不妊症の概要

執筆者:Robert W. Rebar, MD, Western Michigan University Homer Stryker M.D. School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 9月
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不妊症とは通常,定期的かつ避妊なしの性交を1年間続けても妊娠できないことと定義される。

不妊症は,世界保健機関(World Health Organization:WHO)によって疾患として定義されている。

頻回の避妊なしの性交により,3カ月以内にカップルの50%,6カ月以内に75%,そして1年以内に90%が妊娠に至る。

不妊症の理由は以下の通りである:

妊娠できないことにより,不安,悲しみ,失望,怒り,罪悪,恨み,および力不足といった感情がしばしば生じる。

妊娠を望むカップルには,最も受胎する可能性の高い時期(排卵前の6日間で,特に直前の3日間)に,頻回に性交を行うように勧める。排卵は次の月経開始日の約14日前に起こる可能性が最も高い。

月経周期が規則的な女性では,朝の基礎体温(BBT)を毎日測定することで,排卵が起きている時期を判断するのに役立つ。体温の低下は,排卵が間近であること示唆する;0.5℃以上の上昇は,排卵が起きたばかりであることを示唆する。しかし,排卵時期を判断するには,市販されている黄体形成ホルモン(LH)予測検査キット(周期半ばのLHサージを同定するもの)がおそらく最良の方法であり,基礎体温の測定よりもかかる時間が少ない。基礎体温は,女性にLH予測検査キットを購入する余裕がない場合や入手ができない場合に有用となりうる。定期的に性交を行っているカップルにおいて,排卵時期を判断する検査によって妊娠の可能性が高まるというエビデンスはない。

カフェイン摂取,喫煙,またはアルコール摂取が過剰になると妊孕性を損なう可能性があり,勧められない。

45歳以上の男性は,それよりも若い男性と比べて,女性パートナーの年齢にかかわらず妊孕性が低いというエビデンスが増えつつある。

流産(自然流産)を繰り返すことは不妊症ではないが,その結果は同じである。

不妊症の評価

  • 疑われる原因に応じた検査

American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Gynecologic Practice's and American Society for Reproductive Medicine's Infertility Workup for the Women’s Health Specialistも参照のこと。)

妊娠を試みて1年以上経っても妊娠に至らない場合には,パートナー両方を評価する。評価は,病歴聴取,診察,およびカウンセリングから始める。男性では精子異常について,女性では排卵と卵管の機能障害および骨盤内病変について評価する。

以下の場合には1年よりも早い時点で評価を行う:

  • 女性が35歳以上の場合

  • 卵巣予備能の低下が既知の女性(例,片方の卵巣しかないため)

  • 女性の月経が不規則な場合

  • 女性の子宮,卵管,または卵巣に既知の異常がある場合

  • 男性の生殖能力が低いとわかっている,または男性に生殖能力低下のリスクがある場合

疑われる原因に応じて検査を行う(例,卵巣予備能低下に対しては卵胞刺激ホルモンおよび抗ミュラー管ホルモンの測定,ならびに経腟超音波検査による胞状卵胞数の測定;精子異常に対しては精液検査)。

カップルのための支援団体(例,Family EqualityRESOLVE)が助けとなりうる。妊娠する可能性が低い場合(通常女性が35歳未満であっても3年以上の不妊期間後,または2年以上の治療後に確定される)には,医師は養子縁組について話し合うべきである。

不妊症の治療

  • 主な原因の治療

  • ときに排卵または精子形成を誘発する薬剤投与

  • ときに生殖補助医療

可能であれば男性および女性の不妊の主な原因を治療する。例えば,生殖器の構造的異常(例,精索静脈瘤,子宮平滑筋腫)または内分泌異常(例,下垂体腺腫,甲状腺疾患)は治療可能である。患者には,是正可能な危険因子を最小限にするための行動変容を奨励すべきである。例えば,喫煙者は禁煙する,過体重の場合には減量する,アルコール摂取はやめるか控え目にする,バランスのとれた食事を(必要であればビタミンも一緒に)摂ることなどが推奨される。

一般に,治療は質の高い卵母細胞(例,排卵誘発,卵子提供)や精子(例,精子形成を誘導するゴナドトロピン薬,精子提供)の利用可能性を高めること,および受精を達成するために卵母細胞と精子の接触を補助する方法(例,子宮内人工授精,体外受精)を用いることにより,受胎の可能性を改善することに向けられる。

不妊症であることによって,悲しみ,不安,欲求不満,精神的ストレス,無力感,罪悪感,怒りなどの感情を経験することがある。これらの感情は,睡眠または摂食障害,不安症やうつ病へとつながる可能性がある。必要であれば,カウンセリングおよび行動健康面での支援を提供すべきである。

治療プロセスに関する情報をパートナー両者に提供することが助けになる。そのような情報としては以下のものがある:

  • 成功の可能性はどれくらいか

  • プロセスはどのようなものか(時間と費用を含む)

  • いつ治療が終わるか

  • いつ養子縁組を考慮すべきか

不妊症の人のための支援団体(例,Family EqualityRESOLVE)が助けとなりうる。妊娠する可能性が低い場合(通常女性が35歳未満であっても3年以上の不妊期間後,または2年以上の治療後に確定される)には,医師は養子縁組について話し合うべきである。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Family Equality: This organization aims to promote equality for LGBTQ (lesbian, gay, bisexual, transsexual or transgender, and queer and/or questioning) families and to provide information about building families.The web site includes information about becoming pregnant, (including costs) and about adoption, parenting, and legal issues pertaining to the LGBTQ community.

  2. RESOLVE: The National Infertility Association: This web site provides general information about infertility, possible treatments and solutions (such as adopting or using a surrogate), and financial issues, as well as links to support groups, ways to manage stress, and advice for friends and family.It also includes resources to help LGBTQ+ people have children.

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