悪心および嘔吐の主な原因

原因

示唆する所見*

診断アプローチ†

消化管疾患

麻痺性イレウス

腹部膨隆

術後患者と重症疾患や電解質異常がある患者でリスクが高まる

臨床的評価

X線またはCT

腸閉塞

便秘,腹部膨隆,鼓音

しばしば胆汁性嘔吐,腹部手術瘢痕,またはヘルニア

臥位および立位腹部X線検査

胃腸炎

嘔吐,下痢

腹部診察で異常なし

臨床的評価

胃不全麻痺

食後数時間経過してから一部消化された食物を嘔吐

しばしば,血糖高値の糖尿病患者,または腹部手術後の患者

臥位および立位腹部X線検査

ときに胃排出シンチグラフィー

肝炎

軽度から中等度の悪心が何日間も続く,ときに嘔吐

黄疸,食欲不振,倦怠感

ときに肝臓に軽度の圧痛

血清アミノトランスフェラーゼ,ビリルビン,肝炎ウイルス価

内臓穿孔または他の急性腹症(例,虫垂炎胆嚢炎膵炎

顕著な腹痛

通常,腹膜刺激徴候

See page 急性腹痛

毒物摂取(多数)

通常,病歴から明らか

物質により異なる

中枢神経系疾患

脳腫瘍

めまい/頭痛

ときに精神状態の変化/局所神経脱落症状

頭部CTまたはMRI

大麻使用(カンナビノイド悪阻症候群)

持続する悪心,嘔吐,ディスペプシア

通常は慢性の大麻使用で生じる

熱いシャワーやマリファナ使用の中止で軽快する

臨床的評価

尿中薬物スクリーニング

非開放性頭部損傷

病歴から明らか

頭部CT

中枢神経系出血

突然発生する頭痛,精神状態の変化

しばしば髄膜刺激徴候

頭部CT

CTが正常であれば腰椎穿刺

中枢神経系感染症

緩徐に発生する頭痛

しばしば髄膜刺激徴候,精神状態の変化

ときに,髄膜炎菌血症による点状出血性皮疹*

頭部CT

腰椎穿刺

頭蓋内圧亢進(例,血腫または腫瘤に起因)

頭痛,精神状態の変化

ときに局所神経脱落症状

頭部CT

内耳炎

回転性めまい,眼振,運動によって悪化する症状

ときに耳鳴

See page 浮動性めまいと回転性めまい

片頭痛

ときに頭痛に先行または随伴する神経症状の前兆または羞明

同様の発作を繰り返している場合が多い

片頭痛が既知の患者では,他の中枢神経系疾患が発生している可能性

臨床的評価

評価が不明の場合,頭部CTおよび腰椎穿刺を考慮

動揺病(乗り物酔い)

病歴から明らか

臨床的評価

心因性疾患(例,神経性やせ症および過食症)

ストレスにより発生

食物摂取が嫌悪すべきものとされる

臨床的評価

全身性疾患

進行がん(化学療法または腸閉塞と無関係)

病歴から明らか

臨床的評価

糖尿病性ケトアシドーシス

多尿,多飲

しばしば顕著な脱水

糖尿病の病歴の有無によらない

血清血糖値,電解質,ケトン体

薬剤の有害作用または毒性

病歴から明らか

物質により異なる

肝不全または腎不全

しばしば病歴から明らか

羽ばたき振戦

しばしば進行した肝疾患では黄疸,腎不全では尿毒臭

肝機能および腎機能の臨床検査

血中アンモニア値

妊娠

しばしば朝に起こる,または食物により誘発

検査で異常なし(脱水を認めることがある)

妊娠検査

放射線曝露

病歴から明らか

臨床的評価

重度の疼痛(例,腎結石に起因)

原因により異なる

臨床的評価

* ときに,激しい嘔吐(原因の疾患または状態を問わず)は,体幹上部および顔面の点状出血を引き起こし,髄膜炎菌血症の症状と類似することがある。髄膜炎菌血症患者は通常極めて重篤であり,一方,嘔吐による点状出血がみられる患者は,それ以外の点ではしばしば健康にみえる。

†臨床的評価は常に行うものであるが,それが診断の唯一の手段となる可能性がある場合に限り,この列で言及している。

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