栄養の概要

執筆者:Adrienne Youdim, MD, David Geffen School of Medicine at UCLA
レビュー/改訂 2021年 12月
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栄養摂取とは、体の成長、発達、生命維持に必要な栄養素を摂取し、吸収し、利用する過程のことをいいます。

適切で十分な栄養をとるには、様々な栄養素(体に栄養を与える食物中の物質)が含まれる健康的な食事をする必要があります。健康的な食生活を送ることにより、人は望ましい体重と体の組成(体脂肪と筋肉の比率)を維持して、体を動かしたり頭を働かせたりなどの日常生活を送り、病気や障害のリスクを最小限にすることができます。

米国農務省(U.S. Department of Agriculture)によるアメリカ人のための食生活指針2020-2025、第9版(Dietary Guidelines for Americans 2020-2025, 9th edition)には、「健康的な食事パターンとは、推奨される量で、カロリー摂取の制限範囲内であり、すべての食品群にわたって栄養素密度が高い食品および飲料で構成される」と記されています。本指針によれば、健康的な食事パターンを構成する中核的要素には以下のものがあります:

  • あらゆる種類および色の野菜(エンドウ豆およびレンズ豆などの豆類を含みます)

  • 果物(特に丸ごと食べるもの)

  • 穀物(少なくとも半分が全粒)

  • 乳製品(無脂肪または低脂肪のミルク、ヨーグルト、およびチーズ、および/または乳糖を含まないもの、ならびに代替として栄養強化大豆飲料/ヨーグルトを含みます)

  • タンパク食品(赤身の肉、鶏肉、卵;魚介類;豆類;レンズ豆類;ナッツ類;種子類;大豆製品)

  • 油(植物油および魚介類やナッツ類などの食品中の油分)

食物を過剰に摂取すると、肥満になることがあります。特定の栄養素(通常はビタミンミネラル)を大量に摂取すると、有害な影響(毒性)が現れることがあります。十分な量の栄養素を摂取しないと、低栄養が生じる可能性があり、結果として栄養欠乏による障害につながることがあります。

栄養状態の評価

摂取している栄養素の量が適切かどうか調べるために、医師は食習慣や食事の内容について尋ね、診察を行って体の組成と機能を評価します。

身長と体重が測定され、BMI(ボディマスインデックス)が算出されます。BMIは、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った値です。米国では男女ともBMIが18.5~24.9であれば正常または健康とされます。米国や他の先進国では、BMIが24を超える人が多数います。適切な体重を維持することは、心身ともに健康でいるために大切なことです。標準身長体重表を指標として用いることができますが、BMIの方がより信頼性があります。

ただしBMIは身体組成の違いを説明するものではありません。代わりに、ウエスト周囲長を測定することができます;体幹の中央部につく脂肪は、過剰体重や内臓脂肪のより正確な指標となることがあり、心臓病や代謝性疾患のリスクを予測できる傾向があります。

多くの栄養素の濃度は、血液中、一部の細胞内、そしてときに組織中で測定できます。例えば、血液中の主なタンパク質であるアルブミンの濃度の測定は、タンパク質が不足しているかどうかを判定するのに役立ちます。栄養摂取が不十分だと、栄養素の濃度が低下します。しかしながら、これらの測定値が栄養状態を確実に示すかどうかは、その測定値が何を反映するか(例えば、細胞内か血液中か)に依存する可能性があり、これは血液中で運ばれる量に比して細胞内の栄養素濃度の方が、利用可能な栄養素をより反映している可能性があるためです。

身体組成

身体組成とは普通、身体にどれだけの脂肪と筋肉があるかを示すもので、通常は体脂肪の割合として表されます。身体組成の推定は主に次の方法で行います。

  • 皮下脂肪厚を測定する

  • 生体電気インピーダンス法を用いる

この割合をより正確に測定する方法として、水中で体重を測定する静水計量や二重エネルギーX線吸収法(DXAスキャン)、CT検査、MRI検査などがあります。ただし、これらの方法は簡単ではなく、費用がかさむこともあり、CT検査では不必要な放射線被曝が発生するほか、いつでもすぐに利用できるわけではありません。これらは主に研究で用いられています。

皮下脂肪厚:皮膚の下の脂肪の量(皮下脂肪厚)を測定することによって身体組成を推定できます。左腕の二の腕の背中側の皮膚(上腕三頭筋皮下脂肪厚)をつまんで引っぱり、皮脂厚計で測定します。男性で約1.3センチメートル、女性で約2.5センチメートルなら正常とみなされます。この測定値と左の二の腕の外周の長さにより、体の骨格筋の量(除脂肪体重)を推定できます。

生体電気インピーダンス法:この検査では、極めて微弱な低電圧電流に対する体組織の抵抗を測定します。一般的には、金属製のプレートの上に素足で立ち、人が感じることができないレベルの電流が片方の足から上部に流れ、もう一方の足から降りてきます。電流に対する体脂肪と骨の抵抗は、筋肉組織の抵抗よりはるかに大きなものです。電流に対する抵抗を測定することによって体脂肪の割合を概算できます。この検査はわずか1分程度で実施できます。

静水計量:水中(小さいプール)で体重をはかり、その体重を陸上での体重と比較します。骨と筋肉は水より密度が高いため、脂肪以外の組織の割合が高い人は水中で重く、脂肪の割合が高い人は軽くなります。この方法が最も正確だと考えられていますが、容易には利用できない特別な装置、かなりの時間、専門的技術が必要です。

二重エネルギーX線吸収法(DXAスキャン):この画像検査法では、体脂肪の量と分布を正確に測定できます。DXAスキャンで使用する放射線の量はごくわずかなので安全です。しかし、定期的に行うには非常に高価です。

CT検査およびMRI検査は、健康状態の改善のみを目的としてルーチンに利用できるわけではありませんが、筋肉および臓器内部を含む組織内の脂肪量をより正確に判定でき、より有害な腹部および内臓の脂肪(内臓脂肪)を皮膚下のあまり有害ではない脂肪(皮下脂肪)と識別できるため、最も詳細かつ正確な身体組成分析が可能です。

食事の構成要素

一般に、栄養素は次の2つに分類されます。

  • 多量栄養素:毎日多くの量を摂取する必要がある栄養素です。タンパク質脂肪炭水化物、一部のミネラル、水などが含まれます。

  • 微量栄養素:毎日少量(1日に数マイクログラムから数ミリグラム)を摂取する必要がある栄養素です。体が多量栄養素を消費するために必要となるビタミンや特定のミネラルなどが含まれます。このようなミネラルは、体が必要とする量が非常に少ないことから、微量ミネラルと呼ばれています。

水は消費エネルギー1キロカロリー毎に1ミリリットル、1日におよそ2.5リットル必要です。水を飲む以外にも、多くの食品に含まれている水分、フルーツジュース、野菜ジュース、カフェインの入っていないコーヒーや茶などで水分の必要量を満たすことができます。アルコール飲料やカフェイン入りのコーヒー、茶、炭酸飲料は排尿を増やすことがあるため、あまり有用ではありません。

1日の食事で食べる食物の中には10万種類もの物質が含まれています。しかし、栄養素として分類されているのはそのうちの300種類ほどだけで、さらに必須栄養素として分類されているのはわずか45種類で、以下のものがあります。

  • ビタミン

  • ミネラル

  • アミノ酸(タンパク質の構成成分)の一部

  • 脂肪酸(脂肪の構成成分)の一部

必須栄養素は体内では合成できず、食物から摂取する必要があります。

食物にはほかにも、セルロース、ペクチン、ガム質などの食物繊維をはじめとする多くの有用な成分が含まれています。

また食物には、食品の生産、加工、貯蔵、包装に使用する添加物(保存料、乳化剤、酸化防止剤、安定剤など)も含まれています。

加齢に関連する注意点:栄養

食事とは、何をその目標とするかにかかわらず、人が食べるものすべてを指します。高齢者に最適な食事として定められているものはありません。しかし、加齢による体の変化のありかたに基づいて食事を部分的に変えることが有益な場合もあります。炭水化物や脂肪など、一部の栄養素は変更する必要はありません。

  • カロリー加齢とともに活動性が低下する傾向があり、そのためエネルギー消費が少なくなり、体重が増えやすくなります。体重増加を避けるために摂取カロリーを減らそうとすると、必要な栄養素をすべて摂取できない可能性があります(特にビタミンとミネラル)。高齢者が体を動かす活動的な生活を維持していても、カロリー必要量は変わらない可能性があります。

  • タンパク質加齢とともに、筋肉が失われる傾向にあります。高齢者がタンパク質を十分にとらないと、さらに多くの筋肉が失われる可能性があります。飲食が困難な高齢者(例えば飲み込みが難しかったり歯に病気があるなど)の場合は、肉よりも噛みやすい食品、例えば魚、乳製品、卵、ピーナツバター、豆類、大豆製品などからタンパク質をとることもできます。

  • 食物繊維十分な食物繊維を食べることは、加齢に伴い消化管の動きが遅くなることへの対策に役立ちます。高齢者は毎日8~12サービング分の高繊維質の食品を食べるとよいでしょう。食品から食物繊維をとることが最良ですが、オオバコなどのサプリメントが必要になる場合もあります。

  • ビタミンミネラル高齢者はマルチビタミン剤に加えて特定のビタミンやミネラルのサプリメントを飲まなければならない場合があります。例えばカルシウム、ビタミンD、ビタミンB12などです。食事から十分なカルシウムとビタミンDをとることは困難です。これらの栄養素は丈夫な骨の維持に必要で、丈夫な骨の維持は高齢者にとって特に重要です。一部の高齢者では、十分な食事をとっていてもビタミンB12を食物から取り出したり吸収する胃や腸の能力が低下しているため、十分なビタミンB12が吸収されません。この問題がある高齢者は、サプリメントを飲むことでよりよくビタミンB12を吸収できます。

  • 水分:年齢が高くなるにつれて、のどの渇きを感じる能力が低下するために脱水状態になりやすくなります。そのため、高齢者はのどの渇きを感じる前に意識的に十分な水分をとるようにする必要があります。ただし、一般に高齢者は若い人よりも多くの水分をとる必要はありません。

高齢者では、体が必要とする栄養量やそれを満たす体の能力を変化させる病気があったり、そのような薬を服用したりしている場合が多くなります。病気や薬によって食欲が低下したり、栄養素の吸収が妨げられる場合もあります。高齢者が病院に行くときには、自分の病気や服用している薬が何らかの形で栄養に影響を及ぼすかどうか、医師に尋ねるとよいでしょう。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. アメリカ人のための食生活指針2020-2025、第9版(Dietary Guidelines for Americans 2020-2025, 9th edition):米国農務省(U.S. Department of Agriculture)と米国保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)による出生から高齢期までのライフステージに応じた栄養に関する推奨事項

  2. マイプレートプラン(MyPlate Plan):様々な果物、野菜、穀物、タンパク食品、乳製品および栄養強化大豆の代替品を摂取することで健康的な食事習慣を促進するUSDAのフードガイダンスシステム

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