巨人症および先端巨大症

執筆者:John D. Carmichael, MD, Keck School of Medicine of the University of Southern California
レビュー/改訂 2021年 3月 | 修正済み 2022年 9月
プロフェッショナル版を見る
やさしくわかる病気事典

成長ホルモンが過剰につくられると、極端な発育を招きます。この状態は、小児では巨人症と呼ばれ、成人では先端巨大症(末端肥大症)と呼ばれます。

  • 成長ホルモンが過剰につくられるのは、ほとんどの場合、がんではない(良性の)下垂体腫瘍が原因です。

  • 小児では身長が異常に伸び、成人では身長が伸びない代わりに骨が変形します。

  • よくみられる症状に心不全、脱力、視覚障害があります。

  • 診断は、血液検査や頭蓋および手の画像検査に基づいて下されます。

  • 原因を調べるために、頭部のCT検査またはMRI検査が行われます。

  • 手術、放射線療法、薬物療法を組み合わせて、成長ホルモンの過剰生産の治療が行われます。

甲状腺の概要も参照のこと。)

成長ホルモンは、下垂体の前葉でつくられます。成長ホルモンは骨格、筋肉、その他多くの器官の成長を促進します。成長ホルモンが過剰につくられると、これらの組織のすべてで異常に活発な成長が起こります。成長ホルモンが過剰につくられるのは、ほとんどの場合、がんではない良性の下垂体腫瘍(腺腫)が原因です。膵臓(すいぞう)や肺にまれに発生する特定の腫瘍がホルモンを生産し、それが下垂体を刺激して過剰に成長ホルモンがつくられた結果、同様の症状が起こることもあります。

巨人症および先端巨大症の症状

小児期で骨の成長板(骨の先端部分で、骨が成長するところ)が閉じる前に成長ホルモンが過剰につくられると、巨人症と呼ばれる病態になります。長管骨がどんどん伸びて、身長が異常に伸び、手足も長くなります。さらに思春期の遅れや性器の発育不良がみられることがあります。

多くの場合、成長ホルモンの過剰産生は骨の成長が止まって長い年月が経過した30~50歳で発生します。このように成人で成長ホルモンが増加しても、骨の長さは伸びませんが、先端巨大症の原因となり、骨は伸びる代わりに変形します。変化はゆっくり起こるため、通常は何年もの間気がつきません。

知っていますか?

  • 先端巨大症の女性は、授乳中でなくても乳汁が出ることがあります。

先端巨大症の人は特有の顔立ちになり、手足は肥大します。より大きいサイズの指輪、手袋、靴、帽子が必要になります。あごの骨(下顎骨[かがくこつ])の成長過剰であごが突き出ます(顎前突症[がくぜんとつしょう])。声帯(喉頭[こうとう])の軟骨が厚くなるため声は太く、かすれます。肋骨(ろっこつ)が肥厚すると、樽のように胸板が厚くなります。関節痛がよくみられます。長年経過してから手足の変形性関節症になることがあります。

巨人症と先端巨大症では、舌が肥大して溝ができます。体毛は硬く濃い色になり、皮膚の肥厚に伴い増加します。皮膚の皮脂腺や汗腺が拡大し、大量発汗と不快な体臭がみられます。

通常は心臓が拡大し、機能が著しく損なわれて心不全を起こすこともあります。体の他の臓器が拡大することもあります。

ときには肥大した組織が神経を圧迫し、腕や脚に不快な感触や脱力感が生じます。眼から脳へ情報を伝える神経も圧迫されることがあり、視覚障害、特に視野の外側が損なわれます。脳が圧迫されると重度の頭痛が生じることがあります。

先端巨大症の女性のほとんどは月経周期が不規則になります。関連して起こるプロラクチンというホルモンの増加のために、授乳中でなくても乳汁が生産されることがあります(乳汁漏出症)。先端巨大症の男性の約3分の1が勃起障害になります。

糖尿病高血圧睡眠時無呼吸症候群、特定の(特に大腸の)腫瘍を発症しやすくなり、これらの腫瘍はがん化することもあります。無治療の場合、先端巨大症患者の余命は短くなります。

巨人症および先端巨大症の診断

  • 血液検査

  • 画像検査

小児では、初めのうちは急激な成長が異常にみえないことがありますが、やがて極端な成長による異常がはっきりしてきます。

成人の場合、過剰な成長ホルモンによる変化はゆっくりであるため、先端巨大症はしばしば最初の症状が現れてから何年も経過するまで診断されません。経時的に撮影された画像(数年にわたる検査画像)が診断に役立つことがあります。

頭部の画像検査では骨の肥厚と副鼻腔の拡大がみられます。また、手のX線画像では指先の骨の肥厚と骨の周辺組織に腫れがみられます。

血糖値と血圧は高くなることがあります。

下垂体の異常な増殖を調べるために、通常はCT検査またはMRI検査が行われます。先端巨大症は診断された時点ですでに発生から数年が経過していることが多いため、これらの検査では大半の患者に腫瘍が見つかります。

血液検査で、成長ホルモンとインスリン様成長因子1(IGF-1)とも高い値が示されれば診断が確定されます。成長ホルモンは短時間に一気に分泌され、先端巨大症でなくても成長ホルモンの量は劇的に変動するため、1回の検査で血液中の成長ホルモン値が高かったとしても、それだけでは診断を確定できません。成長ホルモン濃度を抑える物質を投与しても、正常な抑制が起こらないことを確認しなければなりません。投与される物質で、最も一般的なものはブドウ糖です(経口ブドウ糖負荷試験)。この試験は、臨床的特徴から先端巨大症が明らかな場合、IGF-1値が高い場合、またはCT検査やMRI検査で下垂体に腫瘍がみられる場合、必要ありません。

巨人症および先端巨大症の治療

  • 手術

  • 放射線療法

  • 薬物療法

成長ホルモンの過剰生産を止めたり減らしたりすることは簡単ではありません。医師は、手術、放射線療法、薬物療法を組み合わせて使用する必要があります。

手術

現在のところ、腫瘍による先端巨大症に対しては、経験豊富な外科医による下垂体腫瘍の切除手術が最良の初期治療とされています。それにより腫瘍はすぐに小さくなり、成長ホルモンの生産が減少し、しかもほとんどの場合、他の下垂体ホルモンの減少は起こりません。

しかし残念なことに、多くの場合、腫瘍は発見時にはすでに大きくなっていて、手術だけでは通常治りません。多くの場合、手術後に長期間の薬物療法が必要になります。放射線療法がときにフォローアップ治療として行われますが、これは、特に手術後もかなりの大きさの腫瘍が残って他の治療にもかかわらず先端巨大症の症状が持続する場合に行われます。

薬剤

薬剤も成長ホルモン高値の治療に用いることができます。腫瘍に作用して成長ホルモンの分泌を抑制する薬剤と、成長ホルモンが受容体と相互作用するのを遮断する薬剤が使用可能です。両タイプの薬剤とも、成長ホルモン過剰分泌に関連する症状を軽減します。

薬物の選択は治療を受ける人に応じて個別に行われますが、ほとんどの人はソマトスタチン受容体リガンドと呼ばれる薬物クラスによる治療を受けており、これによって成長ホルモン分泌を減少させ、それによってIGF-1が生産される量を減少させます。多くの場合、このような薬剤で腫瘍も縮小します。薬剤としては、オクトレオチド、ランレオチド、パシレオチドなどがあります。いずれも通常は、月1回投与されます。

成長ホルモン受容体拮抗薬であるペグビソマントも先端巨大症の治療に使用されます。腫瘍から分泌される成長ホルモンを阻害することによってIGF-1の生産を低下させます。投与は毎日の皮下注射により行い、用量を適切なレベルまで増加した場合、ほとんどの人で効果的です。ときに、先端巨大症の治療にカベルゴリンが使用されますが、これは特に血清IGF-1値が正常値を超えてそれほど上昇していない軽症例で用いられます。この薬剤はソマトスタチン受容体リガンドほど効果的ではありませんが、注射ではなく経口で投与するため、この薬剤が好まれる場合もあります。

ペグビソマントなど数種類の新しい成長ホルモン受容体拮抗薬が、ソマトスタチン系の薬が効かない人の治療に有用である可能性があります。これらの薬はいずれも、使用し続けている限り、多くの人で先端巨大症をコントロールする効果がありますが、治癒がもたらされるわけではありません。

放射線療法

放射線療法では腫瘍に対し、単回または複数回にわたり小線量での照射が行われ、手術よりも損傷が少なくて済みます。しかしながら、放射線療法が成長ホルモン分泌の抑制に十分な効果を発揮するまでには数年を要することがあります。また、多くの場合、放射線療法では正常な組織も影響を受けるため、後に他の下垂体ホルモンの欠乏がしばしば現れます。放射線をいくつかの異なる方向から照射する定位放射線治療が(ゆえに放射線は常に同じ正常組織を通過するとは限りません)、直線加速器、陽子線、ガンマナイフを含む、複数の種類の放射線装置との併用で開発が進められています。

quizzes_lightbulb_red
医学知識をチェックTake a Quiz!
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS