二次性および非定型パーキンソニズムの主な原因

原因

備考

神経変性疾患

グアムの筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合

抗パーキンソン病薬に対する反応は不良である

大脳皮質基底核変性症

通常は60歳以降に非対称性に始まる

皮質および基底核の徴候を引き起こし,しばしば失行,ジストニアミオクローヌス,およびalien limb syndrome(患者が意識的に制御できないように思える四肢の運動)を伴う

約5年で移動ができなくなり,原因に応じて7~10年ほどで死に至る

抗パーキンソン病薬に対する反応は不良である

認知症(例,アルツハイマー病,17番染色体と連鎖する前頭側頭型認知症,レビー小体型認知症)

パーキンソニズムはしばしば認知症の後から起こり,最も典型的には以下を伴う:

多系統萎縮症

著明な自律神経障害(起立時のふらつき,尿失禁または便失禁)を伴うことがある

著明な小脳機能障害を伴う可能性がある

重度のパーキンソン症状を伴う可能性があり,レボドパに対する反応は通常不良である

錐体路徴候を認めることがある

しばしば早期に転倒や平衡障害を引き起こす

抗パーキンソン病薬に対する反応は不良である

進行性核上性麻痺

まず歩行および平衡障害が現れる

古典的な病型では,下方注視障害で始まる進行性の眼筋麻痺を引き起こす

抗パーキンソン病薬に対する反応は不良である

脊髄小脳失調症(通常は1型,2型,または3型)

通常,最初の臨床像は平衡感覚障害および協調運動障害であるが,さらに古典的症状(例,1型では錐体路徴候,2型では緩徐な衝動性眼球運動と多発神経障害,3型ではパーキンソニズムとジストニア)を呈することもある

抗パーキンソン病薬に対する反応は不良である

その他の疾患

脳血管疾患

下肢優位の筋強剛および動作緩慢または無動(無動-固縮症候群)が出現し,著明な歩行障害および対称性の症状もみられる

抗パーキンソン病薬に反応することはまれで,反応がみられる場合も,高用量のレボドパ(1日1000mg以上)が必要になることがある

基底核付近の脳腫瘍

片側パーキンソニズム(すなわち,病変とは対側の部位に限定される)が現れる

慢性外傷性脳症外傷性脳損傷の反復による)

進行性のパーキンソニズム,認知症,および気分症(希死念慮を含む)を特徴とする

かつてはボクサーに認められる認知症として知られていたが,現在では様々なコンタクトスポーツの競技者や爆傷を負った兵士で認められている

正常圧水頭症

通常は髄液圧が正常であることが特徴であり,様々な機序(例,髄液拍動の亢進,髄液の排出低下)によって引き起こされる(1)。

副甲状腺機能低下症

基底核の石灰化を引き起こす

パーキンソニズム,舞踏運動およびアテトーゼを引き起こすことがある

ウイルス性脳炎(例,ウエストナイル脳炎),感染性または感染後自己免疫性

急性期に一過性のパーキンソニズムやまれに永続的なパーキンソニズムを引き起こす場合がある(例,1915~1926年の嗜眠性脳炎流行後の脳炎後パーキンソニズム)

脳炎後パーキンソニズムでは,頭部および眼の強制的かつ持続的な偏位(注視発作),その他のジストニア,自律神経不安定,抑うつ,人格変化

薬物

抗精神病薬

可逆的な†パーキンソニズム(薬剤誘発性または薬剤性パーキンソニズム)を引き起こす可能性がある

ペチジン類似化合物(N-MPTP)‡

違法に合成されたペチジンに含まれる汚染物質により,突然の不可逆的なパーキンソニズムを引き起こす場合がある

静注薬物使用者で発生する

メトクロプラミド

プロクロルペラジン

レセルピン(米国では使用できない)

リチウム,長期使用

可逆的†パーキンソニズムを引き起こす場合がある

用量依存性である場合と感受性(危険因子としては高齢,女性などがある)に関連する場合がある

リチウムは,ときに小脳の機能障害を引き起こす;これはセロトニン症候群の患者で起こりうる

毒素

一酸化炭素

両側淡蒼球内節を壊死させることで,不可逆的パーキンソニズムを引き起こす場合がある

メタノール

汚染された密造酒と同様に,基底核の出血性壊死を引き起こす可能性がある

マンガン

毒性が慢性化すると,ジストニアおよび認知機能の変化を伴ったパーキンソニズムを引き起こす可能性がある;cock walkと呼ばれる歩行§とT1強調像でのレンズ核の高信号が特徴的である

通常は職業(例,鉱山労働者または工業労働者)に関連するが,メトカチノン(エフェドリンの代謝物)の乱用に起因することもあり,メトカチノンはマンガン中毒の一種と推定される新しい病態を引き起こし,これがメトカチノンを自作して注射する静注薬物使用者で報告されている。

* 言語障害には,表出性(非流暢性,一次性,進行性)失語と受容性(一次性,進行性,意味性)失語がある。

† 薬剤が中止されれば,症状は通常数週間以内に消失するが,数カ月持続する場合もある。

‡ N-MPTPは,ペチジンを違法使用のために製造しようとして失敗した際に生じる。

§ ジストニア歩行の特徴としては,つま先歩き,肘の屈曲,直立姿勢などがある。

N-MPTP = N-メチル-4-フェニル-1,2,3,5-テトラヒドロピリジン。