プリンサルベージ経路の異常

執筆者:Matt Demczko, MD, Mitochondrial Medicine, Children's Hospital of Philadelphia
レビュー/改訂 2021年 10月
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プリンは,細胞のエネルギー系(例,ATP,NAD),信号伝達(例,GTP,cAMP,cGMP),およびピリミジンとともにRNAおよびDNA産生に重要な成分である。

プリンは,de novo合成される場合と,正常な異化からのサルベージ経路によって再利用される場合がある。

完全なプリン異化の最終産物は尿酸である。

プリンサルベージ経路の異常に加え,プリン代謝異常症には以下の疾患も含まれる(プリン代謝異常症の表も参照):

遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチおよび遺伝性代謝疾患が疑われる場合の検査も参照のこと。

レッシュ-ナイハン症候群

ヒポキサンチン-グアニントランスフェラーゼ(HPRT)の欠損に起因するまれなX連鎖潜性遺伝(劣性遺伝)疾患であり,個々の遺伝子変異毎に欠損の程度が(したがって臨床像も)異なる。HPRTが欠損すると,ヒポキサンチンおよびアデニンのサルベージ経路の障害が発生する。これらのプリンはその代わりに尿酸へと分解される。さらに,イノシトール一リン酸およびグアノシル一リン酸の増加により,5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸(PRPP)から5-ホスホリボシルアミンへの変換が亢進し,尿酸の過剰産生がさらに増悪する。高尿酸血症は痛風およびその合併症の素因となる。患者にはいくつかの認知機能および行動機能障害もみられるが,その病因は明らかにはなっておらず,尿酸との関係はないとみられる。

この疾患は,通常生後3カ月から12カ月までの間に尿中のオレンジ色の砂状析出物(キサンチン)を伴って発症し,知的障害,痙直型脳性麻痺,不随意運動,および自傷行動(特に噛みつき)を伴う中枢神経系障害へと進行する。その後,慢性の高尿酸血症により痛風症状(例,尿路結石症,腎症,痛風性関節炎,痛風結節)を来す。

レッシュ-ナイハン症候群の診断は,ジストニア,知的障害,および自傷行動の併発によって示唆される。血清中尿酸値は通常上昇するが,DNA解析による確定診断が行われる。

中枢神経系機能障害には治療法がなく,支持療法で管理する。自傷行動には身体的拘束や抜歯,ときに薬物療法が必要になることがあり,様々な薬剤が使用されている。高尿酸血症の治療は,低プリン食療法(例,内臓肉,豆類,イワシの摂取回避)およびキサンチン酸化阻害物質であるアロプリノール(プリン異化経路における最終酵素)の投与である。アロプリノールは蓄積したヒポキサンチンの尿酸への変換を阻止し,ヒポキサンチンは非常に溶解度が高いため,容易に排泄される。

アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損症

まれな常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患であり,プリン合成でのアデニンの再利用を妨げる。蓄積したアデニンが酸化されて2,8-ジヒドロキシアデニンになり,これが尿路内で析出することで,尿酸性腎症と同様の問題が生じる(例,腎仙痛,頻回の感染,診断が遅れた場合は腎不全)。あらゆる年齢で発生する。

アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損症の診断は,尿中の2,8-ジヒドロキシアデニン,8-ヒドロキシアデニン,およびアデニンの高値を検出することによって行われ,DNA解析によって確定されるが,血清中尿酸値は正常である。

アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損症の治療は,食事でのプリンの摂取制限,大量の水分摂取,および尿アルカリ化の回避による。アロプリノールでアデニンの酸化を防ぐことができ,末期腎不全には腎移植が必要になることがある。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Online Mendelian Inheritance in Man® (OMIM®) database: Complete gene, molecular, and chromosomal location information

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