まれではあるが,異常な頸管粘液によって,精子の進入が阻害されるか,精子の破壊が増大するために,妊孕性が損なわれることがある。
(不妊症の概要も参照のこと。)
正常では,月経周期の卵胞期にエストラジオール値が上昇することにより,頸管粘液は,粘稠度が高く進入しにくい状態から,粘稠度が低く伸びのある状態へ変化するよう刺激を受ける。
頸管粘液が異常である場合には以下の可能性がある:
排卵前後も精子が進入できないままとなる
腟内細菌が増え易くなることで(例,子宮頸管炎による)精子の破壊が促進される
精子に対する抗体が含まれる(まれ)
過去の子宮頸部上皮内腫瘍に対する治療により,慢性子宮頸管炎または子宮頸管狭窄症を有する女性を除き,異常な粘液により妊孕性が著しく損なわれることはまれである。
頸管粘液の異常の診断
診察により,子宮頸管炎や子宮頸管狭窄症の有無を調べる
内診を行い,子宮頸管炎や子宮頸管狭窄症がないか調べる。頸管からの滲出液(膿性または粘液膿性)または頸管の脆弱性から子宮頸管炎が疑われる場合は,淋菌感染症およびクラミジア感染症の検査のために頸管擦過検体を採取する。直径1~2mmのゾンデが子宮腔まで入らなければ,頸管の完全狭窄と診断する。
生存精子の有無を調べる頸管粘液の性交後検査(以前は不妊症の評価時にルーチンで行われていた)は,結果がその後の妊娠率と相関しないため,現在では有用と考えられていない。
頸管粘液の異常の治療
子宮頸管炎を認める場合,抗菌薬
ときに頸管狭窄に対する頸管拡張
ときに子宮内精子注入法または体外受精
治療には子宮内精子注入および体外受精が含まれることがある。しかしながら,これらいずれの治療も頸管粘液の異常がみられる女性に効果的であるか否かは証明されていない。
粘液を薄める薬剤(例,グアイフェネシンなど)の使用が,妊孕性を改善するというエビデンスはない。