ファンコニ症候群は、尿細管の機能が低下するまれな病気で、ブドウ糖(グルコース)、重炭酸塩、リン、尿酸、カリウム、一部のアミノ酸などが尿中に過剰に排泄されます。
(尿細管疾患に関する序も参照のこと。)
ファンコニ症候群はファンコニ貧血とは無関係ですから、混同しないよう注意が必要です。
ファンコニ症候群は、遺伝性の場合と、以下の原因によって起こる場合があります。
ファンコニ症候群は通常、シスチン症など他の遺伝性の病気と一緒に発生します。シスチン症は遺伝性のアミノ酸代謝の病気で、アミノ酸の一種であるシスチンが全身に異常に蓄積し、尿中シスチン濃度が異常となることが特徴です。シスチンの異常蓄積により、眼の病気、肝臓の腫大、甲状腺機能低下症(甲状腺の活動が不十分になった状態)が起こります。
ファンコニ症候群の症状
ファンコニ症候群の診断
血液と尿の検査
症状と血液の異常(酸の上昇)や尿の異常(グルコース高値)を示す検査結果から、ファンコニ症候群が疑われる場合があります。尿からブドウ糖(ただし血糖値は正常)、リン、およびアミノ酸が高い濃度で検出されれば、診断は確定します。
ファンコニ症候群の治療
炭酸水素ナトリウム溶液を飲む
ファンコニ症候群を完治させることはできませんが、適切な治療によりコントロールすることは可能です。効果的な治療を行えば、骨や腎臓の組織の損傷がさらに悪化するのを防ぎ、損傷の一部を治癒させることができる場合もあります。アシドーシス(血液の酸性度が高くなった状態)がみられる場合は、炭酸水素ナトリウムの溶液を飲むことで酸を中和します。血液中のカリウム濃度が低い場合は、カリウムのサプリメントの摂取が必要になることもあります。
骨の病気には、リンとビタミンDのサプリメントによる治療が必要です。
ファンコニ症候群の小児に腎不全が起きた場合、腎移植が救命につながることがありますが、シスチン症が基礎疾患としてある場合には、他の臓器で進行性の損傷が続いて、最終的に死に至ることがあります。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases[NIDDK]):実施中の研究に関する情報、英語およびスペイン語の消費者向け健康情報、ブログ、ならびに地域の健康促進プログラムやアウトリーチプログラム。