膝伸展機構損傷は，大腿四頭筋腱，膝蓋腱，膝蓋骨，または脛骨粗面を侵すことがある。通常は外科的修復が必要である。
（捻挫およびその他の軟部組織損傷の概要も参照のこと。）
膝関節の伸展には，大腿四頭筋腱により膝蓋骨に付着する大腿四頭筋が関与する；膝蓋骨は膝蓋腱により脛骨粗面とつながる。大腿四頭筋が収縮した状態で膝関節を強引に屈曲すると，これらの構造を損傷する可能性がある。損傷としては以下のものがある：
大腿四頭筋腱裂傷
膝蓋腱裂傷
膝蓋骨骨折
脛骨粗面骨折
健常者では，これらの構造の損傷には大きい力が必要である；正常な腱は強く，腱が裂傷する前に膝蓋骨が横方向に骨折するほどである。しかし，特定の状況にある人には腱裂傷のリスクがある。そのような状況としては以下のものがある：
そのような高リスクの人では，軽微な外傷によって損傷が起こりうる（例，階段を下りるとき）。膝蓋腱に比べ大腿四頭筋腱の方が損傷することが多く，特に高齢者で多い。
膝伸展機構損傷の症状と徴候
損傷した部位に疼痛と腫脹が認められる。
腱が完全断裂した患者は，立っていること，仰臥位でまっすぐ伸ばした脚をあげること，または座位で膝を伸ばすことができない。
長期合併症（例，運動障害，筋力低下）がよくみられる。
膝伸展機構損傷の診断
臨床的評価
X線
MRI
以下の通り，膝の診察によってどの構造が損傷しているかが示唆される可能性がある：
大腿四頭筋腱裂傷：膝蓋骨の下方への転位（膝蓋骨低位）が触知できる。
膝蓋腱裂傷：膝蓋骨が上方に転位している（膝蓋骨高位）。
膝蓋骨横骨折：しばしば2つの骨片間に間隙が触知される。
しかし，患部の腫脹が顕著でこれらの所見を隠すことがあり，そのため関節血腫を伴う膝関節靱帯損傷と誤解される可能性がある。受傷後に膝の腫脹および疼痛が認められる場合は，座位して患肢を伸展するか仰臥位で患肢を挙上させてまっすぐの状態を保つように指示し，自動運動による膝関節伸展をテストする。
パール＆ピットフォール
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ルーチンの膝関節X線を撮る。膝蓋骨高位および膝蓋骨低位は膝関節X線で確認できる。X線ではしばしば膝蓋骨の転位または骨折が示されるが，正常にみえることもある。MRIにより診断が確定する。
膝伸展機構損傷の治療
外科的修復
膝伸展機構損傷の治療は外科的修復による。
