膝関節固定具の装着

執筆者:James Y. McCue, MD, University of Washington
レビュー/改訂 2021年 4月 | 修正済み 2022年 10月
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膝関節固定具は,膝関節の安定性を維持する着脱可能な器具である。

膝関節固定具は,典型的には,固定が有益であるが固定せずとも短期間は耐えられるためギプス固定を必要としない損傷に対して使用される。

適応

  • 特定の脛骨高原骨折

  • 緊急ではない手術による修復またはギプス固定を待つ間の固定を必要とする,膝関節骨折および靱帯損傷

  • 修復を必要としない特定の靱帯損傷(根治的治療として)

  • 膝蓋腱損傷

  • 膝蓋骨脱臼

  • 大腿四頭筋腱損傷

禁忌

絶対的禁忌

  • なし

相対的禁忌

  • 開放骨折

合併症

器具

  • 市販の膝関節固定具*

*様々なブランドがあるが,いずれも典型的には腓腹部中央から大腿中央に及ぶ厚手のフォーム材/布のラップで構成されている。ラップは一連のストラップで固定され,その厚みで支持力を与える。器具の内側面および外側面に装着し面ファスナーで固定する取り外し可能な硬い紐によって,さらなる安定性が得られる。

その他の留意事項

  • 開放創は全て,膝関節固定具を装着する前に治療し,適切に被覆すべきである。

  • まれに鎮痛が必要になる。

重要な解剖

  • 膝関節の靱帯損傷は,内側側副靱帯,前十字靱帯,外側側副靱帯,および/または後十字靱帯に生じることがある。

体位

  • 患者を仰臥位にし,足を支持し,膝関節を伸展させる。

ステップ-バイ-ステップの手順

利用可能な各製品の指示および推奨に従う。

  • 膝関節固定具とストラップを準備する。

  • 固定具を患肢の後方に配置し,縦横ともに膝の裏に中心がくるようにする。

  • 固定具に膝蓋骨部用の穴がある場合は,穴を膝蓋骨部の上にくるよう合わせる。

  • 固定具に取り外し可能または調整可能な固定バーがある場合は,内側および外側に下肢の長軸に沿って固定バーを配置する。

  • 膝の上下(典型的には上に2カ所と下に2カ所)で,固定ストラップ(例,面ファスナー)を用いて固定バーと固定具をしっかり留める。

  • 遠位部の感覚および毛細血管再充満を確認する。

アフターケア

  • 必要に応じて松葉杖を処方し,その使用法を指導する。

  • 適切なフォローアップを手配または推奨する。

  • 患者に対して,深部静脈血栓症の症状について警戒し,症状が生じた場合は直ちに評価のため再受診するよう助言する。

  • 経口薬でコントロールできない疼痛(コンパートメント症候群の評価の必要性が示唆される)があれば再受診するよう患者に助言する。

注意点とよくあるエラー

  • 下肢の低すぎる位置に固定具を装着すると,膝関節を効果的に固定できないため,これをしてはならない。

  • 固定具にすでに固定バーが取り付けられている場合,固定バーが正しい位置にある可能性は低く,位置を変えなくてはならない。

  • 下肢の形状が有意に先細りになっている場合(すなわち,大腿部が下肢の他の部分と比較して非常に太い場合),固定具が滑り落ちる傾向があるが,これは患者が立つまで明らかにならないことがある。

アドバイスとこつ

  • ストラップは下から上に向かって締める。

  • 患者が松葉杖なしで歩けることを確認しない限り,松葉杖を処方する。

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