなり、けがが増えます。また、同じ運動を長期間続けるよりも、種類を変えて筋肉トレーニングを行うのがよいでしょう。体はルーチンに慣れてしまうため、同じ運動を同じやり方でずっと続けると、筋力や筋肉をつくる効果や、心血管機能を改善する効果が薄れてしまいます。そこで、レジスタンス運動を行う場合は、数週間毎にルーチンを変えます。また有酸素運動を行う場合も、別の種類の有酸素運動と交互に行う必要があります。

非常に高強度で運動する人は、トレーニングの合間に休養を入れ、十分な回復時間を確保したフィットネス計画を立てる必要があります。例えば休日や休暇に合わせて、3カ月毎に1週間の休みを入れるようにします。運動選手の中には、高強度のトレーニングを定期的に行うのに十分な精神的および身体的条件を備えている人もいますが、より激しい定期的な運動の間は、回復のためのより頻繁な休養(例、3週間毎に1週間休む)が必要になることがあります。次のような徴候が現れたら、長めの休みが必要です。

  • 運動していなくても、筋肉が重いと感じる

  • 運動のパフォーマンスが落ちている

  • 関節や腱に痛みが出ている

  • 休息時の心拍数が上昇している

  • 運動する意欲が減退している

このような場合の長めの休養は、少なくとも1~2週間と考えてください(可能なら、より長く)。すべての症状が解消されるまで、運動を再開しないようにします。症状が改善されない、長引く、または重度である場合には、それらの症状を引き起こす病気がないか主治医に相談するべきです。

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