先天性ミオパチーは,出生時に顕在していることがある数多くの異なる神経筋疾患に適用される用語であるが,出生時または新生児期において筋緊張低下および筋力低下,さらに一部の症例ではその後の小児期において運動発達遅滞を引き起こす,まれな遺伝性かつ原発性の筋疾患の一群のみを指すのが通常である。診断は臨床的に行い,筋生検のほか,ときに筋MRIにより確定する。治療は支持療法であり,それには理学療法が含まれる。
先天性ミオパチーは筋緊張低下および筋力低下を臨床的特徴とする一群の遺伝性筋疾患で,通常は出生時から認められ,進行がみられないか緩徐に進行する臨床経過をたどる。筋ジストロフィーもまた筋力低下を引き起こす遺伝性疾患であるが,発症年齢,罹患筋の分布,先天性ミオパチーの生検検体にはみられない特徴的なジストロフィー変化(例,筋線維の壊死および再生)の存在が先天性ミオパチーとは異なる。
先天性ミオパチーの中で最も頻度の高い3つの型は,頻度の順に以下の通りである:
セントラルコア病およびマルチミニコア病(コアミオパチー)
中心核ミオパチー
ネマリンミオパチー
これらの型は主として組織学的特徴,症状,および予後により鑑別される。
先天性ミオパチーの診断は,特徴的な臨床所見から示唆され,筋生検およびときに筋肉のMRIによって確定される。近年,先天性ミオパチーの多くの病型について原因となる遺伝子変異が同定されてきており,臨床的評価やその他の検査結果に応じて,ときにDNA検査が行われる。
先天性ミオパチーの治療は支持療法であり,理学療法を行うが,これが機能維持の助けになることがある。
セントラルコア病およびマルチミニコア病(コアミオパチー)
セントラルコア病およびマルチミニコア病(コアミオパチー)は先天性ミオパチーの最も頻度の高い病型であり,RYR1の遺伝子変異に関連することが最も多い。遺伝形式は通常は常染色体顕性(優性)であるが,潜性(劣性)および散発例もある。コアミオパチーは,酸化酵素染色がみられない筋生検検体上の領域(コア)を特徴とし,その領域は末梢性,中心性,限局性,多発性,または広範性のことがある。セントラルコア病が,同定された最初の先天性ミオパチーであった。
大半の患者は,新生児期に筋緊張低下および近位筋の軽度筋力低下を呈するが,ときに成人期までコアミオパチーの症状が出現しない。多くは顔面筋にも筋力低下がみられる。筋力低下は非進行性で,期待余命は正常であるが,一部の患者は重症であり車椅子を必要とする。セントラルコア病に関連する遺伝子変異は悪性高熱症の感受性増大とも関連している。
中心核ミオパチー
中心核ミオパチーは,筋生検で中心核が大量に認められることを特徴とする。このミオパチーは,X連鎖性,常染色体顕性(優性),または常染色体潜性(劣性)の場合があるが,関与する遺伝子の大半は膜輸送タンパク質をコードする。
X連鎖性の型が最も頻度が高く最も重度であり,患児の大半は生後1年以上生存できない。
常染色体顕性(優性)の型は,典型的には,運動誘発性の筋肉痛,両側性の顔面筋力低下,眼瞼下垂,および外眼筋麻痺を伴って青年期または成人期に発症する。
ネマリンミオパチー
ネマリンミオパチーは比較的頻度の高い先天性ミオパチーの1つであり,常染色体顕性(優性)または潜性(劣性)の遺伝形式をとる。原因となる変異は10の遺伝子において同定されており,その全てが細線維タンパク質の産生に関係している。
ネマリンミオパチーは,重度,中等度,軽度のいずれの場合もある。重症患者では,呼吸筋の筋力低下および呼吸不全がみられることがある。中等症の場合は,顔面,頸部,体幹,および足の筋肉における進行性の筋力低下が生じるが,期待余命はほぼ正常である。軽症の場合は非進行性であり,期待余命は正常である。