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原発性腟がんはまれであり，米国において婦人科がんの1％を占める。腟原発の腫瘍よりも，腟への遠隔転移や隣接する婦人科臓器からの局所進展の方が頻度が高い。診断時の平均年齢は60～65歳である。
腟がんの危険因子としては以下のものがある：
腟上皮内腫瘍（VAIN）
子宮内でのジエチルスチルベストロールへの曝露
大半の腟がんはヒトパピローマウイルス（HPV）の持続感染により発生する。胎児期子宮内におけるジエチルスチルベストロール曝露は，まれに腟明細胞腺癌の素因となる；診断時の平均年齢は19歳である。
原発性腟がんは大半（95％）が扁平上皮癌であるが，そのほかには原発性および続発性の腺癌，続発性の扁平上皮癌（高齢女性），明細胞腺癌（若年女性），黒色腫などがある。最も頻度の高い腟肉腫はブドウ状肉腫（胎児性横紋筋肉腫）である；発生のピークは3歳である。
大半の腟がんは腟後壁の上3分の1に生じる。これらは以下のように拡がることがある：
直接進展（局所の傍腟組織，膀胱，または直腸などへ）
腟下部の病変から鼠径リンパ節を経由して
腟の上部の病変から骨盤リンパ節を経由して
血行性に
腟がんの症状と徴候
腟がんの大半の患者で月経間期に異常性器出血が生じ，それはしばしば閉経後，性交後である。一部の患者には，水様性帯下や性交痛も現れる。無症状の患者も少数いて，病変はルーチンの内診時またはパパニコロウ（Pap）検査異常の評価時に発見される。
膀胱腟瘻や直腸腟瘻は進行時の症状である。
腟がんの診断
生検
生検が通常，診断に有用であるが，ときに広範囲局所切除が必要である。
腟がんでは主に身体診察，内視鏡検査（膀胱鏡検査，直腸鏡検査），胸部X線撮影（肺転移について），および通常はCT（腹部または骨盤部の転移に対して）の結果に基づいて，臨床的に進行期を診断する（腟がんのFIGO進行期分類の表を参照）。生存率は進行期により異なる。
腟がんのFIGO進行期分類
進行期 | 説明 | 5年生存率* |
|---|---|---|
I期 | 腟に限局している | 75～95％ |
II期 | 傍腟組織に浸潤しているが，骨盤側壁には浸潤していない | 50～80％ |
III期 | 骨盤壁または腟の下3分の1まで進展しているか，水腎症または無機能腎を認める；鼠径リンパ節転移の有無は問わない | 30～60％ |
IV期 | 小骨盤外に進展しているか，膀胱または直腸粘膜に浸潤しているか，遠隔転移（肺または骨）を認める；周囲のリンパ節への転移の有無は問わない | 15～50％ |
* 原発腫瘍が大きいか低分化型である場合は予後不良である。 | ||
Based on staging established by the International Federation of Gynecology and Obstetrics (FIGO): Adams TS, Rogers LJ, Cuello MA: Cancer of the vagina: 2021 update. Int J Gynaecol Obstet 155 Suppl 1:19–27, 2021.doi: 10.1002/ijgo.13867 | ||
腟がんの治療
腟の上部3分の1に限局しているI期の腫瘍には，子宮摘出術，腟切除術，およびリンパ節郭清術のほか，ときに放射線療法
他の大半の患者には放射線療法
腟の上部3分の1に限局しているI期の腫瘍は，広汎子宮全摘出術，上部腟切除術，および骨盤リンパ節郭清術に加えて，ときに放射線療法を施行することで治療できる。
他の大半の原発性腟がんには放射線療法が行われ，通常は外照射と密封小線源治療が併用される。膀胱腟瘻や直腸腟瘻のために放射線療法が禁忌の場合は，骨盤除臓術を行う。
要点
腟がんは，HPV感染または子宮内でのジエチルスチルベストロールへの曝露が原因である。
危険因子としては子宮頸部または外陰の前がん状態またはがんがある：
大半の患者で異常な性器出血が生じる。
通常は生検により診断する；ときに広範囲局所切除が必要である。
腟の上部3分の1に限局した腫瘍は，子宮摘出術と腟切除術および骨盤リンパ節郭清術，ときにその後の放射線療法により治療し，その他の腫瘍の大部分は放射線療法により治療する。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし，本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
National Cancer Institute: Vaginal Cancer: This web site provides links to information about causes, prevention, and treatment of vaginal cancer, as well as links to information about screening and supportive and palliative care.
