BRUE

(Brief, Resolved, Unexplained Event)

執筆者:Christopher P. Raab, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2023年 2月
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BRUE(brief, resolved, unexplained event)とは,乳児に生じたチアノーゼもしくは蒼白,呼吸異常,筋緊張異常,または反応性の変化のエピソードである。かつては同様の事象を指して,乳幼児突発性危急事態(apparent life-threatening event:ALTE)という用語が用いられていた。BRUEは特異的な疾患ではなく,条件を満たす事象に対して,ほかに原因が同定されない場合にのみ診断される。

BRUE(brief, resolved, unexplained event)は特異的な疾患ではなく,乳児において血行動態および反応性の変化が突然生じて,短時間続いてから消失したエピソードを指す用語である。

American Academy of Pediatricsの2016年版ガイドラインでは,ALTE(乳幼児突発性危急事態)がBRUEに置き換えられたが,このALTEという用語は,あまりにも広範で養育者を不安がらせるものであったと考えられ(1),不必要な検査の実施につながっていた可能性がある。BRUEの定義は以前の用語のそれとわずかに異なっており,その診断には,小児が1歳未満であること,その事象について可能性の高い原因がほかに認められないこと,ならびに養育者の認識ではなく,医師が事象の特徴を評価してその事象が生命を脅かすものであったと判断したことに基づく診断であることが必須とされている。

呼吸,意識,筋緊張,および/または皮膚色の変化がいくつか組み合わさった一過性の事象が乳児に起こることがある。これは養育者に危急を告げるほどの事態であり,養育者の中には生命を脅かす事象を目撃しているのではないかと恐れ,心肺蘇生(CPR)を開始することさえある。そのような乳児のごく少数には重大な基礎疾患があることが判明するものの,この種のエピソード後に健康そうに見える乳児のうち,大多数は再発することも合併症がみられることもなくそのまま正常に発達する(2)。

BRUEとは,1歳未満の乳児において以下の徴候の1つ以上を伴い持続は1分未満の事象を指す:

  • 呼吸休止,低呼吸,または不規則呼吸

  • チアノーゼまたは蒼白

  • 反応レベルの変化

  • 筋緊張の著明な変化(過緊張または低緊張)

また,乳児は他の点では健康にみえ,事象後には元の健康状態に戻っていることが必要である。よって,発熱,咳嗽,または何らかの苦痛の徴候もしくは他の異常がある乳児では,BRUEが生じたとはみなされない。

BRUEという用語は,基礎的原因が何もない(つまり「説明できない」)事象にのみ適用されるもので,徹底的な病歴聴取と身体診察およびときに検査と一定期間の経過観察後に初めてそう言える。同様の臨床像を呈しているものの,原因が同定された乳児に対しては,基礎にある原因に基づいてエピソードの診断を同定すべきである。

鑑別診断

BRUEは,その事象を説明しうる状況が何もない場合にのみ診断される。いくつかの疾患が呼吸,反応性,筋緊張,および/または皮膚色の同様の異常で顕在化する。したがって原因の検索が重要である。

可能性のある最も一般的な原因としては以下のものがある:

可能性のある比較的まれな原因としては以下のものがある:

原因は遺伝性または後天性のこともある。乳児の養育者が1人の場合で,明らかな病因がなくエピソードが反復する場合は,小児虐待を考慮すべきである。

参考文献

  1. 1.Tieder JS, Bonkowsky JL, Etzel RA, et al: Brief Resolved Unexplained Events (formerly Apparent Life-Threatening Events) and evaluation of lower-risk infants. Pediatrics 137(5):e20160590, 2016.doi: 10.1542/peds.2016-0590.Clarification and additional information.Pediatrics 138(2):e20161487, 2016.

  2. 2.McGovern MC, Smith MB: Causes of apparent life threatening events in infants: A systematic review. Arch Dis Child 89(11):1043–1048, 2004.doi: 10.1136/adc.2003.031740

BRUEの評価

BRUEとして定義された症状・徴候以外の症状・徴候を有する乳児の評価については,本マニュアルの別の箇所に記載されている(例えば,咳嗽発熱悪心および嘔吐痙攣,ならびに遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチを参照)。

病歴

初期評価では以下のような徹底的な病歴聴取を行う:

  • 当該事象を目撃した養育者による観察内容(特に,呼吸,色調,筋緊張,および眼に生じた変化;生じた音;持続時間;呼吸窮迫または筋緊張低下などの先行徴候の説明)

  • 行われた介入(例,優しい刺激,口対口呼吸,心肺蘇生[CPR])

  • 出生前(母親)または現在の養育者による薬物,タバコ,アルコール,または違法薬物の使用

  • 乳児の出生に関する情報(例,在胎期間,周産期合併症)

  • 哺乳状態(空嘔吐,咳嗽,嘔吐または体重増加不良があるかどうか)

  • 発育および発達歴(例,身長および体重のパーセンタイル,発達マイルストーン)

  • 最近の病気または外傷など,先行する事象

  • 感染症への最近の曝露

  • 同様の事象,早期死亡,QT延長症候群もしくは他の不整脈,または可能性のある原因疾患の家族歴

病歴で小児虐待を示唆する特徴は慎重に評価すべきである。虐待の懸念がある反復性の事象には,診察所見が病歴と一致せず,養育者がその場にいるときのみ発生するものなどがある。

退避は,一部には家族の能力とリソースによって決まるため,住居および家族状況,養育者の心配の程度,ならびにフォローアップのため医療機関をすでに受診しているか評価することが重要である。

身体診察

身体診察を行って,異常なバイタルサイン,呼吸器症状,明らかな形成異常および変形,神経異常(例,姿勢,適切ではない頭部後屈),および感染症または外傷の徴候(特に眼底検査での網膜出血など),ならびに身体的虐待の可能性を示す所見がないか確認する。

リスク分類

BRUE疑診例は,病歴と身体診察に基づいて低リスクまたは高リスクに分類される。

以下の基準を満たす場合,低リスクの乳児とする:

  • 年齢 > 60日

  • 出生時の在胎期間が32週以上および受胎後期間が45週以上

  • 初めての発症,BRUEの既往がない,かつ家族性がない

  • 訓練を受けた医療提供者による心肺蘇生を必要としない

  • 懸念される病歴を認めない(例,小児虐待の懸念,突然死の家族歴)

  • 正常な身体所見(例,発熱なし,正常血圧)

低リスク例には重篤な基礎疾患がある可能性が非常に低く,2016年版ガイドラインは養育者の教育以外の介入をほとんどまたは全く推奨していない。

低リスクの基準を満たさない乳児全例が高リスクの乳児に含まれる。現行のガイドラインには,高リスク例の評価および管理についての推奨が記載されていないため,評価および管理は乳児の病歴および所見に基づいて行うべきである。

検査

低リスクの乳児に対し,ガイドラインは最小限の検査を推奨している。救急診療部または医院で乳児を短期間観察し(パルスオキシメトリーによるモニタリングなど),12誘導心電図検査を行い,百日咳の確認のため鼻咽頭拭い液の検査(培養またはPCR)を行うことは妥当である。画像検査および血液検査など,他の検査は必要ではない。ルーチンの入院も必要ではないが,養育者の不安が強いか保育者が24時間中に乳児をフォローアップに連れて来られない場合,呼吸循環モニタリングのため乳児を入院させることもある。

高リスクの乳児には,臨床検査および画像検査を行い可能性のある原因を検索する。ルーチンに行われる検査もあれば,乳児にまだ症状がみられるか,または医学的介入が必要であるかなど,エピソードの特異的な病因の臨床的な疑いに基づいて行うべき検査もある(BRUEの高リスク例に対する検査の表を参照)。乳児はしばしば呼吸循環モニタリングのため入院するが,蘇生を必要とした場合または評価により何らかの異常が検出された場合は特に入院することが多い。

表&コラム
表&コラム

BRUEの治療

  • 養育者の教育

  • 綿密なフォローアップ

  • 原因が同定された場合はその治療

低リスクの乳児

親および養育者には,BRUEについて教育を受けさせ,乳児CPRおよび安全な保育についての訓練を勧めるべきである。在宅呼吸循環モニタリングは必要ではない。乳児は24時間以内に再評価を受けるべきである。

高リスクの乳児

原因が同定された場合は治療する。

在宅モニターの使用に関するガイドラインでは,在宅呼吸循環モニターをSIDSのリスクを低下させる戦略として用いるべきではないと述べられており,在宅呼吸循環モニターの使用でSIDSの発生率が低下するという効果は実証されていない(1)。親や養育者の中には在宅呼吸循環モニターの使用に固執する者もおり,そのようなモニターを使用することで親や養育者は安心感を得られる可能性がある。しかしながら,モニターを使用することで親や養育者が安全な睡眠に関するガイドラインに従うことに無関心になる可能性があるという懸念がある。在宅モニターの使用を選択する親または養育者にはカウンセリングを行い,在宅モニターは推奨される安全な睡眠のための対策に従うことの代用にはならないことを助言すべきである。また,親はCPRの講習を受けるべきである。

タバコ煙への曝露を排除する必要がある。

入院しなかった乳児は,24時間以内にかかりつけのプライマリケア医によるフォローアップを受けるべきである。

治療に関する参考文献

  1. 1.Moon RY, Carlin RF, Hand I, Task Force on Sudden Infant Death Syndrome: Evidence base for 2022 updated recommendations for a safe infant sleeping environment to reduce the risk of sleep-related infant deaths. Pediatrics 150(1):e2022057991, 2022.doi: 10.1542/peds.2022-057991

BRUEの予後

BRUEは無害であり,健康上のより重篤な問題または死亡の徴候ではないことが最も多い。BRUEが乳児突然死症候群(SIDS)の危険因子である可能性は低い(1)。SIDSの犠牲者の大半ではそれ以前に何の種類の事象もみられない。

高リスクの乳児における事象の予後は原因に依存する。例えば,原因が重篤な神経疾患の場合,死亡リスクは高くなる。評価および観察の後に原因が同定されない場合,そのような事象とSIDSとの関係は不明である。SIDSにより死亡した乳児の約4~10%にはそのような事象の病歴があり,2回以上みられた乳児のSIDSリスクは高くなる。また,事象を経験した乳児は,SIDSで死亡した乳児と同じ特徴を多く共有する。しかし,BRUEの発生率はSIDSの発生率とは異なり,Safe to Sleep® campaignに応じた低下はみられていない。

予後に関する参考文献

  1. 1.McGovern MC, Smith MB: Causes of apparent life threatening events in infants: A systematic review. Arch Dis Child 89(11):1043–1048, 2004.doi: 10.1136/adc.2003.031740

要点

  • BRUE(brief, resolved, unexplained event)とは,1歳未満の乳児に生じたチアノーゼもしくは蒼白,呼吸異常,筋緊張異常,または反応性の変化のエピソードであって,原因を同定することができず,かつ養育者の認識ではなく,その事象の医師による評価に基づき生命を脅かすものであったと判断されたものと定義される。

  • BRUEを呈する乳児は,病歴と身体診察に基づいて低リスクまたは高リスクに分類できる。

  • 低リスクの乳児における事象は,重篤な病態に起因する可能性は低く,最小限の評価しか必要としない。

  • 高リスクの事象には可能性のある多数の原因があるが,しばしば病因はみつからない。

  • 呼吸器疾患,神経疾患,感染症,心疾患,代謝性疾患,および消化管疾患のほか虐待も考慮すべきであり,臨床所見に基づいて検査を行う。

  • 診察所見または検査結果が異常であるか,または介入を要したあるいは気がかりな病歴がある乳児は入院させる。

  • 治療は原因に対して行う;在宅モニタリングを行ってもよいが,死亡率を低下させる効果は示されていない。

  • 予後は原因に依存する;神経疾患のある小児,2回以上の既往がある小児,非偶発的な外傷の既往がある小児,および生後6カ月以上で事象の持続時間が長い小児では死亡リスクが高く,心疾患を有す場合は特に高くなる。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. American Academy of Pediatrics: Guidelines for brief resolved unexplained events (formerly apparent life-threatening events) and evaluation of lower-risk infants (2016)

  2. Safe to Sleep®: Information for parents and caregivers about safe sleep practices for infants from the U.S. Department of Health and Human Services

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