ネイルガン(釘打ち機)による損傷

執筆者:Michael I. Greenberg, MD, Drexel University College of Medicine;
David Vearrier, MD, MPH, University of Mississippi Medical Center
レビュー/改訂 2022年 5月
意見 同じトピックページ はこちら

ネイルガン(釘打ち機)による損傷は,建設業でよくみられ,通常は手や指の刺創であるが,より重篤な損傷を引き起こすこともある。診断は臨床的に行い,評価にはX線が必要である。治療は手術による。

ネイルガンは枠組壁工法において金槌に取って代わり,米国では毎年推定37,000人の救急外来受診の原因となっており,そのうち68%が労働に関連したものである。

ネイルガンは高速で釘を打ち込むが,これは軟部組織と骨を貫通する可能性がある。ネイルガンによる損傷の大半は指および手に起こるが,下肢,体幹,眼,頭部に損傷が起こることもある。眼が侵されると,視力が失われることがある。(National Institute for Occupational Safety and Health (NIOSH): Nail Gun Safetyも参照のこと。)

ネイルガンによる損傷では,釘のほかにも他の物質(例,ワイヤー,布,紙,粘着剤)が創傷部に入り,感染に至る可能性がある。

ネイルガンは自殺のそぶりを見せる際に使用されている。

ネイルガンによる損傷の評価

ネイルガンによる損傷の評価の一連のステップには以下のものがある:

  • 必要であれば止血を行う

  • 基礎にある構造への損傷を同定して治療する

典型的には,釘が創傷部に埋まった状態で受診する。受傷部位の遠位神経,血管,腱の構成要素の詳細な評価が必須である。さらに,単純X線を撮影して,釘の大まかな位置,釘の種類,下床の骨の損傷を確認する。逆目釘は除去がより困難であり,手術室での検索および除去が必要である。

創傷から出血している場合は,評価前に止血しなければならない。最良の方法は,患部を直接圧迫し,可能であれば挙上することである。出血を起こしている血管を器具で締めつけると,隣接する神経が損傷する可能性があるため,通常は避ける。アドレナリンを含有する表面麻酔薬も出血の軽減に役立つ可能性がある。創より中枢側に一時的に駆血帯を注意深く使用すると,手および指の創傷が見やすくなることがある。

創傷の評価には十分な照明が必要である。拡大(例,拡大鏡による)が役立つことがある(特に近見視力が不十分な検者の場合)。完全な創傷評価には,ゾンデを使った探索または用手的な操作,およびそのための局所麻酔が必要であるが,局所麻酔薬の使用前に知覚検査を行うべきである。

合併損傷

医師は,神経,腱,血管,関節,骨など,基礎にある構造への損傷,および異物の存在や体腔の穿通(例,腹膜,胸郭)がないかを確認すべきである。専門医による評価が必要になる場合がある:

  • 釘が骨に埋まっている,または神経血管もしくは腱の損傷を伴う場合:手の外科医(手の損傷の場合)または他の適切な外科専門医による評価

  • ネイルガンによる眼の損傷:できるだけ早く眼科医による評価

  • ネイルガンによる頭部損傷:できるだけ早く脳神経外科医による評価

X線撮影を行う。この検査は釘の位置,骨損傷の有無,および治療に影響する釘の特徴を示すのに役立つ;例えば,逆目釘は除去の手順が複雑であり,手術室での検索と除去が必要になる。

ネイルガンによる損傷の治療

ネイルガンによる損傷の治療では以下を行う:

  • 釘の除去

  • 創傷ケア

釘が軟部組織に埋入していて,合併損傷を起こしていない場合は,強く牽引することで除去でき(局所麻酔が必要である),続いて創傷の清浄化と洗浄を行い,滅菌ドレッシングを適用する(裂創も参照)。ネイルガンによる他の全ての損傷については,損傷部位を検索し,釘を手術室で除去する。

ネイルガンによる損傷は典型的には深い刺傷であり,一次治癒(即時の縫合)ではなく,二次治癒によって治癒させるべきである。適応があれば破傷風予防を行う。

ネイルガンによる損傷の予防

予防対策には,ネイルガンの正しい使用法およびネイルガンによる損傷が及ぼしうる壊滅的な影響について労働者を教育することが含まれる(NIOSH: Nail Gun Safety—A Guide for Construction ContractorsおよびNailing Down the Need for Nail Gun Safetyを参照)。

要点

  • ネイルガンは損傷を引き起こすことが多くあり,損傷はしばしば神経,腱,血管,関節,骨の損傷や体腔の穿通を伴う。

  • 詳細な診察により重篤な損傷がないか確認し,X線撮影を行う。

  • 釘が軟部組織に埋入していて,合併損傷を起こしていない場合に限り,牽引して抜去するが,そうでなければ,釘の除去は手術室で行う。

  • ネイルガンによる損傷の大半は,縫合を試みるのではなく,二次治癒によって治癒させる。

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS