嗅覚脱失の主な原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ*

鼻腔内の閉塞

アレルギー性鼻炎

慢性的なアレルギー症状(例,鼻閉,透明な鼻漏)の既往;疼痛はない

診察のみ

鼻茸

通常,鼻茸は診察時に視認可能である

診察のみ

嗅上皮の破壊

萎縮性鼻炎

萎縮性および硬化性の粘膜,鼻腔の開存,痂皮形成,悪臭を伴う,慢性鼻炎

診察のみ

ときに生検(正常な円柱線毛上皮が重層扁平上皮に変化し[扁平上皮化生],粘膜固有層は体積および血管分布が減少していることが示される)

慢性副鼻腔炎

粘膿性の慢性的排膿,確認された感染症

診察のみ

ときにCT

COVID-19

しばしば他の感染症状(例,発熱,咳嗽)に先行する

可能であればウイルス検査

一部のウイルス性のURI

臨床感染後の発症

診察のみ

薬剤および違法薬物(例,アンフェタミン類,エナラプリル,エストロゲン,ナファゾリン,フェノチアジン系薬剤,レセルピン;鼻閉改善薬の長期使用)

通常,明らかな使用歴

診察のみ

毒性物質(例,カドミウム,マンガン)

通常,明らかな曝露歴

診察のみ

腫瘍(例,髄膜腫,嗅神経芽腫)‡

嗅覚脱失単独または場合により視覚障害(腫瘍が視交叉または嗅溝に影響を及ぼしている場合)

CT

MRI

中枢伝導路の破壊

アルツハイマー病

進行性の錯乱および近時記憶の喪失

MRI

連続的な記憶検査

神経変性疾患(例,多発性硬化症

他の神経症状(例,脱力;しびれ;発声困難,視力障害,または嚥下困難)の間欠的エピソード

MRI

ときに腰椎穿刺

頭部外傷

病歴から明らか

CTまたはMRI

頭蓋内手術,感染症,または腫瘍

病歴から明らかな手術および中枢神経系感染症

他の神経症状を伴う場合も伴わない場合もある腫瘍

CTまたはMRI

*診察は常に行うものであるが,それが診断の唯一の手段となる可能性がある場合に限り,この列で言及している。

†嗅覚脱失の機序として嗅上皮の破壊が確認されているわけではない。

‡腫瘍は嗅覚脱失のまれな原因である。

COVID-19 = coronavirus disease 2019;CT = コンピュータ断層撮影;MRI = 磁気共鳴画像;URI = 上気道感染症。

関連するトピック