異型母斑

(異形成母斑)

執筆者:Denise M. Aaron, MD, Dartmouth Geisel School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 1月
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異型母斑は,境界不整かつ不明瞭な良性の色素性母斑であり,通常は褐色および淡黄褐色の領域がまだら状に混在し,斑状または丘疹状の要素がみられる。異型母斑がある患者は黒色腫の発生リスクが高い。管理は綿密な臨床的モニタリングと,異型または変化が強い病変に対する生検による。患者には,日光曝露量を減らすとともに,定期的に自己検診を行わせて,新しいほくろの出現や既存のほくろの変化がないかを確認させるべきである。

異型母斑は,臨床的外観および組織学的所見が通常とわずかに異なる(組織構築の乱れとメラノサイトの異型)母斑である。異型母斑の数は,1個または数個の患者もいれば,多数に及ぶ患者もいる。大半の黒色腫はde novoに発生するが,異型母斑から発生するものもある。黒色腫の危険因子としては,異型母斑の増加,紫外線および日光曝露の増加などがある。

異型母斑の臨床像
異型母斑
異型母斑

この画像には異型母斑が写っており,不整な境界と不均一な色が特徴的である。

Image courtesy of Marie Schreiner, PA-C.

多発性の異型母斑
多発性の異型母斑

この画像には異型母斑が写っており,不整な境界と不均一な色が特徴的である。

Image courtesy of Marie Schreiner, PA-C.

異型母斑
異型母斑

この写真には境界が不整な円形の母斑が写っている。

DR P. MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

異型母斑の生じやすさは,遺伝(常染色体顕性[優性])する場合もあれば,明らかな家族歴がみられない散発例もある。家族性異型母斑黒色腫症候群(familial atypical mole–melanoma syndrome)は,多発性の異型母斑および黒色腫が2名以上の第1度近親者に認められる場合である。この症候群の患者では,黒色腫のリスクが大幅に高くなっている(25倍)。

異型母斑の症状と徴候

異型母斑は,しばしば他の母斑よりも大きく(直径6mm超),基本的には円形であるが(多くの黒色腫と異なる),境界は不明瞭で軽度の非対称性を示す。対照的に黒色腫では,色調の不規則性が強く,赤色,青色,白色調,または色素脱失を呈する部位に瘢痕性の外観を認めることがある。

異型母斑の診断

  • 臨床的評価

  • ダーモスコピーによる評価

  • 生検

  • 定期的な身体診察

異型母斑は黒色腫と鑑別する必要がある。黒色腫を示唆する特徴として以下のものがあり,ABCDEとして知られている:

  • A(Asymmetry):非対称性―外観が非対称である

  • B(Border):境界―境界が不整である(すなわち,円形でも卵円形でもない)

  • C(Color):色調―ほくろの内部に色の異なる部分がある,色が通常のものと異なる,または同じ患者の他のほくろと比べて色が有意に異なるまたは濃い

  • D(Diameter):直径―6mmを超える

  • E(Evolution):変化―30歳以上の患者に新しいほくろが出現した,または,ほくろが変化を続ける

ときに臨床所見から異型母斑の診断(異型母斑と典型的なほくろの特徴の表を参照)を確定できるが,異型母斑と黒色腫を臨床的に鑑別することは困難な場合もあり,診断を確定して異形成の程度を判定するために,最も悪そうに見える病変で生検を行うべきである。生検では,対象の病変を深さと幅の両方向で完全に検体に含めるようにすべきであり,切除生検が理想となる場合が多い。

表&コラム
表&コラム

異型母斑が複数ある患者と黒色腫の既往歴または家族歴がある患者には,定期的に診察を行うべきである(例,黒色腫の家族歴がある場合は年1回,黒色腫の既往がある場合はより頻回)。ダーモスコープと呼ばれる手持ち式の機器を用いてメラノサイト病変の色素パターンを観察する皮膚科医もいる。ダーモスコピーにより,肉眼では視認できない構造を観察することが可能になる。ダーモスコピーでは,黒色腫を示唆する特定の高リスク所見を明らかにすることができる(例,青白色ベール[blue-white veil],不規則な色素小点および色素小球[irregular dots and globules],非定型色素ネットワーク[atypical pigment network],reverse network)。

異型母斑の治療

  • 希望する場合は切除または削皮術による除去

  • 異型性の強い病変の完全切除

予防目的で全ての異型母斑を除去することは,黒色腫の予防に効果的ではなく,推奨されない。ただし,以下の条件のいずれかに該当する場合は,異型母斑の除去が必要になる可能性がある:

  • 高リスクの病歴(例,黒色腫の既往または家族歴)がある。

  • 患者が綿密なフォローアップの継続を保証できない。

  • 母斑のダーモスコピーで高リスクの所見を認める。

  • 母斑が患者に病変の変化をモニタリングさせるのが困難または不可能な部位にある。

異型母斑の予防

  • 紫外線防御(例,紫外線防御用の衣服,サンスクリーン剤,ピーク時間中の日光曝露の回避,日陰で過ごす)

  • 定期的な自己検診

  • 全身の写真撮影

  • ときに家族のサーベイランス

異型母斑のある患者は,過度の日光曝露を回避し,紫外線防御策を講じるべきである。紫外線防御に気を配っている患者には,カウンセリングでビタミンDサプリメントを十分摂取するように指導すべきである。また,このような患者には,既存のほくろの変化を発見し,黒色腫の特徴を認識するための自己検診についても指導すべきである。新たな母斑を検出し,既存の母斑の変化をモニタリングする上では,全身の写真撮影が有用となりうる。定期的なフォローアップ検査が推奨される。

患者に黒色腫(異型母斑からの発生かde novo発生かは問わない)またはその他の皮膚がんの既往がある場合は,第1度近親者の診察を行うべきである。黒色腫の発生傾向がある家系(第1度近親者の範囲で皮膚黒色腫の患者が2名以上みられる家系)の患者は,黒色腫の生涯リスクが高い。リスクのある家系に属する個人は,リスクおよび必要なフォローアップを判断するため,少なくとも1回は皮膚全体(頭皮および陰部を含む)の診察を受けるべきである。

要点

  • 異型母斑の数が多い患者,日光曝露量が多い患者,および家族性異型母斑黒色腫症候群の患者では,黒色腫のリスクが高くなる。

  • 黒色腫との臨床的な鑑別は困難な場合があるため,最も強く疑われる異型母斑で生検を施行する。

  • 異型母斑の患者,特に黒色腫のリスクが高い患者には,綿密なフォローアップを行い,全身写真を撮影する。

  • 高リスク患者には紫外線防御(およびビタミンDサプリメントの使用)と定期的な自己検診を推奨する。

  • 黒色腫の患者については,第1度近親者全員に対して全身の診察を行う。

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