子宮肉腫

執筆者:Pedro T. Ramirez, MD, Houston Methodist Hospital;
Gloria Salvo, MD, MD Anderson Cancer Center
レビュー/改訂 2022年 7月
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子宮肉腫は,子宮体部から発生し,悪性度が高く,互いに性格の異なる一群の腫瘍である。一般的な症状としては,異常子宮出血,骨盤痛,骨盤腫瘤などがある。子宮肉腫が疑われる場合,子宮内膜生検または頸管拡張・内膜掻爬を施行できるが,結果はしばしば偽陰性となる;多くの肉腫は子宮摘出術または筋腫核出術後に組織学的に診断される。治療には通常,腹式子宮全摘出術および両側卵管卵巣摘出術が必要である;進行がんでは化学療法のほか,ときに放射線療法も適応となる。

米国では子宮肉腫はまれである;2018年に5058例の子宮肉腫が発生すると推定されていた。子宮肉腫は全子宮体がんの約3~7%を占める(1)。

子宮肉腫の危険因子としては以下のものがある:

  • 骨盤照射歴

  • タモキシフェンの使用

子宮肉腫には以下のものがある:

  • 平滑筋肉腫(最も頻度が高い組織型[63%])

  • 子宮内膜間質肉腫(21%)

  • 未分化子宮肉腫

まれな子宮間葉系肉腫の組織型としては以下のものがある:

  • 腺肉腫

  • 血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa)

  • 横紋筋肉腫

癌肉腫は,かつては肉腫に分類されていたが,現在は悪性度の高い上皮性腫瘍(癌腫)とみなされ,そのように治療されている。

高悪性度の子宮肉腫は血行性に転移する傾向にあり,肺に転移することが最も多い;リンパ節転移はまれである。

総論の参考文献

  1. 1.Mbatani N, Olawaiye AB, Prat J: Uterine sarcomas.Int J Gynaecol Obstet 143 Suppl 2:51–58, 2018.doi: 10.1002/ijgo.12613

子宮肉腫の症状と徴候

大半の肉腫は異常子宮出血のほか,比較的まれであるが骨盤痛,腹部膨満感,腟内の腫瘤,頻尿,または触知可能な骨盤内腫瘤を症状として発症する。

子宮肉腫の診断

  • 組織学的に行う(最も多くは外科的切除後)

子宮肉腫を示唆する症状があれば通常,経腟超音波検査および子宮内膜生検や頸管拡張・内膜掻爬(D&C)を行う。しかしながら,肉腫に対するこれらの検査の感度は限られている。子宮内膜間質肉腫および子宮平滑筋肉腫はしばしば,子宮摘出術または筋腫核出術後に,組織学的に偶然診断される。

手術前にがんが同定された場合は,一般的にCTまたはMRIを行う。外科的切除後に子宮肉腫と診断された場合には,画像検査が推奨され,進行期を確定するために外科的な再検索を考慮してもよい。

子宮肉腫の患者ではリンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)に対するスクリーニングは通常行われないが,これはこの遺伝性症候群は子宮肉腫ではなく子宮内膜がんのリスクを上昇させるためである。

進行期診断

進行期診断は外科的に行う(子宮肉腫[平滑筋肉腫および子宮内膜間質肉腫]のFIGO外科的進行期分類および子宮肉腫[腺肉腫]のFIGO外科的進行期分類の表を参照)。

表&コラム
表&コラム
表&コラム
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子宮肉腫の予後

子宮肉腫患者の予後は一般に,同様の進行期の子宮内膜がんよりも不良であり,生存率は一般に,腫瘍が子宮外に拡がっている場合は不良である。

ある研究での5年生存率を以下に示す:

  • I期:51%

  • II期:13%

  • III期:10%

  • IV期:3%

最も一般的には局所,腹部,または肺に再発する。

子宮肉腫の治療

  • 腹式子宮全摘出術および両側卵管卵巣摘出術

  • 通常は骨盤照射によるアジュバント療法

  • 進行例および再発例には化学療法

National Comprehensive Cancer Network (NCCN): NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Uterine Sarcomasも参照のこと。)

子宮肉腫の治療は,腹式子宮全摘出術および両側卵管卵巣摘出術である。

子宮肉腫は一塊で切除すべきであり,モルセレーションは禁忌である。手術中に標本が断片化した場合,転移を確認するために画像検査が推奨され,再検索を考慮することがある。化学療法も推奨される。

早期の子宮平滑筋肉腫では,ホルモン機能の維持を希望する場合,一部の患者で卵巣が温存されることがある。追加の外科的切除は,術中所見に基づいて行うべきである。

平滑筋肉腫または子宮内膜間質肉腫の患者におけるリンパ節郭清は,リンパ節転移のリスクが最小限(2%未満)であるというエビデンスがあるため,適応とならない。

手術不能の肉腫には,骨盤放射線療法(密封小線源治療を併用する場合もある)および/または全身療法が推奨される。

アジュバント放射線療法が一般的に施行され,局所再発を遅延させるようであるが,全生存率を改善するものではない。

進行例または再発例では,化学療法薬が一般に使用される;薬剤は腫瘍の種類により異なる。

以下のレジメンが望ましい:

  • ドキソルビシン

  • ドセタキセル/ゲムシタビン(平滑筋肉腫で望ましい)

ほかに推奨されるレジメンとしては以下のものがある:

  • ドキソルビシン/イホスファミド

  • ドキソルビシン/ダカルバジン

  • ゲムシタビン/ダカルバジン

  • ゲムシタビン/ビノレルビン

  • ダカルバジン

  • ゲムシタビン

  • エピルビシン

  • イホスファミド

  • リポソーム化ドキソルビシン

  • パゾパニブ

  • テモゾロミド

  • トラベクテジン

  • エリブリン

全体として,化学療法に対する反応は不良である。

内分泌療法は,子宮内膜間質肉腫またはホルモン受容体陽性の子宮平滑筋肉腫の患者に対して行われる。プロゲスチンがしばしば効果的である。内分泌療法としては以下のものがある:

  • 酢酸メドロキシプロゲステロン

  • 酢酸メゲストロール

  • アロマターゼ阻害薬

  • GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)アゴニスト

要点

  • 子宮肉腫はまれである。

  • 症状としては,異常性器出血,腟内の腫瘤,骨盤痛,腹部膨満感,頻尿などがある。

  • 一般に,予後は同様の進行期の子宮内膜がんよりも不良である。

  • 大半の患者を腹式子宮全摘出術,両側卵管卵巣摘出術,およびアジュバント放射線療法で治療する。

  • 子宮内膜間質肉腫の患者とホルモン受容体陽性の平滑筋肉腫の患者は内分泌療法で治療する。

  • 手術不能の肉腫は,放射線療法および/または化学療法で治療する。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. National Cancer Institute: Uterine Cancer: This web site provides links to information about genetics and treatment of uterine sarcomas (a type of uterine cancer), as well as links to statistics and supportive and palliative care.

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