子宮内避妊器具 (IUD)

執筆者:Frances E. Casey, MD, MPH, Virginia Commonwealth University Medical Center
レビュー/改訂 2023年 7月
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米国では避妊法を用いる女性の12%が子宮内避妊器具(IUD)を使用している。IUDは効果が高い,副作用が最小限であるなどのその避妊法としての利点のために,普及している。またIUDの交換は3年,5年,8年,または10年毎のみに必要であり,毎日,毎週,または毎月の避妊の必要がなくなる。

米国で入手可能なIUDには,レボノルゲストレル放出IUDおよび銅付加子宮内避妊器具などがある。

レボノルゲストレル放出IUDには以下のものがある:

  • 13.5mgのIUD(14μg/日)は3年間有効で,3年間の累積妊娠率は1.0%である(1)。

  • 19.5mgのIUD(17.5μg/日)は5年間有効で,5年間の累積妊娠率は0.9~1.4%である。

  • 2種類の52mgのIUD(最初は20μg/日,5年後に10μg/日まで減少)は8年間有効であり,8年間の累積妊娠率は0.5~1.1%である(2,3)。

子宮内避妊器具は10年間有効である;12年間の累積妊娠率は2%未満である(4)。子宮内避妊器具の比較の表を参照のこと。

表&コラム
表&コラム

IUDの挿入

患者が子宮頸癌スクリーニングを受ける時期でなければ,IUD挿入前にパパニコロウ(Pap)検査またはヒトパピローマウイルス(HPV)検査を行う必要はない。IUD挿入前の性感染症(STI)(淋菌およびクラミジア感染症)検査は,「リスクに基づく」スクリーニング(年齢25歳以下,複数のセックスパートナー,コンドーム使用が一貫していない,および/または性感染症の既往)に基づいて行うべきである(5)。ただし,医師はIUD挿入前にSTI検査の結果を待つ必要はない。結果が陽性であれば適切な抗菌薬で治療すべきである;IUDは挿入したままにする。予定するIUD挿入の直前に膿性の子宮頸管分泌物がみられる場合は,IUDを挿入せず,STI検査を行う;そして感染症が認められれば治療し,感染症の治療完了後にIUDを挿入する。

挿入の手技を確認するために,挿入前に使用するIUDの添付文書を読むべきである。IUDを挿入する際には可能な限り無菌操作により行う。子宮の位置を同定するために双合診を行うべきであり,子宮を安定させるために,頸部前唇に支持鉗子で把持し,子宮軸を真直ぐにし,IUDを正しく留置できるようにすべきである。IUD挿入前に子宮腔の長さを測定するために,ゾンデが使用されることがある。挿入時の痛みを軽減するため,挿入前に傍頸管ブロックを使用してもよい(6)。

過去1カ月間に避妊なしの性交がなければ,IUDは月経周期のいつでも挿入することができる。

IUD挿入後のルーチンのフォローアップ受診は必要ない。患者には,症状や合併症(例,痛み,多量の出血,異常な腟分泌物,発熱,脱出)を来した場合や,避妊法に不満がある場合には,評価のため再受診するよう指導すべきである(7)。

第1または第2トリメスター中の中絶または自然流産の直後,および帝王切開または経腟分娩で胎盤娩出直後に,IUDを挿入することができる。

禁忌

大部分の女性はIUDを使うことができる。禁忌としては以下のものがある:

IUDの禁忌とならない条件としては以下のものがある:

  • エストロゲン含有の避妊薬に対する禁忌(例,静脈血栓塞栓症の既往,35歳以上の女性で15本/日を超える紙巻タバコの喫煙,前兆のある片頭痛,35歳以上の女性でのあらゆる病型の片頭痛)

  • PID,STI,または異所性妊娠の既往

  • 母乳栄養

  • 青年期の女性

  • 中絶に関する患者の個人的信条(緊急避妊に用いられるまたは52mgレボノルゲストレル放出IUDは胚盤胞の着床を妨げ,viableな妊娠を終了させる可能性があるものの,IUDは人工妊娠中絶器具でないため)

有害作用

レボノルゲストレル放出IUD挿入後の最初の数カ月間は,性器出血はしばしば不規則である。その後,最大20%の女性で1年以内に出血が完全に止まる;この作用をIUDの便益と考える患者もいる。

銅付加子宮内避妊器具では月経血が増え,より重度の痙攣性の痛みが起こることがあり,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID;例,イブプロフェン)で緩和できる。

この情報がどのタイプのIUDを選択するかの判断に役立つことがあるため,IUD挿入前にこれらの影響について女性に伝えるべきである。

想定される便益

レボノルゲストレル放出IUDは子宮内膜がんおよび卵巣がんのリスク低下と関連している。これらが乳癌のリスクを上昇させるかどうかについては,データは相反している(8)。

過去7日以内に避妊なしの性交があった場合は,銅付加子宮内避妊器具または52mgレボノルゲストレル放出IUDを緊急避妊として挿入することがある。

合併症

挿入後1年以内のIUDの平均排出率は通常5%未満である;しかしながらIUDが分娩直後(10分未満)に挿入された場合には排出率が高くなる。挿入後6週間時点で医師はIUDの尾(典型的には外子宮口から3cmのところで切る)を確認することで,正しく留置されていることを確認する。

IUD挿入の約1/1000で子宮穿孔が起こる。穿孔は典型的にはIUD挿入時に起こる。ときに,IUDの遠位部分だけが貫通する;その後数カ月間で子宮収縮によりIUDが腹腔に押し出される。内診中にIUDの尾が見えない場合は,医師が以下の1つ以上を行うことがある:

  • サイトブラシを用いて尾を子宮頸管にさっと出すことを試みる

  • IUDを子宮内腔または子宮筋層へさらに押し出さないように注意しながら,IUDフック,ゾンデ,または生検器具を用いて子宮腔を愛護的に検索する(妊娠が疑われる場合を除く)

  • 超音波検査を行う;超音波ガイド下でワニ口鉗子を使用してもよい(9)

IUDを認めない場合はIUDの腹腔内迷入を除外するため,腹部X線撮影を行う。腹腔内のIUDは腸管癒着の原因となることがある。子宮を穿孔したIUDは腹腔鏡にて除去する。

排出または穿孔が疑われる場合は,他の避妊法を用いるべきである。

まれではあるが,挿入時に細菌が子宮腔に入ることにより挿入後1カ月の間に卵管炎(骨盤内炎症性疾患[PID])が起こる;しかしながら,そのリスクは低く,ルーチンの予防的抗菌薬投与の適応とはならない。PIDが発生した場合は,抗菌薬を投与すべきである。抗菌薬投与にかかわらず感染が持続する場合を除いて,IUDを抜去する必要はない。IUDの尾により,細菌感染が起きやすくなることはない。挿入後1カ月の間を除いて,IUDが骨盤内炎症性疾患のリスクを上昇させることはない。

感染症状のない女性においてPap検査で放線菌(Actinomyces)様微生物が検出された場合は,抗菌薬もIUD抜去も不要である。

IUDは効果的に妊娠を予防するため,IUD使用者では避妊手段を用いない女性に比べ,異所性妊娠の発生率がはるかに低い。しかしながら,IUD挿入中に女性が妊娠した場合,異所性妊娠のリスクが高く,速やかに評価を受けるべきであることを女性に伝えるべきである。

参考文献

  1. 1.Nelson A, Apter D, Hauck B, et al: Two low-dose levonorgestrel intrauterine contraceptive systems: a randomized controlled trial [published correction appears in Obstet Gynecol 123(5):1109, 2014]. Obstet Gynecol 122(6):1205-1213, 2013.doi:10.1097/AOG.0000000000000019

  2. 2.Jensen JT, Lukkari-Lax E, Schulze A, et al: Contraceptive efficacy and safety of the 52-mg levonorgestrel intrauterine system for up to 8 years: findings from the Mirena Extension Trial. Am J Obstet Gynecol 227(6):873.e1-873.e12, 2022.doi:10.1016/j.ajog.2022.09.007

  3. 3.Creinin MD, Schreiber CA, Turok DK, et al: Levonorgestrel 52 mg intrauterine system efficacy and safety through 8 years of use.Am J Obstet Gynecol 227(6):871.e1-871.e7, 2022.doi:10.1016/j.ajog.2022.05.022

  4. 4.Long-term reversible contraception.Twelve years of experience with the TCu380A and TCu220C. Contraception 56(6):341-352, 1997.

  5. 5.Grentzer JM, Peipert JF, Zhao Q, et al: Risk-based screening for Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae prior to intrauterine device insertion. Contraception 92(4):313-318, 2015.doi:10.1016/j.contraception.2015.06.012

  6. 6.Mody SK, Farala JP, Jimenez B, et al: Paracervical block for intrauterine device placement among nulliparous women: A randomized controlled trial, Obstet Gynecol 132 (3): 575–582, 2018.doi: 10.1097/AOG.0000000000002790

  7. 7.Curtis KM, Jatlaoui TC, Tepper NK, et al: U.S. Selected Practice Recommendations for Contraceptive Use, 2016.MMWR Recomm Rep 65 (4):1–66, 2016.doi: 10.15585/mmwr.rr6504a1

  8. 8.Jareid M, Thalabard JC, Aarflot M, et al: Levonorgestrel-releasing intrauterine system use is associated with a decreased risk of ovarian and endometrial cancer, without increased risk of breast cancer: Results from the NOWAC Study.Gynecol Oncol 149 (1), 127–132, 2018, doi.org/10.1016/j.ygyno.2018.02.006

  9. 9.Prabhakaran S, Chuang A: In-office retrieval of intrauterine contraceptive devices with missing strings. Contraception 83(2):102-106, 2011.doi:10.1016/j.contraception.2010.07.004

要点

  • IUDは非常に効果的な避妊法であり,全身作用は最小限で,選ぶIUDの種類によって3,5,8,10年毎に1度のみ交換する必要がある。

  • 種類としては,レボノルゲストレル放出IUD(効果の持続期間は種類に応じて3~8年間)や銅付加子宮内避妊器具(効果の持続期間は10年間で,12年間の妊娠率は2%未満)などがある。

  • 患者が子宮頸癌スクリーニングを受ける時期でなければ,IUD挿入前にPapまたはHPV検査は必要ない。

  • いずれの種類のIUDも月経出血に影響を与えうることを女性に知らせる(レボノルゲストレル放出IUDでは無月経およびT380 IUDでは月経血の増加およびより重度の痙攣性の痛みの可能性)。

  • IUDの留置後に合併症(例,痛み,多量の出血,異常な腟分泌物,発熱,脱出)を来した場合には評価のため再受診するよう患者を指導する。

  • 内診時に尾を認めない場合は,サイトブラシを用いて尾を子宮外にさっと出すことを試みるか,IUDフック,ゾンデ,または生検器具で愛護的に子宮腔を検索し(妊娠が疑われる場合を除く),必要であれば超音波検査または腹部X線撮影を行って,IUDの位置を調べる。

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