大腿骨牽引副子の装着

執筆者:James Y. McCue, MD, University of Washington
レビュー/改訂 2021年 4月 | 修正済み 2022年 9月
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大腿骨牽引副子は,大腿骨骨幹部骨折を一時的に安定させるために使用するものであり,整復が得られる可能性もある。

大腿骨牽引副子は,通常は安定させた骨盤から足関節を離す方向に引くことにより,骨折部より遠位の下肢の下部を牽引するように設計されている。利用可能な市販品が多数存在するが,それぞれでデザインや指示がわずかに異なるため,正しく使用するには個々の製品に精通しておく必要がある。

牽引副子によって,大腿骨骨折(特に短縮があるもの)による疼痛および出血が軽減および/または緩和することもある。

適応

  • 大腿骨骨幹部骨折

大腿骨牽引副子は,根治的治療(例,手術による固定)の前に大腿骨骨折を安定させるために使用する。

禁忌

  • 骨盤骨折

  • 同側の足関節,足部,および/または下腿の骨折

  • 同側の膝関節損傷

牽引は大腿骨骨折に対しては有益であるが,大腿骨骨折より遠位の骨折または靱帯損傷に対しては有害となる可能性がある。

合併症

  • 血管または神経の牽引損傷

器具

  • 市販の大腿骨牽引副子キット(例,Hare®,Sager®,Ferno-tracTM,KendrickTM

  • 鎮痛薬/鎮静薬(例,フェンタニル,モルヒネ,プロポフォール)

その他の留意事項

  • 牽引副子は,大腿骨近位部骨折に対してはそれほど効果的ではないことがある。

重要な解剖

股関節骨折や大腿骨顆上骨折のような大腿骨のよく骨折する部位は,大腿骨骨幹部から除外される。

体位

  • 患者を仰臥位にして,患肢を支持する。

ステップ-バイ-ステップの手順

  • 使用する各製品の指示および推奨に従う。

  • ストレッチャーまたは台が器具の遠位端を支えるのに十分な長さ(例,同側の足を20cm[8インチ]超える)であることを確認する。患肢が短縮している場合は,対側の正常な下肢をランドマークにする。

  • 患者に十分な鎮痛を施す。

  • 適切な手順を含め,製品の指示に従い,器具を骨盤および足関節に固定する。

  • 足関節の留め具をロックする。

  • 下肢をサポートするストラップを全て指示通りの位置にする(例,膝の上に2本,膝の下に2本)。

  • 足関節に縦方向の牽引をかけ,短縮した下肢をまっすぐにするとともに対側の下肢の長さまで伸ばす。患者の体重の約10%または最大約7kgを用いる。

  • 指示通りに器具を固定する。

  • 遠位部の神経血管の状態を確認する(例,毛細血管再充満,遠位部の感覚,足趾の屈曲および伸展)。

アフターケア

  • 根治的治療が可能になり次第すぐに牽引副子を除去する。

注意点とよくあるエラー

  • 副子を装着する前後で末梢の脈拍を評価する。

  • 使用する器具に牽引力計が付属している場合は,それを使用して十分な牽引力がかかっていることを確認する。

  • 痛みの緩和および健側と比較した患肢の長さを頻回に評価することにより,十分な牽引力がかかっていることを確認する。

アドバイスとこつ

  • 大腿骨骨折の牽引副子固定は疼痛を伴うため,十分な鎮痛(通常はオピオイドの静注)を用いる。

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