小児および青年における糖尿病

執筆者:Andrew Calabria, MD, The Children's Hospital of Philadelphia
レビュー/改訂 2022年 8月
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糖尿病にはインスリン分泌の欠乏(1型)または末梢のインスリン抵抗性(2型)が関連し,結果,高血糖が生じる。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および体重減少などがある。診断は血漿血糖値の測定による。治療は病型によって異なるが,血糖降下薬,食事,および運動などである。

(成人の糖尿病も参照のこと。)

小児の糖尿病の種類は成人のものと同様であるが,心理社会的な問題が異なり,これが治療を複雑にする。

1型糖尿病は小児で最も多くみられる型で,あらゆる人種の小児で新規例の3分の2を占める。最もよくみられる小児期慢性疾患の1つであり,18歳までの小児350人に1人の頻度で生じる;最近の発生率は特に5歳未満の小児で上昇している。1型糖尿病はあらゆる年齢で起こるが,典型的には4~6歳または10~14歳に発現する。

2型糖尿病はかつては小児でまれであったが,小児期の肥満の増加と並行して頻度が上昇している(小児の肥満を参照)。典型的には思春期後に発現し,15~19歳で最も高率にみられる(青年の肥満を参照)。

単一遺伝子異常による糖尿病は,若年発症成人型糖尿病(MODY)と以前言われていたもので,1型および2型でもないと考えられ(ときにそれらと間違えられるが),まれである(症例の1~4%)。

前糖尿病状態(prediabetes)とは,糖尿病の基準は満たさないものの,正常というには高すぎる中等度の血糖値上昇を示す耐糖能障害である。肥満の青年では,前糖尿病状態は一過性(60%で2年以内に正常に戻る)のことがあるが,特に体重増加が続く青年では糖尿病へと進行する場合がある。前糖尿病状態はメタボリックシンドローム(耐糖能障害,脂質異常症,高血圧,肥満)と関連がある。

小児および青年における糖尿病の病因

大半の患者は1型糖尿病または2型糖尿病に分類され,治療はこの区別に基づいて行われる。分類は,病歴(年齢,家族歴,体型),臨床像,および抗体検査などの臨床検査に基づいて行われる。しかしながら,この分類システムは患者の多様な臨床像を完全に捉えきれておらず,中には診断時に1型糖尿病または2型糖尿病に明確に分類できない患者もいる。1型糖尿病および2型糖尿病のいずれにおいても,遺伝因子および環境因子によりβ細胞機能が進行性に失われ,結果として高血糖が生じる。

1型糖尿病では,自己免疫性の膵β細胞破壊が原因で膵臓のインスリン産生が大部分,または完全に欠如しており,この破壊はおそらく遺伝的に感受性の高い集団が環境曝露を受けることによって誘発される。近親者では糖尿病リスクが上昇し(一般集団の約15倍),全発生率は4~8%(一卵性双生児では30~50%)である。1型糖尿病の患児は他の自己免疫疾患,特に甲状腺疾患およびセリアック病のリスクが高い。1型糖尿病に対する遺伝的感受性は,複数の遺伝子により決まる(60を超えるリスク遺伝子座が同定されている)。感受性遺伝子は一部の集団でより多くみられるため,特定の民族(例,スカンジナビア人,サルデーニャ人)では1型糖尿病の有病率が高い。

2型糖尿病では,膵臓はインスリンを産生するが,軽重様々な程度のインスリン抵抗性があり,インスリン抵抗性により増加した要求に応じるにはインスリン分泌が不十分となる(すなわち,相対的なインスリンの欠乏)。発症はしばしば,思春期の生理的なインスリン抵抗性のピークと一致し,以前は代償されていた高血糖症状が青年期に発現する。原因は自己免疫によるβ細胞の破壊ではなく,多数の遺伝子と環境因子との複雑な相互作用であり,これは集団や患者間で異なる。

2型糖尿病は1型糖尿病とは異なるが,小児における2型糖尿病は成人における2型糖尿病とも異なる。小児では,β細胞機能の低下および糖尿病関連合併症の発症が加速する。

2型糖尿病の危険因子としては以下のものがある:

  • 肥満

  • アメリカ先住民,黒人,ヒスパニック系,アジア系アメリカ人,および太平洋諸島系

  • 家族歴(60~90%に2型糖尿病の第1度または第2度近親者がいる)

単一遺伝子異常による糖尿病は,常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の遺伝子異常により発生するため,典型的には患者の家族に別の罹患者がいる。1型糖尿病および2型糖尿病とは異なり,自己免疫性のβ細胞の破壊またはインスリン抵抗性はない。発症は通常は25歳より前である。

小児および青年における糖尿病の病態生理

1型糖尿病では,インスリンの欠乏によって高血糖および骨格筋での糖利用障害が起こる。筋肉および脂肪が,エネルギーを供給するために分解される。脂肪分解によってケトンが生成され,ケトンはアシデミアおよびときに重大な生命を脅かすアシドーシス(糖尿病性ケトアシドーシス[diabetic ketoacidosis:DKA])を引き起こす。

2型糖尿病では通常,診断時にはDKAを防ぐ十分なインスリン機能があるが,小児はときに初診時にDKA(最大25%)または比較的まれではあるが高血糖高浸透圧状態(hyperglycemic hyperosmolar state:HHS)(非ケトン性高浸透圧高血糖症候群[hyperosmolar hyperglycemic nonketotic syndrome:HHNK]とも呼ばれ,重度の高浸透圧性脱水が起こる)を呈していることがある。高血糖高浸透圧状態(HHS)はストレスまたは感染期間に治療レジメンを遵守しなかった際,または糖代謝が薬剤(例,コルチコステロイド)によってさらに障害された場合に起こることが多い。2型糖尿病の診断時にはインスリン抵抗性と関連する他の代謝障害もみられる可能性があり,具体的には以下のものがある:

動脈硬化が小児期および青年期に始まり,心血管疾患のリスクが著しく高まる。

単一遺伝子異常による糖尿病では,病因となる異常はその遺伝子異常の種類により異なる。最も多い種類は,膵β細胞機能を制御する転写因子における異常によって起こる(例,hepatic nuclear factor 4-α[HNF-4-α],hepatic nuclear factor 1-α [HNF-1-α])。このような種類では,インスリン分泌は障害されるが欠如しているわけではなく,インスリン抵抗性はみられず,高血糖は年齢とともに悪化する。単一遺伝子異常による糖尿病にはグルコースセンサーであるグルコキナーゼにおける異常によって起こるものもある。グルコキナーゼの異常の場合,インスリン分泌は正常であるがブドウ糖値は高めのセットポイントで制御されているため,空腹時高血糖が生じ,年齢とともにわずかに悪化する。

パール&ピットフォール

  • 一般に誤解されがちであるが,糖尿病性ケトアシドーシスは2型糖尿病患児でも起こりうる。

小児および青年における糖尿病の症状と徴候

1型糖尿病では,初期の臨床像は無症候性の高血糖から生命を脅かす糖尿病性ケトアシドーシスまで多様である。ただし,最もよくみられるのはアシドーシスを伴わない症候性の高血糖であり,数日~数週間にわたって続く頻尿,多飲,および多尿を伴う。多尿は夜間頻尿や昼間遺尿として現れることがあり,トイレトレーニングをしていない小児では,おむつの濡れる回数の増加や重いおむつに親が気づくこともある。約半数の小児は異化亢進の結果として体重が減少し,成長も障害される。疲労,筋力低下,カンジダ性発疹,霧視(水晶体および硝子体の高浸透圧状態に起因する),および/または悪心と嘔吐(ケトン血症に起因する)が最初にみられることもある。

2型糖尿病の臨床像は非常に多彩である。小児はしばしば症状がないか,あっても最小限であり,ルーチンの検査で初めて病気が検出される場合もある。しかしながら,一部の小児は重症の臨床像を呈し,症状を伴う高血糖,HHS,または一般的な誤解に反して,DKAがみられることもある。

小児の糖尿病の合併症

糖尿病性ケトアシドーシスが1型糖尿病と判明している患者でよくみられる;毎年約1~10%の患者に発症するが,これは通常,インスリン投与を行わないことが原因である。DKAの他の危険因子として,DKAの既往歴,困難な社会的状況,うつ病または他の精神疾患,併発疾患,およびインスリンポンプの使用(カテーテルの屈曲や抜去,注入部位炎症によるインスリン吸収不良,またはポンプの故障のため)などが挙げられる。医師は教育,カウンセリング,および支援を提供することによって,危険因子の影響を最小にするよう援助する。

精神衛生上の問題が糖尿病の患児およびその家族で非常によくみられる。患児の最大半数が抑うつ,不安を来すかまたは他の心理的問題を有する。摂食症は,青年における深刻な問題であり,体重をコントロールしようとインスリン投与をときに抜かす。心理的問題によって,患児が食事および/または薬剤レジメンを遵守できなくなり,血糖コントロールが不良になることがある。ソーシャルワーカーおよび精神医療専門家(集学的チームの一員として)は,血糖コントロール不良の心理社会的原因を同定し軽減するのを助けることができる。

血管系合併症が小児期に臨床的に明らかになることはまれである。しかし,1型糖尿病では初期の病理学的変化および機能異常が発症から数年後にみられる場合がある;長期的な血糖コントロール不良は,血管合併症の最大の長期的な危険因子である。微小血管系の合併症として,糖尿病性腎症糖尿病網膜症および糖尿病性神経障害などがある。微小血管合併症は,1型糖尿病より2型糖尿病の小児に多く,2型糖尿病では診断時または疾患経過早期にみられる可能性がある。神経障害は糖尿病の罹病期間が長期(5年以上)でコントロール不良の患児(糖化ヘモグロビン[HbA1c]が10%を超える)でより多くみられるが,罹病期間が短くコントロールが良好な幼児でも起こることがある。大血管系の合併症として,冠動脈疾患末梢血管疾患,および脳卒中などがある。

小児および青年における糖尿病の診断

  • 空腹時血漿血糖値 ≥ 126mg/dL(≥ 7.0mmol/L)

  • 随時血糖値 ≥ 200mg/dL(≥ 11.1mmol/L)

  • 糖化ヘモグロビン(HbA1c)≥ 6.5%(≥ 48 mmol/mol)

  • ときに経口ブドウ糖負荷試験

(診断に関する推奨については,American Diabetes Associationによる2022年版小児および青年の糖尿病における診療基準とInternational Society for Pediatric and Adolescent Diabetes[ISPAD]による2018年版小児および青年の糖尿病に関するガイドラインも参照のこと。)

小児の糖尿病の診断

糖尿病および前糖尿病状態の診断は成人のものと同様であり,典型的には空腹時または随時血糖値(血漿値)および/またはHbA1c値を用いて,また症状の有無に応じて診断される( see table 糖尿病および耐糖能障害の診断基準)。糖尿病の古典的症状の存在と血糖測定値で糖尿病と診断されることがある。測定値は随時血漿血糖値 200mg/dL[11.1mmol/L]以上または空腹時血漿血糖値 126mg/dL[7.0mmol/L]以上である;空腹時とは8時間カロリー摂取のない状態と定義する。

他の基準により糖尿病と診断できる場合は,経口ブドウ糖負荷試験の必要はなく,行うべきではない。必要な場合は,ブドウ糖1.75g/kg(最高75g)を水に溶解したものを用いて負荷試験を行うべきである。この検査は,無症状または軽症か非定型的症状のある小児で役立つ可能性があり,2型糖尿病または単一遺伝子異常による糖尿病の疑い例でも役立つ。

2型糖尿病の診断には典型的にはHbA1cの基準がより有用であり,高血糖を確認すべきである。HbA1cによるスクリーニングは2型小児糖尿病の診断に一般的に用いられるが,検査結果の利用には注意が必要である。HbA1cをスクリーニング検査として推進するデータは成人から得られたものであり,小児の血糖異常(前糖尿病または糖尿病)を同定するには感度が低いことから,その妥当性に疑問を呈した研究もいくつかある。異常ヘモグロビン症(例,鎌状赤血球症)の小児では,別の測定法(例,フルクトサミン)を考慮すべきである。

表&コラム
表&コラム

初期評価および検査

糖尿病が疑われるが状態不良には見えない患者には,初回の検査に電解質および血糖値などの基本的な生化学検査,および尿検査を含めるべきである。状態不良の患者では,検査に静脈血または動脈血ガス,肝機能検査,およびカルシウム,マグネシウム,リン,およびヘマトクリット値も含めるべきである。

糖尿病型の診断

糖尿病の型を確定するため,以下の追加検査を行うべきである:

  • C-ペプチドおよびインスリン値(インスリン未投与の場合)

  • HbA1c値(未施行の場合)

  • 膵島細胞タンパク質に対する自己抗体検査

自己抗体にはグルタミン酸脱炭酸酵素,インスリン,インスリノーマ関連タンパク質,および亜鉛トランスポーター(ZnT8)抗体が含まれる。新たに1型糖尿病と診断された患者の90%以上にこのような自己抗体が少なくとも1つみられる;一方で,自己抗体の欠如は2型糖尿病を強く示唆する。しかし,表現型が2型糖尿病の患児のうち約10~20%に自己抗体がみられ,1型糖尿病と再分類される;そのような患児はインスリン療法を必要とする可能性がより高く,他の自己免疫疾患を発症するリスクがより高いためである。

単一遺伝子異常による糖尿病は,1型および2型糖尿病と治療が異なるため,認識することが重要である。診断は,糖尿病の濃厚な家族歴があるが2型糖尿病の典型的特徴を欠く小児で考慮すべきである;つまり,軽度の空腹時高血糖(100~150mg/dL[5.55 ~ 8.32mmol/L])または食後高血糖のみで,より年少で肥満はなく,自己抗体もインスリン抵抗性の徴候(例,黒色表皮腫)もみられない小児である。単一遺伝子異常による糖尿病の確定診断のために遺伝子検査が利用可能である。単一遺伝子糖尿病のうち数種類は年齢とともに進行する可能性があるため,本検査は重要である。

合併症および他の疾患の検査

1型糖尿病患者には,他の自己免疫疾患の検査として,セリアック病抗体,ならびに甲状腺刺激ホルモン,サイロキシン,および甲状腺抗体の測定を行うべきである。その後は1~2年毎に甲状腺疾患およびセリアック病の検査を行うべきである。1型糖尿病の小児にはその他の自己免疫疾患がみられることもあり,その例として原発性副腎皮質機能低下症(アジソン病),リウマチ性疾患(例,関節リウマチ,全身性エリテマトーデス,乾癬),その他の消化管疾患(例,炎症性腸疾患,自己免疫性肝炎),および皮膚疾患(例,白斑)などが挙げられるが,ルーチンのスクリーニングは必要ない。

2型糖尿病患者には,肝機能検査,空腹時脂質プロファイル,および尿中微量アルブミン:クレアチニン比を診断時に検査すべきである;そのような患児(合併症が何年もかけて発生する1型糖尿病とは異なり)では,しばしば脂肪肝,高脂血症,および高血圧などの併存疾患が診断時にみられるためである。合併症を示唆する臨床所見のある小児も以下について検査すべきである:

糖尿病のスクリーニング

リスクのある無症状の18歳以下の小児では,HbA1cの測定による2型糖尿病および前糖尿病状態のスクリーニングを行うべきである。この検査はまず10歳時または思春期開始時(10歳より早く思春期が始まった場合)に行い,その後3年毎に繰り返すべきである。

リスクのある小児には,過体重の小児(年齢および性別毎のBMI[body mass index]が85パーセンタイル超,または身長別体重が85パーセンタイル超)や以下のうち2つ以上に該当する小児などが含まれる:

小児および青年における糖尿病の治療

  • 食事および運動

  • 1型糖尿病の場合,インスリン

  • 2型糖尿病の場合,メトホルミンおよびときにインスリンまたはリラグルチド

(診断に関する推奨については,American Diabetes Associationによる2022年版小児および青年の糖尿病における診療基準とInternational Society for Pediatric and Adolescent Diabetes[ISPAD]による2018年版小児および青年の糖尿病に関するガイドラインも参照のこと。)

小児期および青年期における集中的な教育および治療は,血糖値を正常化しつつ低血糖エピソード数を最小限に抑え,合併症の発症および進行を予防するまたは遅延させるという治療目標の達成に有用である。

不良な血糖コントロールおよび高い入院率は,特定の社会経済的因子と関連している。糖尿病治療技術の進歩により,ケアの質と血糖コントロールが改善されたにもかかわらず,全ての患者に便益があるわけではなく,低所得層および非ヒスパニック系黒人の小児は,血糖コントロール不良のため依然として合併症および望ましくない転帰のリスクが高い。健康に関連する社会的因子(例,社会経済的地位,近隣および物理的環境,食糧環境,医療,社会的状況)は,1型糖尿病の小児において至適な血糖コントロールを維持する能力にも影響を及ぼす可能性がある。

生活習慣の改善

患者全例に便益のある生活習慣の改善には以下のものがある:

  • 規則的に一定量を食べる

  • 精製炭水化物および飽和脂肪の摂取を控える

  • 身体活動の増加

一般に,ダイエット(diet)という語は避け,食事計画(meal plan)または健康に良い食べ物選び(healthy food choices)の方が望ましい。コレステロールおよび飽和脂肪が少ない,心臓に良い食事を推奨することが主に中心となる。

1型糖尿病では,basal–bolusレジメンの一般化およびカーボカウント(親が次の食事の炭水化物量を推定し,その量を用いて食前のインスリン用量を計算する)の普及が食事療法に変化をもたらしている。この柔軟なアプローチでは,食物摂取は厳格に規定されていない。代わりに食事療法は,小児が遵守する可能性の低い理論的に最適な食事ではなく,通常の食事パターンに基づいており,インスリン用量は実際の炭水化物摂取量に合わせる。インスリン:炭水化物比は患者ごとに個々に決められるが,患者の年齢,活動レベル,思春期発来の状況,および初回診断からの経過期間によって異なってくる。技術の進歩により,インスリン投与の精度の高い調節と,投与の個別化が可能となった。年齢に応じた経験的法則として:

  • 出生~5歳:インスリン1単位/炭水化物30g

  • 6~12歳:インスリン1単位/炭水化物15g

  • 青年:インスリン1単位/炭水化物5~10g

2型糖尿病では,患者に体重を減らしインスリン感受性を高めるよう推奨すべきである。3~13歳の小児が必要とするカロリーを決める経験的法則は,1000カロリー +(100×年齢[年])である。食事を改善しカロリー摂取を管理する簡単な手順には以下のものがある:

  • 糖分を含む飲料および精製された単糖を含む食品(例,キャンディや高果糖コーンシロップ)を除去する

  • 食事を抜かさないようにする

  • 1日を通して間食を避ける

  • 1人分の量をコントロールする

  • 家庭での高脂肪,高カロリー食を制限する

  • 果物および野菜を多く食べ,食物繊維の摂取量を増やす

血糖およびHbA1cの目標値

目標血漿血糖値 see table 1型糖尿病の小児および青年の血糖およびHbA1cの目標値)は,血糖値正常化の必要性と低血糖のリスクとのバランスをとって設定される。ハネムーン期以降の患者(すなわち,β細胞機能がもはや残っていない患者)は,正常範囲(70~180mg/dL[3.9~10mmol/L])の血糖値を50%以上かつ正常範囲より低い値を10%未満とするようにすべきである。

治療の目標は,患者の年齢,糖尿病罹病期間,糖尿病治療用医療機器(例,インスリンポンプ,持続血糖モニタリング)の利用可否,併存症,および心理社会的環境に基づいて個別化すべきである。無自覚性低血糖のある小児または低血糖症状を認識できるほど成長していない小児における低血糖のリスクは,治療目標を達成するための積極的な試みを制限しうる。このような患者には,HbA1c目標値をより緩く(7.5%[58mmol/mol]未満)設定することを考慮すべきであり,より厳しい目標値(6.5%[48mmol/mol]未満)は,重大な低血糖および健康への悪影響を来すことなくこの値を達成できる選択された患者のみを対象とすべきである。

青年期および若年成人期のHbA1c低値は血管系合併症のリスク低下と関連していることもあり,合併症を減少させる目的で,小児および青年における1型糖尿病のHbA1c目標値は年々引き下げられている。大半の小児にとってHbA1c目標値7%(53mmol/mol)未満は適切であるが,多くの小児および青年はこの目標に達していない。

自己血糖測定回数を増やすこと(1日最大6~10回)または持続血糖測定(continuous glucose monitoring:CGM)システムを使用することによりHbA1c値を改善できるが,これは,患者が食事とインスリンとの調整をより適切に行えるようになり,高血糖値をより良好に補正できるようになり,おそらく低血糖をより早く認められるようになって過剰な補正(低血糖の治療として過剰に炭水化物を摂取し,このため高血糖になる)を防げるためである。適切に使用すれば,インスリン療法と組み合わせた間歇スキャン式CGMを,自己血糖測定の代わりに利用できる。

HbA1c値は,血糖値が正常範囲内にとどまる時間の割合(time-in-range)とよく相関する。time-in-rangeは,一般にインスリンレジメンの効果を評価するための治療目標としてHbA1c値と組み合わせて用いられる。time-in-rangeの10%の変化は,HbA1cの約0.8%ポイントの変化に相当する。例えば,80%のtime-in-rangeはHbA1c値5.9%(41mmol/mol)に,70%は6.7%(50mmol/mol)に,60%は7.5%(58mmol/mol)に,40%は9%(75mmol/mol)に対応する(1)。

CGMでは,time-in-rangeに加えて,センサーグルコース値の平均,time-above-range(血糖値 > 180mg/dL[10mmol/L]となる時間の割合)およびtime-below-range(血糖値 < 70mg/dL[3.9mmol/L]となる時間の割合),血糖変動,グルコース管理指標,ならびにアドヒアランスに関連する情報(例,CGMの作動時間,装着日数)が得られる。

直近の14日間の使用から算出したCGMの測定値をHbA1c値と併せて用いることが推奨される。CGMデータは標準化されたフォーマットで報告できる。AGP(ambulatory glucose profile)は,平均グルコース値,time-in-rangeおよびtime-below-rangeに関する標準化されたレポートである。AGPを使用して血糖値をモニタリングする場合,血糖コントロールの目標として,time-in-rangeを70%超,time-below-rangeを4%未満とするとともに,目標HbA1c値が7%未満(53mmol/mol未満)に設定される。もう1つのレポートはglucose management indicator(グルコース管理指標)であり,これはCGMの平均グルコース値(14日以上のデータが望ましい)から算出した推定HbA1c値である。

小児および青年における2型糖尿病のHbA1c目標値は,1型糖尿病の目標値と同じで7%(53mmol/mol)未満である。1型糖尿病と同様,2型糖尿病における目標空腹時血糖値は130mg/dL(7.2mmol/L)未満とすべきである。HbA1cおよび/または空腹時血糖の目標値を達成できない小児は,強化療法(例,インスリン,リラグルチド)の候補となる。糖尿病の罹病期間が比較的短い患者,および生活習慣への介入またはメトホルミン単独での治療により有意な減量を達成できる患者では,より厳格なHbA1c(6.5%[48mmol/mol]未満)および空腹時血糖(110mg/dL[6.1mmol/L]未満)の目標値を考慮してもよい。

表&コラム
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1型糖尿病のインスリンレジメン

インスリンは,1型糖尿病管理の基本である。利用可能なインスリン製剤は,成人で使用されるものと同様である( see table ヒトインスリン製剤の作用発現,ピーク,および持続時間*)。インスリンは,食前に投与すべきであるが,いずれの食事でも摂取量の予測が難しい幼児は例外とする。必要な用量は,患者の年齢,活動レベル,思春期発来の状況,および初回診断からの経過期間によって異なる。初期診断から数週間以内では,残存β細胞の機能により,多くの患者で一時的にインスリン必要量が減少する(ハネムーン期)。このハネムーン期は数週から最長2年まで続く可能性があり,その後インスリン必要量は典型的には0.7~1単位/kg/日となる。思春期の間は,思春期のホルモン値上昇によるインスリン抵抗性に対抗するため,より高用量(最高1.5単位/kg/日まで)を要する。

インスリンレジメンの種類としては以下のものがある:

  • basal-bolusレジメンによる1日複数回注射(multiple daily injections:MDI)レジメン

  • インスリンポンプ療法

  • 用量固定型のMDIレジメンまたは混合型インスリンレジメン(比較的まれ)

1型糖尿病の患者の多くは,代謝コントロールの改善を目的とした集中的なインスリンレジメンの一環として,MDIレジメン(基礎インスリンと食事インスリンを1日3~4回注射)またはインスリンポンプ療法を受けるべきである。

basal-bolusレジメンが一般的に望ましいMDIレジメンである。本レジメンでは,インスリン1日基礎用量を投与し,その後予想される炭水化物摂取量および測定した血糖値に基づいて各食事前に速効型インスリン用量を補充する。基礎用量として,持効型インスリン(グラルギン,デテミル,またはデグルラク)1日1回の注射(低年齢児ではときに12時間毎)に加え,超速効型インスリン(通常アスパルトまたはリスプロ)を追加でボーラス投与する。グラルギン,デグルラク,またはデテミル注射は,一般的に夕食時または就寝時に行い,速効型インスリンと混合してはならない。

インスリンポンプ療法では,皮下に配置されたカテーテルを介して超速効型インスリン(CSII)が皮下に持続注入され,この場合の基礎インスリンの送達速度は一定のこともあれば変動することもある。食事時のボーラスおよび補正インスリンのボーラスもインスリンポンプを介して送達される。基礎用量は,食事と食事の間および夜間の血糖値を範囲内に留めるのに役立つ。基礎用量の投与にインスリンポンプを使用することにより最大限の柔軟性が得られる;ポンプは昼夜を通して,様々な時間に様々な速度で投与するようプログラムできる。

インスリンポンプ療法は,血糖コントロール,安全性,および患者満足度の面でMDIレジメンより有益な可能性があるため,小児での利用が増加している。この治療法は典型的には幼児(歩き始めの幼児,未就学児)に選択され,これを使用する多くの小児で概してコントロールが改善する。小児によっては,ポンプの装着を不便に感じたり,カテーテル留置部位にびらんや感染が生じたりすることもある。脂肪細胞の肥大(lipohypertrophy)の発生を回避するため,注射部位およびポンプを付ける部位をローテートする必要がある。lipohypertrophyは,皮下に脂肪組織のかたまりが蓄積した状態である。このかたまりはインスリン注射を繰返し行なった部位に生じ,インスリンの持続的な吸収を妨げるため,血糖値の変動を引き起こす可能性がある。

より用量の固定されたMDIレジメン もあるが,あまり一般的には使用されていない。これは,basal–bolusレジメンが選択肢ではない場合(例,家族がより簡単なレジメンを必要とする,患児または親が針恐怖症である,昼食時の注射を学校または保育所で投与できないなどのため)に考慮される。このレジメンでは,通常朝食前,夕食前および就寝時にNPH(neutral protamine Hagedorn)インスリンを投与し,朝食前および夕食前に超速効型インスリンを投与する。NPHおよび超速効型インスリンは混合可能なため,本レジメンはbasal–bolusレジメンより注射回数が少ない。ただし,このレジメンは柔軟性が低く,食事と軽食を毎日決まった時間にとる必要があるため,これに代わって低血糖のリスクがより低いインスリンアナログのグラルギンとデテミルが主流になっている。

混合型インスリンレジメンは,70/30(70%インスリンアスパルト プロタミン/30%レギュラーインスリン)または75/25(75% インスリンリスプロ ロタミン/25%インスリンリスプロ)製剤を用いる。混合型インスリンレジメンは良い選択ではないが,簡単であり,注射回数が少なくなるためアドヒアランスが向上する可能性がある。1日2回所定の用量を投与するが,1日総量の3分の2を朝食時,3分の1を夕食時に投与する。しかし,混合型インスリンレジメンは食事時間および食事量の観点から柔軟性が劣り,固定された用量比のため他のレジメンに比べて正確ではない。

医師は,血糖コントロールを最良にし長期の血管系合併症リスクを低減するため,小児と家族が遵守できる最も強力な管理プログラムを用いるべきである。

1型糖尿病合併症の管理

低血糖は,強化インスリンレジメンによる治療を受けている小児で,危険かつ最もよくみられる合併症である。大半の小児が週に数回,軽度の低血糖状態となり,速効性の炭水化物15g(例,ジュース120mL,グルコース錠,飴,グラハムクラッカー,またはグルコースゼリー)により自己治療を行っている。

重度の低血糖は炭水化物またはグルカゴンの投与に他人の助けを要するエピソードと定義されるが,毎年約30%の患児に起こり,大半の患児は18歳までにそのようなエピソードを経験する。炭水化物の経口投与も行われるが,低血糖による中枢神経系の症状(例,行動変化,錯乱,思考困難)により飲食が妨げられる場合,グルカゴン1mg筋肉内投与が通常用いられる。無治療の場合,重度の低血糖により痙攣もしくは昏睡または死亡に至る場合さえある。リアルタイム持続血糖測定装置は,血糖値が設定範囲未満に低下するか,または急速な低下が生じた場合に警報が鳴るため,無自覚性低血糖の小児に役立つことがある(血糖値およびHbA1cのモニタリングを参照)。

ケトン尿/ケトン血症は,併発疾患によって起こることが最も多いが,十分なインスリン投与がなされていないまたは投与を抜いた場合にも起こり,DKA切迫の警告にもなりうる。ケトンの早期検出が,DKAへの進行を防ぎ救急部門受診または入院の必要性を最小とするのに重要であることから,患児およびその家族はケトン試験紙を用いて尿中または毛細血管血中のケトンをチェックするよう指導を受けるべきである。若年の小児で,DKAが繰り返し生じる場合,およびインスリンポンプを使用している場合または尿検体の採取が難しい場合,血中ケトン検査が望ましい。状態が不良な場合(血糖値とは無関係に)または血糖値が高い(典型的には240mg/dL[13.3mmol/L]を超える)場合には,常にケトン検査を行うべきである。中等量から多量の尿中ケトンまたは1.5mmol/Lを超えるの血中ケトンが存在する場合はDKAが示唆され,腹痛,嘔吐,眠気,または速い呼吸もみられる場合は特にDKAが示唆される。尿ケトンまたは血中ケトンが少量の0.6~1.5mmol/Lである場合も対処しなければならない。

ケトンが存在する場合は一般的に1日総用量の10~20%の速効型インスリンを2~3時間毎にケトンが消失するまで追加で投与する。また,脱水を防ぐため水分を追加投与すべきである。状態不良時および/または高血糖の際にケトンを測定し水分とインスリンを追加投与するこのようなプログラムは,不調日管理(sick-day management)と呼ばれている。ケトンが増加するまたは4~6時間後に消失しない,もしくは臨床状態が悪化する(例,呼吸窮迫,嘔吐の持続,精神状態の変化)場合,かかりつけの医師に電話するか救急部門を受診するよう親に指導すべきである。

2型糖尿病の管理

1型糖尿病と同様に,生活習慣の改善と併せて栄養の改善および身体活動の増加が重要である。

より重症の糖尿病(HbA1c > 9%[> 75mmol/mol]または糖尿病ケトアシドーシス合併)患児では,インスリンを開始する;グラルギン,デテミル,または混合インスリンが使用できる。アシドーシスがない場合は,メトホルミンを通常同時に開始する。治療の最初の数週間は,内因性インスリン分泌が増加するためインスリン必要量が急激に減少することがある;インスリンは許容可能な代謝コントロールが得られた数週間後にしばしば中止できる。

メトホルミンは,インスリン抵抗性改善薬で,18歳未満の患者を対象に承認されている唯一の経口血糖降下薬である。その他の成人で使用される経口薬が有益となる青年もいるが,そのような薬剤はより高価であり,若年者での使用に関するエビデンスは限定的である。メトホルミンは低用量で開始し,悪心や腹痛を予防するために食後に服用すべきである。典型的な開始量は500mgの1日1回,1週間の経口投与であり,最高用量の1000mgの1日2回投与となるまで毎週500mgずつ3~6週間かけて増量する。この治療の目標は,HbA1cを少なくとも7%(53mmol/mol)未満,できれば6.5%(48mmol/mol)未満とすることである。メトホルミン単独では目標に到達できない場合,基礎インスリンまたはリラグルチドを開始すべきである。残念なことに,2型糖尿病の青年の約半数は最終的にメトホルミン単剤療法がうまくいかずインスリンを必要とする。メトホルミンと基礎インスリンの2剤併用療法で患者が目標値を達成できない場合は,食事時の超速効型インスリンを追加することがある。

リラグルチドおよび徐放性エキセナチドはグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬であり,10歳以上の2型糖尿病患者に対する使用が承認されており,HbA1c値の低下に役立つ可能性がある。これらの薬剤はインスリン以外の注射用血糖降下薬で,グルコース依存性インスリン分泌を増強し,胃内容排出を遅延させる。リラグルチドは0.6mg,1日1回,皮下投与から開始し,十分なコントロールが得られるまで週1回0.6mgずつ増量し,最大1.8mg,1日1回までとすることができる。徐放性エキセナチドの用量は2mg,皮下注射,週1回であるため,患者のアドヒアランスが改善する可能性がある。両剤とも体重減少を促進するが,これは胃排出遅延および食欲減退の作用による可能性が高い。GLP-1作動薬の最も頻度が高い有害作用は消化管に対するもので,特に悪心および嘔吐がよくみられる。リラグルチドおよびエキセナチドメトホルミンに耐えられない場合に使用するか,メトホルミン単独で3カ月以内にHbA1cの目標値を達成できない場合に追加で使用することができる。リラグルチドおよびエキセナチドは,2型糖尿病の強化療法の一環として,インスリンの代わりにまたはインスリンと併用して用いることができる。

単一遺伝子異常による糖尿病の治療

単一遺伝子異常による糖尿病の管理は個別化され,サブタイプによって異なる。グルコキナーゼサブタイプは,長期合併症リスクがないため,一般に治療を必要としない。hepatic nuclear factor 4-αおよびhepatic nuclear factor 1-α型を有する大半の患者はスルホニル尿素薬に感受性があるが,最終的にインスリンが必要になる場合もある。メトホルミンなどの他の経口血糖降下薬は典型的には効果がない。

血糖値およびHbA1c値のモニタリング

ルーチンのモニタリングには以下のものがある:

  • 指先採血による1日複数回の血糖検査または持続血糖測定

  • 3カ月毎のHbA1c測定

1型糖尿病では,血糖コントロールを最適化するため,自己血糖測定器で1日6~10回血糖値を測定するか,または持続血糖測定(CGM)システムを用いるべきである。従来的に,血糖値は,毎食前および夜間軽食前に指先採血により測定すべきとされている。夜間低血糖が懸念される場合(例,低血糖または日中の激しい運動のため,またはインスリン用量が増量された場合)は,夜間(午前2時から3時前後)にも血糖値をチェックすべきである。運動は最高24時間まで血糖値を降下しうるため,患児が運動するまたはより活動的である日はより頻回に血糖値をチェックすべきである。低血糖を予防するため,活動の増加が予想される場合は,炭水化物摂取量を増やすか,インスリン用量を減らす。高血糖または疾病時には不調日管理(sick-day management)を用いるべきである。

親は,血糖値,インスリン投与時間および投与量,炭水化物摂取量,身体活動,および他の関連因子(例,疾病,遅い軽食,インスリン投与忘れ)などの血糖コントロールに影響しうる全因子の詳細な日記をつけるべきである。

2型糖尿病患者は通常,1型糖尿病患者ほど頻繁な血糖値の自己測定は必要ないが,その頻度は用いる薬物療法の種類によって異なる。小児および青年がインスリン注射を1日に複数回受けている場合,状態不良の場合,ならびにコントロールが不十分な場合は,血糖値を少なくとも1日3回モニタリングすべきである。メトホルミンおよび持効型インスリンのみによる規則的なレジメンを使用しており,低血糖を起こすことなく目標を達成している患者では,モニタリングの頻度を減らすことができ,その場合典型的には1日2回(空腹時および食後2時間)である。1日頻回注射のインスリンレジメンを使用している2型糖尿病の小児および青年が,ときに持続血糖測定システムを使用することもある。

2型糖尿病では,血糖値を定期的に測定すべきであるが,一般的に1型糖尿病より少なくてよい。血糖自己測定の頻度は,患者の空腹時と食後の血糖値,達成可能と思われる血糖コントロールの程度,利用可能なリソースに基づき個別化すべきである。モニタリング頻度は,血糖コントロールの目標が達成されていない,疾病に罹患中,または低血糖もしくは高血糖の症状を自覚した場合に増やすべきである。目標値が達成されたら,自宅での検査は週に数回の空腹時と食後血糖測定まで制限される。

1型糖尿病および2型糖尿病で,インスリン使用中または代謝コントロールが不十分な場合,HbA1c値を3カ月毎に測定すべきである。それ以外の場合は,2型糖尿病では年に2回の測定でよいが3カ月毎が最適である。

持続血糖測定(continuous glucose monitoring:CGM)システムは,血糖値を測定する一般的な方法であり(60%以上の小児が使用している),一部の患者ではルーチンの血糖自己測定の代わりに使用できる。これは,より洗練された効果的なモニタリングアプローチであり,皮下センサーで間質液中のグルコース濃度を1~5分毎に測定し,その測定値を血中グルコース濃度(血糖値)に変換することで,グルコース濃度の変動をより厳密に検出し,その変動に対しリアルタイムで対応できる。CGMシステムは,無線により結果をモニタリングディスプレイ装置(インスリンポンプに組み込まれている場合もあれば,別個の装置の場合もある)に送ることもある。CGMシステムは,高血糖が持続している時間および低血糖のリスクが高まっている時間を同定することによって,1型糖尿病患者がより安全に血糖目標に達することを助けるものである。

現在,リアルタイムCGMと間歇スキャン式CGMという,2種類のCGMシステムが利用できる。リアルタイムCGMは2歳以上の小児に使用できる。このシステムは,リアルタイムで連続的な血糖値データを自動的にユーザーに送信し,アラートおよびアラーム機能を有するほか,血糖値データを受信機,スマートウォッチ,またはスマートフォンに送信する。最大の便益を得るには,リアルタイムCGMを可能な限り毎日使用すべきである。間歇スキャン式CGMは,4歳以上の小児に使用できる。リアルタイムCGMと同じ種類のグルコースデータが得られるが,情報を得るために使用者が意図的にセンサーをスキャンする必要があり,アラートやアラームはない。間歇スキャン式CGMは,頻繁に(少なくとも8時間に1回の頻度で)使用すべきである。CGM装置を使用する小児は,モニターを較正したり症状と測定値が一致しない場合に測定値を確認したりするために,指先採血による血糖測定ができなければならない。

リアルタイムCGMは間歇スキャン式CGMと比較して,HbA1c値を低下させ,time-in-rangeの割合を増加させ,低血糖のリスクを低下させるのに役立つ。

CGM装置はいずれのレジメンでも使用できるが,一般的にはインスリンポンプ使用者が装着している。インスリンポンプと併用する場合,この併用療法はセンサー付きポンプ療法(sensor-augmented pump therapy)と呼ばれる。この治療法では,CGMの結果に基づいてインスリン用量を手動で調整する必要がある。あるいは,CGMシステムがポンプと一体化されている装置もあり,この場合,グルコース値が設定した閾値を下回ると,基礎投与を一時的に(2時間まで)中止できる。このような統合システムを使用すれば,センサー付きポンプ療法以上に低血糖イベントの発生を減らすことができる。

クローズドループ式インスリンポンプは,2歳以上の小児に使用できる。このようなハイブリッドクローズドループシステムでは,スマートフォンなどの機器に搭載されている精密なコンピュータアルゴリズムにより血糖管理が自動化されており,インスリンポンプに接続されたCGMセンサーにより血糖値が判定されインスリン投与量が調節される。CGMによる測定値に応じた基礎インスリンの中止,増量,または減量により,薬剤の送達がコントロールされる。現在のハイブリッドクローズドループシステムは,使用者が食事や間食の際にボーラス投与を行う必要があるため,真の意味で自動化されているわけではない。このようなシステムは,インスリン投与量をより厳密に調節し,高血糖および低血糖のエピソードを制限する上で有用である。完全に自動化されたクローズドループシステムは,ときに2ホルモン(インスリンとグルカゴン)対応人工膵臓(bihormonal artificial pancreas)と呼ばれるが,現在も評価が続けられており,市販はされていない。

糖尿病合併症のスクリーニング

患者は糖尿病の型に応じて,定期的に合併症のスクリーニングを受ける( see table 小児の糖尿病合併症のスクリーニング)。合併症が認められた場合,その後の検査はより頻回に行う。

表&コラム
表&コラム

診察またはスクリーニングで検出された合併症は,まず生活習慣の是正により治療する:運動の増加,食習慣の変更(特に飽和脂肪の摂取制限),および禁煙(該当する場合)。生活習慣の是正に反応せず,再検査検体で微量アルブミン尿(アルブミン/クレアチニン比30~300mg/g)が認められるか,または血圧上昇(年齢相応の血圧の90~95パーセンタイルを超える,または青年の場合は130/80mmHg以上)が持続する小児は,一般的に降圧薬を必要とし,その場合アンジオテンシン変換酵素阻害薬が最もよく使用される。脂質異常症の患児では,生活習慣の是正にもかかわらず低比重リポタンパク質(LDL)コレステロールが160mg/dL(4.14mmol/L)を超える,または130mg/dL[3.37mmol/L]を超えかつ心血管系危険因子が1つ以上ある状態が続く場合,10歳以上ではスタチン系薬剤を考慮すべきであるが,長期の安全性は確立されていない。

治療に関する参考文献

  1. 1.Beck RW, Bergenstal RM, Cheng P, et al: The relationships between time in range, hyperglycemia metrics, and HbA1c.Diabetes Technol Ther 13(4):614–626, 2019. doi: 10.1177/1932296818822496

要点

  • 1型糖尿病は膵β細胞への自己免疫による攻撃により生じ,インスリンの完全な欠乏が起こる;新規小児例の3分の2を占め,いずれの年齢でも起こりうる。

  • 2型糖尿病は多数の遺伝因子および環境因子(特に肥満)の複雑な相互作用によるインスリン抵抗性ならびに相対的インスリン欠乏によって生じる;小児での頻度が増えており,思春期後に起こる。

  • 大半の小児にアシドーシスを伴わない症候性の高血糖,数日~数週間の頻尿,多飲,および多尿がみられる;1型糖尿病およびまれに2型糖尿病の患児は糖尿病性ケトアシドーシスを呈することがある。

  • 2型糖尿病および前糖尿病状態のリスクのある無症状の小児に対し,スクリーニングを行う。

  • 1型糖尿病の患児全例でインスリン療法が必要である;徹底した血糖コントロールは長期合併症の予防に役立つが低血糖エピソードのリスクが増大する。

  • 持続血糖測定システムなどの糖尿病に関する技術の進歩は,低血糖エピソードを減少させつつ血糖コントロールを改善することを目的としている。

  • 2型糖尿病の患児は,最初にメトホルミンおよび/またはインスリンにより治療される;診断時にインスリンを必要とする大半の小児はメトホルミン単剤療法へ移行することができるものの,約半数は最終的にインスリン療法を必要とする。

  • リラグルチドは,血糖コントロールを改善するためにメトホルミンと併用できる。

  • 糖尿病の小児には精神衛生上の問題がよくみられ,血糖コントロール不良と関連する可能性がある。

  • インスリン用量は,頻回な血糖モニタリングおよび予想される炭水化物摂取量と活動レベルに基づいて調節する。

  • 小児は糖尿病による微小血管症および大血管症のリスクがあり,そのような合併症の有無を定期的なスクリーニング検査により調べる必要がある。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. American Diabetes Association: 14. Children and Adolescents: Standards of Medical Care in Diabetes-2022

  2. International Society for Pediatric and Adolescent Diabetes (ISPAD): Clinical practice consensus guidelines for diabetes in children and adolescents (2018)

  3. International Society for Pediatric and Adolescent Diabetes (ISPAD): Clinical practice consensus guidelines 2018: Glycemic control targets and glucose monitoring for children, adolescents, and young adults with diabetes

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