皮膚細菌感染症は,皮膚・軟部組織感染症(skin and soft-tissue infection:SSTI)と急性細菌性皮膚・皮膚組織感染症(acute bacterial skin and skin structure infection:ABSSSI)に分類できる。
SSTIとしては以下のものがある。
ABSSSIは複雑な皮膚細菌感染症である。具体的には以下のものがある:
大きな皮膚膿瘍(浮腫,紅斑,硬結を含めて75cm2を超えるもの)
創傷感染症
細菌感染症の皮膚に関連した続発症として,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群,猩紅熱,および毒素性ショック症候群がある。
SSTIにおける主要な病原体は,レンサ球菌とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)を含むブドウ球菌である。米国ではMRSAが頻度の高い病原体となっている。しかしながら,世界の他の地域ではMRSAに起因する症例の割合に大きなばらつきがある。MRSAが複数の抗菌薬に対して耐性を獲得している可能性があることから,細菌性皮膚・軟部組織感染症に推奨される抗菌薬は各地域におけるMRSAの保菌率と耐性パターンに大きく依存する。
The Infectious Diseases Society of America(IDSA)の皮膚・軟部組織感染症の診断および管理に関する2014年版ガイドラインでは,軽度から中等度で非化膿性のABSSSIに対し,レンサ球菌をカバーすると推定してβ-ラクタム系薬剤またはクリンダマイシンによる治療が推奨されている。リスクが高い患者(例,穿通性外傷後,MRSAの鼻腔内保菌の疑い,違法静注薬物の使用者)では,MRSAのカバーも考慮すべきである。化膿性ABSSSIは,全身毒性の徴候(例,発熱,頻脈,頻呼吸,せん妄,白血球増多)がみられる場合,重度とみなされる。その場合はグラム染色,培養,および抗菌薬療法が推奨される。選択すべき抗菌薬は,通常はバンコマイシンである。ただし,いくつかの代替薬が利用可能である。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Infectious Diseases Society of America: Practice guidelines for the diagnosis and management of skin and soft tissue infections (2014)
World Society of Emergency Surgery (WSES) and the Surgical Infection Society Europe (SIS-E) consensus conference: Recommendations for the management of skin and soft-tissue infections (2018)