胎便性イレウスは,異常に粘稠度の高い胎便によって生じる回腸末端の閉塞であり,嚢胞性線維症の新生児で最もよく起こる。胎便性イレウスは,新生児の小腸閉塞の最大33%を占める。症状としては,胆汁性嘔吐,腹部膨隆,出生後数日間の胎便の排泄不全などがある。診断は臨床像およびX線検査に基づく。治療はX線透視下に行う希釈造影剤の注腸,および注腸が失敗した場合は手術による。
胎便性イレウスは,消化管分泌物が極めて粘稠となり腸管粘膜への接着性が増大する嚢胞性線維症の初期症状としてみられる場合が最も多い。嚢胞性線維症では,10~20%の症例で胎便性イレウスが最初の臨床症状となる。胎便性イレウスが生じた乳児の80~90%に嚢胞性線維症がみられる。
閉塞が回腸末端レベルで発生し(胎便栓症候群により生じる結腸閉塞とは異なる),出生前超音波検査によって診断されることがある。閉塞部より遠位では,結腸は狭小化し,中は空であるかまたは少量の乾燥した胎便の小塊が存在する。この比較的空で口径の小さい結腸は「microcolon」と呼ばれ,廃用により生じる。
胎便性イレウスの合併症
胎便性イレウスの症状と徴候
正常な新生児と異なり,胎便性イレウスの患児では生後12~24時間以内に胎便が排出されない。胆汁性のこともある嘔吐や腹部膨隆など,腸閉塞の徴候がみられる。膨張した小腸係蹄がときに腹壁を通して触知されることがあり,パン生地のような特徴的な感触がある。胎便性腹膜炎で呼吸窮迫および腹水を伴う場合は,二次的に穿孔を来している可能性がある。(1)。
症状と徴候に関する参考文献
1.Galante G, Freeman AJ: Gastrointestinal, pancreatic, and hepatic manifestations of cystic fibrosis in the newborn.Neoreviews 20(1):e12–e24, 2019.doi: 10.1542/neo.20-1-e12
胎便性イレウスの診断
単純X線
結果が陽性の場合,嚢胞性線維症の検査
出生前超音波検査は,嚢胞性線維症および胎便性イレウス(例,腸管拡張,羊水過多)を示唆する子宮内の変化を検出しうるが,このような変化は特異的ではない。
胎便性イレウスの診断は,腸閉塞の徴候がみられる新生児,特に嚢胞性線維症の家族歴がある場合に疑われる。患児には腹部X線検査を施行すべきであるが,拡張した腸係蹄が描出されるものの,液面像は欠如することがある。胎便に混じった小さな気泡による「シャボン玉」様または「すりガラス」様の像が,胎便性イレウスの診断に有用である。胎便性腹膜炎がある場合は,石灰化した胎便が腹膜表面や,陰嚢にまで斑状に認められることがある。水溶性造影剤による下部消化管造影により,回腸末端の閉塞を伴うmicrocolonが描出される。
胎便性イレウスと診断された患児は,嚢胞性線維症の検査を受けるべきである。
胎便性イレウスの治療
X線造影剤による注腸
ときに手術
ほかに合併症(すなわち,穿孔,捻転,閉鎖)がない症例では,希釈したX線造影剤(例,ガストログラフィン)にときにN-アセチルシステインを加えたものをX線透視下に少なくとも1回注腸することで,閉塞を軽減できる場合があるが,高浸透圧造影剤を使用した場合には,消化管からの多量の水分喪失のために輸液による水分補給が必要になることがある。
注腸によって閉塞が軽減しない場合は,開腹手術が必要となる。通常は,二連銃式回腸瘻造設術を施行し,N-アセチルシステインによる近位および遠位のループ洗浄を繰り返すことが,異常な胎便の溶解および除去のために必要である。