血液の細胞である血球には、いくつかの種類があります:
赤血球は、酸素を運んでいます。
白血球は、感染症から体を守っています。
血小板は、出血が起きたときに血液が固まるのを助けます。
形質細胞は、特別な種類の白血球です。形質細胞は抗体をつくります。抗体とは、感染症やがんに対する体に自然に備わった防御システムの一部をになうタンパク質です。抗体は、体の外から入ってきた細胞を見つけて、攻撃します。
骨髄は、骨の中心部にあります。血液中の細胞のほとんどは骨髄でつくられます。さまざまな血球はどれも、幹細胞という細胞から変化してできます。
多発性骨髄腫とはどのような病気ですか?
多発性骨髄腫は形質細胞のがんです。形質細胞の1つが骨髄の中で際限なく増殖して、そのコピーがたくさんつくられます。
多発性骨髄腫は、しばしば骨の痛み、骨折、腎不全を引き起こします。
多発性骨髄腫の人の平均年齢は65才くらいです。
医師は血液検査と尿検査、それに骨髄生検(骨髄を少しだけ取って、それを顕微鏡で調べる検査)をして、多発性骨髄腫と診断します。
医師はふつう、化学療法とコルチコステロイドで、また場合により造血幹細胞移植という方法で、このがんを治療します。
多発性骨髄腫はどのような問題を引き起こしますか?
がんになった形質細胞が:
近くにある健康な骨に侵入します。
骨髄の中の正常な細胞を押し出します。
1種類の抗体をたくさんつくります。
骨に侵入されると、骨が痛くなり、骨折が起きやすくなります。
異常な細胞で骨髄がいっぱいになると、正常な血液細胞が十分につくられれなくなります。赤血球が足りなくなると、貧血(血球数が少なくなった状態)になります。健康な白血球が足りなくなると、感染症になる危険性が高まります。血小板が足りなくなると、大変な出血が起きる可能性があります。
がんになった形質細胞によってつくられる過剰な抗体は、正常に働かないため、感染症に対する防御には役立ちません。その一方で、腎臓の血管につまって、腎不全を引き起こすことがあります。
多発性骨髄腫の原因は何ですか?
多発性骨髄腫の原因は医師たちにも分かっていませんが、次のような可能性があると考えられています:
なりやすい体質が家族の中で受けつがれる
一部のものは、放射線や特定の化学物質にさらされすぎることが原因で起きる
多発性骨髄腫にはどのような症状がありますか?
最もよくある症状は次のものです:
骨の痛み、ふつうは股関節、背骨、肋骨、頭蓋骨
合併症のために、そのほかの症状が出ることもあります:
貧血(血球数が少なくなった状態)による疲労感と脱力感
発熱と寒気を引き起こす感染症
血液の凝固に問題があることによる異常なあざや出血
医師はどのようにして、私が多発性骨髄腫かどうかを判断しますか?
医師は次のことをします:
さまざまな種類の血球と抗体の量を測定するための血液検査
骨髄腫によってつくられた抗体やそのほかのタンパク質の量を測定するための尿検査
痛みがある骨があれば、そのX線検査
これらの検査で多発性骨髄腫の可能性が疑われる場合、医師は次のことをします:
骨髄生検(骨髄を少しだけ取って、それを顕微鏡で調べる検査)
骨髄腫の影響を受けている骨がどれかを調べるための、体のすべての骨を対象とするX線検査(全身骨X線検査)
医師は多発性骨髄腫をどのように治療しますか?
医師は、がんの増殖を遅らせ、症状を軽くするための治療をします。多発性骨髄腫を完全に治すことはできませんが、長く生きられる可能性もあります。
医師は次のことをする場合があります:
場合により、造血幹細胞移植という治療をすることもあります。
健康な幹細胞をあなた自身から、またはほかの人から採取します。
その後、異常な形質細胞をすべて殺せる強力な化学療法を行います。
次に、正常な幹細胞を、静脈を通して、あなたの体内に戻します。
すると、それらの幹細胞が骨髄の中に移動し、そこで正常な血球をつくるようになります。
多発性骨髄腫に対する新しい薬がかなりよく効くことから、造血幹細胞移植が行われることは少なくなっています。