筋強直性ジストロフィーは,まれな常染色体顕性(優性)の筋疾患である。2つの病型が知られている。両方とも随意筋が侵されるが,一方では不随意筋も侵される。症状は青年期または成人期早期に始まり,筋強直,筋力低下,四肢遠位筋および顔面筋の萎縮などがある。診断はDNA解析による。筋強直に対しては,膜安定化作用を有する薬剤が役立つが,多くの場合に患者の機能障害の原因となる筋力低下に対しては,治療法がない。
筋強直(ミオトニー)とは,筋収縮後の弛緩の遅れを指し,これにより筋の硬直が起きることがある。筋ジストロフィーとは,筋肉が正常な構造と機能を維持するのに必要な遺伝子の1つまたは複数の異常を原因とする遺伝性かつ進行性の筋疾患であり,筋生検でジストロフィー変化(例,筋線維の壊死および再生)が認められる。
筋強直性ジストロフィーは一般集団の約8000人当たり1人に発生する。遺伝形式は常染色体顕性(優性)であり,その浸透率は様々である。遺伝子座の異なる2つの病型が知られている。1型DM(DM1)には,19番染色体上に位置するDMPK遺伝子のCTGトリプレットリピートの伸長が関与している。より軽症の2型DM(DM2)には,染色体3q21.3にある細胞内核酸結合タンパク質の遺伝子CNBP(以前はZFN9として知られていた)のCCTGリピート伸長変異が関与している。
両病型とも随意筋が侵されるほか,DM1では不随意筋(例,消化管,子宮)も侵される。
先天性筋強直性ジストロフィー
筋強直性ジストロフィーの症状と徴候
筋強直性ジストロフィーの症状および徴候は青年期または成人期早期に現れ始め,筋強直(症状が現れない場合もあれば筋硬直と報告される場合もある筋収縮後の弛緩の遅れ),四肢遠位筋(特に手)と顔面筋(特に眼瞼下垂が多い)の筋力低下および筋萎縮,心筋症などがある。知的障害,白内障,および内分泌疾患も起こることがある。
DM1患者では,不随意筋が侵されるため,嚥下困難や便秘もみられることがあり,女性では子宮筋の異常により陣痛・分娩中に問題が生じることがある。
筋強直性ジストロフィーの診断
DNA変異解析
筋強直性ジストロフィーの診断は,特徴的な臨床所見,発症年齢,および家族歴から示唆され,DNA検査によって確定される。
筋強直性ジストロフィーの予後
呼吸器疾患および心疾患が最も頻度の高い死因であり,若年で不整脈および重度の筋力低下が発生した患者は若年死のリスクが高い。平均死亡年齢は54歳である。
筋強直性ジストロフィーの治療
膜安定化作用を有する薬剤
筋強直症は膜安定化薬(例,メキシレチン,ラモトリギン,カルバマゼピン,フェニトイン)に反応することがある。このうち,メキシレチンはジストロフィーでない筋強直症における筋強直を有意に軽減することが示されていることから,機能を制限する筋強直がある筋強直性ジストロフィー患者に対する第1選択薬となっている。メキシレチンは基礎疾患として心室性不整脈のある患者に対しまれに不整脈を誘発することがあるため,2度または3度の房室ブロック患者には禁忌である;メキシレチン療法開始前には心臓専門医へのコンサルテーションが推奨され,特に心電図異常のある患者では推奨される。
しかし,通常患者の機能を障害するのは筋強直ではなく,治療法のない筋力低下であり,疾患の進行に伴い,下垂足に対する装具が通常必要となる。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Muscular Dystrophy Association: Information on research, treatment, technology, and support for patients living with myotonic dystrophy
Muscular Dystrophy News Today: A news and information web site about muscular dystrophy