卵巣予備能の低下は,生殖障害を引き起こす卵子の量や質の低下である。
(不妊症の概要も参照のこと。)
卵巣予備能は30歳またはさらに早くから低下し始めることがあり,40歳以降は急速に低下する。卵巣病変または以前の卵巣の手術によっても予備能は低下する。加齢は卵巣予備能低下の危険因子であるが,年齢および卵巣予備能低下はそれぞれ,不妊,さらに不妊治療への反応不良に関する独立した予測因子である。ただし,卵巣予備能の低下は妊娠が不可能であることを意味するわけではない。
卵巣予備能の低下の診断
スクリーニングには,卵胞刺激ホルモン(FSH)およびエストラジオール値
抗ミュラー管ホルモン(AMH)値および/または胞状卵胞数(AFC)
(Practice Committee of the American Society for Reproductive MedicineおよびAmerican Society for Reproductive MedicineのTesting and interpreting measures of ovarian reserve: A committee opinionも参照のこと。)
女性が以下の場合に,卵巣予備能の低下に関する検査を検討する:
35歳以上である
卵巣の手術を受けたことがある
外因性ゴナドトロピンによる卵巣刺激法などの治療に対する反応が不十分である
FSHまたはエストラジオール値の測定は,卵巣予備能の低下に対するスクリーニング検査として有用である。月経周期3日目のFSH値が10mIU/mLを超える,またはエストラジオール値が80pg/mL以上である場合に,卵巣予備能の低下が示唆される。しかし現在のところ,卵巣予備能の低下の診断にはAMH値およびAFCが最良の検査である。
AMH値は卵巣機能低下の信頼できる早期の予測因子である。AMH低値(< 1.0ng/mL)の場合,体外受精(IVF)後の妊娠率が低いことが予測される;値が低すぎて検出できない場合には妊娠はまれである。
AFCは卵胞期の初期に両側卵巣で2~10mm(中間直径)と測定される卵胞の総数である;AFCは経腟超音波検査中の観察により決定される。AFCが少ない(3~10)場合,IVF後の妊娠の可能性が低い。
卵巣予備能の低下の治療
排卵誘発
ときに提供卵子の使用
妊娠がまだ可能なことがあるため,卵巣予備能の低下の治療は女性の状況および年齢に基づき個別化して行われる。排卵誘発が行われることがある。
女性が42歳以上,または卵巣予備能の低下と診断されている場合には,利用可能であれば提供卵子を用いた生殖補助が必要な可能性がある。
要点
卵巣予備能は30歳またはさらに早くから低下し始めることがあり,40歳以降は急速に低下する。
卵巣予備能低下の検査は,FSHまたはエストラジオール値の測定により開始し,診断を確定するためには抗ミュラー管ホルモン(AMH)値および/または胞状卵胞数(AFC)を測定する。
女性が42歳以上,または卵巣予備能が低下している場合には,提供卵子を利用した生殖補助医療を考慮する。