乏尿とは,尿量が成人において24時間で500mL未満,または成人もしくは小児で0.5mL/kg/時 未満(新生児では1mL/kg/時未満)の状態である。
乏尿の病因
乏尿の評価
病歴
コミュニケーションが可能な患者では,著明な尿意の訴えがあれば排出部の閉塞が示唆され,口渇があり尿意の訴えがなければ体液量減少が示唆される。意識が障害された(カテーテル留置中のことが多い)患者の場合,血圧が正常な患者における突然の尿量減少はカテーテルの閉塞(例,凝血塊もしくはねじれによる)または位置異常を示唆し,他方尿量が徐々に減少する場合は急性尿細管壊死または腎前性の原因がある可能性が高い。
直近の医療上の出来事が参考になり,具体的には直近の血圧記録,外科的処置,薬剤およびX線造影剤の投与などを検討する。直近の手術または外傷が,循環血液量減少と一致している可能性がある。重症の挫滅損傷,深部に及ぶ電撃傷,または熱中症があれば,横紋筋融解症が示唆される。
身体診察
検査
尿道カテーテル留置中の全ての患者(および回腸導管の患者)では,他の検査を行う前に,洗浄によってカテーテルの開通性を確かめるべきである;このアプローチで問題が解決する場合もある。それで解決しない患者の多くは,病因(例,ショック,敗血症)が臨床的に明らかである。その他の患者,特に複数の疾患をもつ患者では,腎前性と腎性(急性尿細管壊死)の原因を鑑別するために検査が必要である。尿道カテーテルを使用していない患者では,カテーテル留置を考慮する;これにより閉塞を診断および治療でき,尿量を継続的にモニタリングできる。
中心静脈または肺動脈カテーテルが留置されている場合,中心静脈圧(エンドポイントとモニタリングを参照)または肺動脈楔入圧を測定することによって,循環血漿量の過不足を(肺動脈カテーテルの場合は心拍出量も)判断できる。しかしながら,多くの医師は,他の適応がない限り,急性乏尿に対してこういったカテーテルの挿入を行わない。体液量過剰の徴候のない患者における別の鑑別法は,生理食塩水500mL(小児では20mL/kg)を試験的に急速輸液する方法である;尿量が増加すれば腎前性の原因が示唆される。乏尿の原因を特定するために,ナトリウムなどの血清電解質,血中尿素窒素,およびクレアチニンを測定すべきである。血清BUN/クレアチニン比の高値(例,> 20:1)は腎前性の原因を示唆する。
以下の式を用いて血漿中および尿中ナトリウム濃度からナトリウム排泄率(FENa)を計算すると,腎前性の病態と急性尿細管壊死の鑑別に役立つ:
FENa > 2%は通常,急性尿細管壊死を示唆する。
FENa < 1%は通常,腎前性の病態(脱水または他の腎前性高窒素血症など)を示唆する。
FENaが1~2%の場合,急性尿細管壊死または腎前性の病態のいずれでもありうる。
患者が利尿薬を服用している場合は,尿素排泄率(FEUrea)の算出が腎前性の病態と急性尿細管壊死の鑑別に役立つ可能性があり,これは以下の式を用いて算出する:
FEUrea > 50%は通常,急性尿細管壊死を示唆する。
FEUrea < 35%は通常,腎前性の病態を示唆する。
FEUreaが35~50%の場合,急性尿細管壊死または腎前性の病態のいずれでもありうる。
乏尿の治療
同定された原因を治療する;尿路の閉塞を是正し,体液を補給し,心拍出量を正常化する。腎毒性薬剤は腎機能に応じて用量を調節するか投与を中止し,他の薬剤で代用する。さらなる腎障害を予防するために,低血圧を回避すべきである。不可逆的な腎不全の患者は,腎代替療法(例,持続的静静脈血液濾過または血液透析)を必要とする場合がある。
要点
乏尿の原因のカテゴリーは,腎血流量の減少,腎機能不全,および尿路の閉塞である。
病歴および身体診察から,しばしば機序が示唆される(例,最近の低血圧,腎毒性薬剤の使用)。
血清電解質,血中尿素窒素,およびクレアチニンを測定する。
原因が腎前性なのか腎性なのかが不明であれば,尿中ナトリウム値および尿中クレアチニン値を測定し,ナトリウム排泄率を計算する;値が1未満であれば原因が腎前性,2を超えるなら急性尿細管壊死であることを示し,1~2%の間であれば判定できない。
利尿薬を服用している患者では,尿中および血漿クレアチニン値だけでなく尿中および血漿尿素値も測定し,尿素排泄率を算出して原因が腎前性か腎性かを判定する;35%未満は原因が腎前性であることを示す;50%を超える場合は原因が急性尿細管壊死であることを示す;35~50%は病因が不確定であることを示す。